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ただ暑かった。体中から汗が吹き出し、それに加えて触れる先なにもかもが湿っていた。汚れを…
「アイツのことどうしたいんですか」 「あいつ? アレクサンドルのことかな」 「他に誰が」 …
何度目かの訪問にいまだ慣れない心地で司祭館の玄関ドアを叩いたアレクサンドルは、腕時計を…
夏の日差しの強さを和らげる風に加え、庭でさえずる小鳥の鳴き声が耳に心地良く、薄暗く涼し…
止まりかけた呼吸に喘ぐように体を捻り、ずるりと落ちた布団に巻き込まれて床に着地した衝撃…
灯りを消していくらかの時間が経ち、司祭はとっくに暗闇に慣れた目をしばたかせた。天井は変…
決して広くはないベッドで、隣で眠る人が寝返りを打つ振動に夢の輪郭が一気にぼやけた。先程まで素肌が触れ合っていただろう半身が嫌に熱い。寝返りを打ち背中を向けた相手も同じだったようで、汗が滲む背中にはブラックだったかブラウンだったか、濃い色の髪が張り付いていた。 アレクサンドルは覚醒してもなお重たい頭と運動後の気だるく軽い体を持て余し、できるだけ静かに半身を起こし布団から体を脱出させる。汗で湿ったシーツは目覚めてしまえば肌寒い外気が恋しくなるほど居心地が悪かった。自分がいた分
「なるほど、これが正解か」 つい先程まで饒舌に話していたのが落ち着き、グラスを握って鼻…
腰に響く揺れに覚めた目が、タクシーの中と思われる窮屈そうな自分の足元を映した。通り過ぎ…
「どこが好きなのよ」 「なにが」 どうやらこの後か明日に約束があるらしい「憧れの紳士」に…
「シャルマン」 確かに目は合っているのに呼んでも返事も動きもないことに、会話途中で気付…
目を開けても、そこにはぼんやりと霞む天井と、自分の髪や鼻や口から立ち上る気泡しか見えな…
ノックの音にすぐに開いた玄関扉の中から、いつもどおりのゆるやかで色っぽい笑顔が現れる。…
「質問しても?」 キッチンでりんごを剥くシャルマンの横で作業を観察していたアレクサンドルが控えめな声で問いかける。朝食を終え一息ついた頃合いに始まったシャルマンの余り物を利用した備蓄作りを、他にやることもないからとアレクサンドルが眺めはじめて数分。朝食でも出されたりんごが次々と剥かれカットされていく。 「どうぞ?」 「なに作ってるの?」 「ジャムにしようと思ったが、君の時間が許すなら午後にはアップルパイが焼き上がる」 「あります」 「返事が早いね」 「もう一つ質問してもいい