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#小説
いつか、きみと2-6
「な、」
必死でしぼりだしたはずの言葉が、そんな一言だなんて自分でもあきれる。
「荷物が増え続けたら、この【家】がいっぱいになって壊れてしまう。
そしたら…」
「え」
「だから、せめて一番古くからある一番大きな荷物を届けに、彼は出かけたんです。
…そしたら、連絡が途絶えて…」
「…」
「あなたのことは、見かけたこともあったし、彼から聞いていたので知っていました。
だから、昨日この手紙を
いつか、きみと2-5
「え…」
建物の中は、わたしの部屋をもっと広くしたような作り…みたいだけれど、決定的に違うことは部屋中にたくさんの【荷物】が置かれている。
わたしと彼が出会ったときに、彼が持っていた荷物と似ているけれど、大きさはさまざまで小さな箱から大きな箱、細長い箱や丸い箱…。
「これを届ける仕事をしてます。
…だけど、最近は配達先が見つからないことが増えていて、どんどん増えていくんです」
どういうこと
いつか、きみと2-4
「お願い!教えて!」
両方の肩に手をおいて、揺さぶるみたいにしているのが、自分だなんてびっくりしてしまう。
「…あの」
「…お願い」
涙がとまらない。
だって、書いてないんだもの。
だから、納得なんてできない。
「あの、それは…」
「お願い」
「…ついてきてもらえますか?」
くるりと背を向けて、歩き始めた後ろ姿を追いかける。
知らない子。
よくわからないけれど、今を逃してしま
いつか、きみと2-3
「…?」
差し出された紙を、受けとる。
「それじゃあ…」
そういって、去ろうとしたその子の腕をがっちりつかまえる。
「待って!」
「!?」
「ちょっと待って!」
そんな衝動的なことをしたのは、受けとった紙に彼の名前が書いてあったから。
この子が誰なのか知らないけれど、今は彼とつながる方法を知っている人はこの子しかいない。
「ちょっと待って、ここにいて」
わたしはそっと紙をひらく。
いつか、きみと2-2
「…はぁ」
結局、彼から連絡がないまま2日経ってしまった。
【会いたい】っていう気持ちよりも、不安の方が大きいのはどうしてだろう。
手袋を持って、公園へ向かう。
電車に乗っているあいだ、ずっと心臓が痛いくらい緊張して、公園の近くの駅についたときには、もう走りださずにはいられなかった。
息を切らして、いつものベンチに行くと、きっと彼が…。
半分、予想通り。
望んでいなかった結果が、そこには
いつか、きみと・2-1
「はぁ…」
今日何回目かわからないため息を吐き出す。
【ウオッチ】と呼ばれる”それ”を見る。
ウオッチは、手首にまきつけて使う通信機器であり健康管理機器でもある。
音声やメールの通信はもちろん、脈拍や体温、血圧なんかも管理してくれる便利な機器で、生まれたときからみんなひとり1つ持っている。
彼ももちろんウオッチは持っていて、一日何度か連絡を取るのが日常になっていたけれど、もう3日も連絡がな