無名夜行 - 三十夜話/13:うろこ雲
――『異界』の市場は人でごった返していた。
人といってもそれは『こちら側』でいう「人間」だけではなく、我々から見たら「異形」としか言えないような存在も当たり前のように道を闊歩しているし、店もまた、何を扱っているのかさっぱりわからないようなものがほとんどであった。私はXの目を通して看板や店先の商品を見て、それが一体何なのかを推測することくらいしかできない。
Xはきょろきょろと辺りを見渡しながら、人の波に流されていた。あちこちから聞こえてくる呼び込みの声も、『こちら側』の言