3週間チャレンジ
わかっちゃいるけどやめられない悪癖があった。お酒を飲んで帰ってきて、お風呂に入らず寝てしまう。
高揚した気分と睡魔とけだるさとともに飲み会から帰宅する。すぐお風呂に向かえばよいのだが、お風呂とそのあとのスキンケアとドライヤータイムと歯磨きの時間を想像する。布団に到達するのは1時間後だ。重い。遠い。
酔い覚ましを理由にちょっとだけ横になる。重力からの解放。私は横になるべきだったのだという納得感。世界が寝ろと言っている。おやすみなさい。化粧もしたまま。歯も磨かぬまま。ひどいときはリビングの床の上。翌朝の寝起きは最悪なのである。わかってはいる、でも抗えなかった。
ある年の12月、週3回の頻度で忘年会が入っていた。
これは、と思った。週3回の頻度で風呂なし就寝をしていたら、肌も髪も歯も、終わるんじゃなかろうか。巷では、化粧を落とさず寝たら1回で10年老けるとか言われているではないか。
そこで、心を決めた。今月は飲み会の夜、必ずお風呂に入ってから寝ます。
その月は、帰るなりお風呂に直行した。5分ですませた日もあった。化粧だけ落とせばセーフでは…という誘惑にめげず「とにかくお湯をかぶってから寝た」という事実を積み上げた。
それからだ。酔って帰ってきてもお風呂に入るのが当たり前になった。大きな変化は「入らない方が不快」という気持ちが芽生えたことだ。私の中で、「寝る前にお風呂」が真に「習慣化」したのだった。
私はこれを3週間チャレンジと名付けた。慣れないことをやるのは大変だが「習慣」であれば心も体もなんの抵抗もなく動くのだ。ということは悪癖が直った状態を「習慣」にしてしまえばよい。そしてその習慣化にかかる期間は、どうも3週間のようだ。
わかっちゃいるけどやめられない悪癖がもうひとつあった。髪を乾かさずに寝る。
レベルが低い。当時の私は36歳です。
ドライヤーが大嫌いだ。ドライヤーなるものは自ら熱風を頭にあてなければいけないのだ。我慢ならない。それなのに私の髪はまあまあ長い。肩下まであります。試しに時間を計ってみたが、許容できる生乾き状態まででも6分かかる。
呑んでいようがいまいが、常日頃からドライヤーをスルーして自然乾燥でいけるところまでいくか、枕にタオルをかぶせてそのまま寝るという、髪にも衛生的にもよろしくないスタイルで生きていた。
やりました、3週間チャレンジ。
修行のごとし。とにかく耐えた。毎晩頭に熱風を吹き付けてから寝た。初週は苦行。2週目もまだ重い腰を上げる感じはあるが、3週目に入る頃には慣れてくるのである。そして3週を終えるころには、髪が濡れたまま布団に横たわることが「できなく」なっているのであった。
すごいぞ、3週間チャレンジ。
今直したいのは、夕飯の食器をその晩のうちに洗うこと。
齢38。レベルの低さに震えるが、ひとつずつ直していって、なんとかまっとうなお婆ちゃんになることを目指しています。