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好きになった作品(音楽・映画・本)~2022年 上半期

 その年の上半期に個人的に好きになった作品を紹介するシリーズ。昨年は音楽限定で紹介をしましたが、今年は映画や本に触れる機会も多かったので、そちらも含めて紹介したいと思います。


●音楽部門

ムーンパレス / RAY

 この記事を書こうと決めた数十分後に Lyric Video が配信されるという奇跡にびっくりしています。以前にも少し感想を書いたのですが、サビで旋律が2つに分かれた瞬間の、心が浄化していくようなあの心地よさがこの曲の第一の特徴だと思います。

 RAY の楽曲の特徴は「カッコいい」「ドリーミー」「儚い」という表現に当てはまることが多いと思っていますが、この曲は特に「ドリーミー」ですね。ドリーミーなサウンドに、あのサビのギミックを掛け合わせたら、それはもう別の世界へ行ってしまいますよ……。

 それから、Bメロも美しくて、だんだん温まって膨らんでいって、サビの直前にその膨張がさらに加速する感じが、こちらも大好きな RAY の「スライド」(アルバム「Pink」収録) を彷彿とさせ、聴けば聴くほど昂るBメロです。この部分(Bメロ後半)は歌詞も力強くて印象的です。

 RAY の曲は去年から聴き続けていますが、面白くて綺麗でワクワクする球をいい所に投げ続けてくれるので、毎回キャッチするのが楽しいです。


●映画部門

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」

 5月の上旬に観た映画です。鑑賞後に1時間近く放心状態が続いたのを覚えています。

 この作品の主人公の大島志乃は、喋ろうとしても言葉がスムーズに出て来ないのですが、直接的に同じではないものの、自分の高校時代の境遇に少し似ていて、その記憶を重ねずにはいられませんでした。

 志乃に対する周りの反応や言葉のかけ方に「ああぁ……」と心がざわつきながらも、それとは対象的に、少しぶっきらぼうだけど話すときは基本「待ち」の姿勢で言葉を聞いてくれて、志乃の中にあった小宇宙みたいなものを引き出してくれたクラスメイトの加代が本当に優しくて、学校という狭い空間の中で「こういう人が一人でもいたなら……」思ってしまいました。

 二人はバンドを組むことになるのですが、志乃の歌声があまりにも真っすぐなので、カラオケ店で初めて加代の前で歌ったシーンはポジティブな意味で唖然としてしまいました。南沙良さんの演技も素晴らしかったですし、すべてを映像にしない映画の終わらせ方も良かったです。


●書籍部門

「タイタン」/ 野崎まど

 人工知能が人間の「仕事」のほとんどを受け持ち、人間が「仕事」から開放された未来。問題が発生した人工知能のカウンセリングを、趣味で心理学を学んでいた主人公である内匠成果が施す物語。

 人工知能を人間がカウンセリングするという話ですが、物語を読み進めると、読者側である僕がカウンセリングを受けたような体験をしました。それはきっと、物語の中でカウンセリングをしているはずの内匠成果も同じで、カウンセリングをしながら、人工知能との対話の中で無意識に自分をカウンセリングしていたのではないかと思います。

 野崎まどさんはそれぞれの作品で、「友達とはなにか?」「創作とはなにか?」「仕事とはなにか?」というような1つの大きなテーマを設けて、それに対してかなりはっきりと”答え”を明示することの多い作家だと思います。シンプルだけど実は幅のある柔軟な答え (違和感を持ったとしても最終的に納得することが多いのはそういうことだと思っています) で、すーっと染み込む感じでした。




 映画も本も、まだまだ鑑賞予定・読書予定の作品がありますし、音楽も自分の聴き方で聴き続けると思うので、また何か紹介できることがあったら紹介したいと思います。