無名夜行 - 三十夜話/25:ステッキ
うららかな陽光が降り注ぐ、『こちら側』に似た『異界』の公園。ベンチに腰掛けたXは、ぼんやりと虚空に視線を彷徨わせていた、が。
「あなたも魔法つかいになりませんか?」
不意にひょこり、とXの膝の上に上ってきたのは、犬とも猫ともつかない、ふわふわもこもことした不思議な生物だった。生物というよりぬいぐるみ然としているそれは、けれど確かに生物らしく瞬きをして、小さな口をぱくぱくと開閉させて喋ってみせるのだ。
「あなたからは飛びきり強い魔法の才能を感じます。僕と一緒に魔法つかいにな