(詩)夏の木漏れ陽
木漏れ陽だけが
知っている
忘れられたバス停留所
忘れられた道
木漏れ陽だけが
覚えている
その失われた
道のむこう
廃れた家々に刻まれた
人々の吐息
木漏れ陽だけが
そして残された
いつの世も
失われた夏の形見に
人々が
思い出そうとして諦めた
遠い夏の記憶
昔
おいら石ころだった
ぼくは葉っぱ
わたしは土だったの
いく歳月いく数千年
繰り返す夏の中で
それでもわたしは
何らかの生命の形をして
いつも
夏の一部だった気がする
いつも
夏の一部でいた気がして
木漏れ陽は
夏の木漏れ陽なら
夏の木漏れ陽の中で
汗にまぎれて
しずかに泣こう
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