トマトにんにくパスタ、じゃあ駄目かな?
食べものに特化したプロフィール用紙をネットで見つけ、印刷していろんな人に配った。
好きな野菜や果物、ラーメンなら何味が好きか、おすすめのごはん屋さんベスト3。いろんな項目があるけれど好きなパスタという項目がある。みんなペペロンチーノやカルボナーラ、ミートソースなんて書いてくるけれど友達のひとりが「ポモドーロ」と書いてきた。なんだこれは。今までの人生で掠めることがなかった単語だ。さっそく書いてくれた友達に「なにこれ?」と聞くと「めちゃトマト」とのこと。何もわからない。確かにその友達の好きな野菜第一位の欄はトマトだ。
なにもわからんのでこりゃ食べに行くしかあるまいと、その友達とさっそくイタリアンに向かった。ちゃんとポモドーロがあることは調査済みである。
仕事の後に集合。お腹がすいているくせにレストランのとなりにあったゲームセンターに吸い込まれ、しばらく牡蠣のぬいぐるみをとろうと画策。お金を無為に溶かした。牡蠣だよ、柿じゃない。ちっともとれそうになくても気持ちが白熱する。なまじ牡蠣が持ち上がりはするもんだからじれったい。それがゲーセンというもので、いったん冷静になろうと本来の目的のレストランに入った。
ポモドーロはメニューの一番上に鎮座していた。店一番のおすすめなのだろうか。そんなにメジャーなものなのかと自分の知識のなさに震える。もしかしたらいままでの人生でポモドーロに出会うことはあっても認識してこなかったのかもしれない。わたしはサルエルパンツをサラエボパンツと言うぐらいカタカナが苦手だ。パッと見たときの認識度が漢字とひらがなの半分以下ぐらいな感覚だ。いっそ英語表記にしろと何度大声で叫んだことか。恐ろしいのは父も似たような間違いを何十年もまえにしていて、なんだったかをやはりサラエボと読み間違えたのを母が目撃している。ヨーロッパの火薬庫が遺伝子に組み込まれている。
そんなこんなでポモドーロとピザが来た。ポモドーロだけじゃ足りないのでクアトロチーズのピザも頼んだ。ハチミツをかけるやつ、大好き。
ポモドーロは美味しかった。写真じゃ真っ赤でトマトしかわからなかったけれども、実際食べるとにんにくがたっぷり入っていて旨味が爆発していた。もちろんトマトの味もド真ん中で踊りまくっている。こりゃおいしい。トマト好き大歓喜なのがよくわかる。
ばくばくと食べ、膨らんだ腹をさすりながら雑談し、もう一度ゲーセンで牡蠣と取ろうとあがいてみたが失敗。楽しかったからよしと慰め合って帰宅した。口のなかがニンニクだ。
次の日朝起きると夢を覚えていた。
職場に手のひら大のマッチョな人形を飾りたいと思い、人事部に相談する夢だ。
ちっともポモドーロ関係なくて笑った。でも近所のレストランでポモドーロソースの期間限定メニューが出ているのが目について、私の人生にポモドーロが確かに組み込まれ始めた。