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上手なレビューは書けないけれど
ほとんど前情報なしにそれを観て、突風に煽られたみたいに呆然とした心持ちで映画館を後にした。
さて、せっかくだから感想でも書こうかなとnoteを開いて、けれどどこから、何を書けばいいのかわからない。
参考にと、同じ映画を観た方の感想をいくつも読んでみた。
膨大な知識に裏打ちされた鋭い考察、豊かな感性でとらえた俳優陣や演出の魅力、自身の心がどのように動いたか。
多彩な文章で書き綴られたそれらを、読めば読むほど、わたしはもう書く必要ないじゃん、と思っていったんnoteを閉じた。
けれども翌朝、つまり今、こうしてnoteを開いてみたのはわたしのために書いておこうと思い直して。
上手なレビューは書けないけれど、今わたしが素直に感じたことを、いつかのわたしのために残しておこう。「ナミビアの砂漠」について。
あらすじや考察、主演の河合優実さんをはじめとする俳優さん、映画の魅力については、他の方々の素晴らしいレビューに託すとして。
わたしがそれを観て、いちばんに覚えた感情は懐かしさだった。思わず苦笑いしてしまうような、心のどこかが痛痒いような、そういう類の。
あそこまで無気力ではなかったし、バイオレンスでもなかったけれど、21歳の主人公が生きる世界の空気感には確かに覚えがあった。
時間と若さはたっぷりあって、けれど具体的な夢や目標も、没頭できるような趣味や仕事もなく、どうしようもなく気だるくて、恋だけがあって、甘えとか依存を通り越し自分と相手との境目がどろどろに溶け合っていくような、それは素敵とは言い難い恋で、平和にいちゃついた直後にとんでもなく醜い喧嘩をして、こんなのもう絶対無理じゃんって思うのに、なんだかんだ一緒にいる。なんにも見えていないようで意外と見えていたりするから、ぜんぶを諦め絶望できるほど幼くも大人でもない。
わからない。自分が何を欲しているのか、何に苛立っているのかわからない。
徐々に崩壊していく主人公はもちろん悲壮的なのだけど、どこかしらユーモラス。
問題はひとつも解決しないまま、希望や絶望も明示されないままで、わからないまま映画は終わる。けれどもそれは突風のようにわたしを煽り、さまざまな記憶や感情を盛大に逆撫で通り過ぎていった。
一晩明けて今、未来の主人公が21歳の自分を振り返り、煙草をふかしながら苦笑いしているさまが目に浮かぶ。