見出し画像

弁証法的行動療法とはなにか?【心理学】

どうも、あおきです。医学部でコミュニケーション教育と心理学教育を行っている研究者兼心理カウンセラーです。

今日は「弁証法的行動療法(Dialectical Behavioral Therapy: DBT)」についてお話しします。この方法はパーソナリティ症、特に境界性パーソナリティ症でよく使われます。具体的に何をするのか、なぜ効果があるのかを解説していきます。

まず、弁証法的行動療法って何?と思いますよね。

簡単に言うと、感情をコントロールしたり、人間関係をうまくやりとりするためのスキルを学ぶ心理療法です。

「弁証法」という言葉が入っていますが、これは「対立するものを統合して新しい視点を見つける」という意味です。たとえば、「自分を変えたい」という気持ちと「自分を受け入れたい」という気持ち、これらが対立するときに、両方を認めながら前に進む考え方です。

DBTが特に注目されるのは、境界性パーソナリティ症との関連です。境界性パーソナリティ症では、感情が揺れ動きやすく、人間関係や自己イメージに混乱を感じることが多いです。

たとえば、「ちょっとした一言で怒りが爆発する」「親しい人と喧嘩して距離を取ってしまうけど、すぐに寂しくなってまた近づきたくなる」などです。こうした困難は、本人にとっても周囲にとっても大きな負担になります。DBTは、これらの問題にアプローチするために特化されています。

DBTがなぜ効くのでしょうか?それは、感情や行動のコントロールが苦手な人に、具体的なスキルを提供するからです。

DBTでは、大きく分けて4つのスキルを学びます。まず、「マインドフルネス」というスキルです。これは、感情に飲み込まれるのではなく、「今、この瞬間」を冷静に見る練習です。たとえば、怒りを感じたときに、「あ、自分、今怒ってるな」と気づくだけでも状況をコントロールしやすくなります。

次に、「感情調整」のスキルがあります。これは、感情をコントロールする方法を学ぶものです。たとえば、不安なときに深呼吸をして気持ちを落ち着ける、ストレスを軽減するための行動をとるといったことを学びます。

また、「対人関係スキル」も重要です。これは、人と適切に関わる方法を学ぶものです。たとえば、要求を伝えるときに攻撃的にならず、相手の気持ちも考えながら言葉を選ぶ練習などがあります。

最後に、「苦痛への対処スキル」があります。これは、困難な状況に直面したときにどう耐えるかを学ぶものです。たとえば、感情が爆発しそうなときに、まずは冷たい水を顔にかけて気持ちをリセットする方法などが含まれます。

DBTの特徴は、「じぶんを受け入れる」と「じぶんを変える」の両方を目指している点です。完全に変わらなくても、少しでも感情や行動が安定すると、生活の質が向上する場合が多くあります。

また、治療者と患者が協力して進めるプロセスが重視されるため、治療を受ける側が「ひとりじゃない」と感じられるのも大きな利点です。

まとめると、DBTは感情や行動のコントロールを学ぶための具体的なスキルを提供する心理療法です。

感情に振り回されず、人間関係を良好に保ちながら生活の質を向上させるのに役立ちます。ちょっとしたスキルを学ぶだけでも、日常がだいぶ楽になるかもしれません。日本ではDBTの専門家が多くないことは残念ではありますが、興味のある方は、専門家に相談してみると良いと思います。

それでは最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

いいなと思ったら応援しよう!