《派遣王女☆ウルスラ》 プロローグ
派遣王女☆ウルスラ / プロローグ
魔界
ウルスラは魍魎たちが足となってうごく山の古城に独り暮らす
鏡のなかでは人間界で最も大きな国の王子と小国の王女が世紀の結婚式を挙げている。鏡から誓いの言葉が聞こえる
「うぉ〜〜ッ!!」
うごく山は魔界を震わせるほどのさけび声をあげる。山はウルスラだった
「復讐せねば」
腰が曲がった老婆の山は暗黒にさけぶ
あの王妃の冠は私がかぶるはずだった…
自分の息子とアリスを結婚させるために
私を魔界に落としたナダル王が憎い!
ピカッ!
魔界に雷鳴が轟く
「なんでぇ私だけがぁ〜!」
魔の山は震え、崖から岩がゴロゴロと崩れ落ちる
山の天辺の古城に、三本足のカラスが飛んでくる
嘴で窓枠をつつくカラス
「パパッ!」
ウルスラはさけぶ。
どっこい正一。と窓枠に腰かけるカラス
「こんなBBAを産んだ覚えはない!」
ズコーッ!
山はズッコケる
「わし、この魔界の魔王のはずなんじゃが、ほれみろ」
と王の謁見の間を見わたす
悪魔や小悪魔、美魔女や魔獣などがポーカーや麻雀やモノポリーやUNOに興じている
「だれもいうことを聞かん」
鉢巻に鉛筆をさした悪魔が走ってくる
アウレリャノさま。住民税と固定資産税が滞ってると、北と南と東と西の魔女から請求が来てますが…
「に2900億デーモン…」
請求書を見せられてカラスは項垂れる
「いまちょっと取り込み中、あとで」
と右羽を受話器にして耳にあてる仕草
「ぎょい」
悪魔は去る
「でだ、ウルスラ。人間界に行こうぞ」
三つ足カラスは羽を腰にあてる
落雷が落ちる
「え!?いきなりなに!?」
暗黒の闇に山がびくつく影が映える
「人間だったわしらを魔界に落としたナダル王に復讐じゃ」
カラスは笑う
「リベンジ!?」
カラスの前に鏡を握りしめる女の影が
「これにてメルトア公国の王女アリスは正式にナダル=大グランディア帝国の正式な王女となる!!」
ワーーー!!
カラスは2900億デーモンの借金を返すために、ウルスラは王妃の冠を被るために人間界へと旅立つのだった