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村瀬嘉代子さん ―その1

臨床心理士(公認心理師)の村瀬嘉代子さん(以下、敬称は「さん」で統一します)は、臨床心理士を含め対人援助職従事者には非常に著名な方であり、長年心理臨床の第一線で活躍しておられる方です。
わたしは村瀬さんの心理臨床の事例記事を読んで感銘を受けて、ファンのように次々と著書を読んでいきました(笑)。
わたしと同じような方は多くいらっしゃると思います!

最初は、村瀬さんの文面から伝わってくるお人柄や、心理臨床への強い想いや一貫した真摯な姿勢に、ただすごい――と純粋に感動しました。
「人の心の深層に触れる」ことへの畏れと、クライアントにとって真の援助とは何かという問いに立ち返りながら、見事に対応されている事例の実績等を読む毎に、「セラピストの鑑」として心に深く印象として残り、ずっと影響を受け続けています。

人を人として遇する姿勢

これまで臨床心理系領域を学んできて、もし生前に母が心理療法を受けられたとしたらお願いしたいと思える心理療法家の方は、
村瀬嘉代子さんと、精神科医の故・近藤章久さんのお二人でした。
このお二人は、ご自身の依拠する理論や技法の前に、
まずはクライアントの存在の全体性―wholenessを受け容れることを、最も重要視されています。
村瀬さんの言葉で言うなら、(主訴、年齢、性別、病態水準を問わず)「人を人として遇する姿勢」であること。
初見で自身の歪曲した観念が症状の要因とわかる場合でも、現在までご本人は症状として表出して内外のバランスを取りながら乗り越えてこられた必然性を、まずは無条件に受けとめることが基本、といわれています。
このことは、セラピストの資質としての中心核の構成要素ではないでしょうか。

治療者のことば

そして、村瀬さんの魅力といえば、「ことば」の持つ強さ、インパクトと思います!
それは、村瀬さんが「ことば」をとても大切に扱われていて、常に自己研鑽を怠らないからでしょう。
村瀬嘉代子さん著書「子どもと家族への統合的心理療法」(金剛出版 2001)から、治療者のことばについての記述を紹介します。

―さり気ない一言がインパクトをもって、クライアントに伝わり、支えとなることがある。
―ことばに息吹を。治療者は自分の用いている概念を絵に描けるように咀嚼しているか。自分の用いていることばの内包している意味を自分で確かなものにしているか。一度、ことばを自分の体の中にくぐらして後、対象化するような過程を経ているか。
―平易な表現だけれども、意味する内容は的確で深い、そして無理がない表現を目指していくことが求められる。

こうした記述からも、「ことば」を慎重に注意深く扱っておられることが覗えます。
さり気ない一言がインパクトをもって、伝わる――これは、まさにそうなのでしょう!
意図的、操作的なものではなく、信頼関係の中で自然に発話していく「ことば」が、さり気なく相手のこころに触れて、そこでしっかり何かが残る手応えを感じる、ということ。
治療関係のコミュニケーションにおいて言語的、非言語的ともに大切ですが、さりげない「ほんの一言」のことばが、治療が大きく進展する鍵となることも多いのでしょうね。

また、セラピストの資質向上の着眼点の一つとして、下記のように述べられています。

―心理的援助において、声なき声、見えざる訴えに対して、汲み取る力が必要であり、それを「公共性をもって」表現し、伝える努力を怠らないこと

この文章も、すごいですよね――
村瀬さんのこうした不断の努力に、本当に頭が下がります。。

治療者としてのスタンス

最後に、同著書で「治療者としてのスタンス」として挙げられている項目の一つを紹介します。

―治療者は、クライアントにとってよき素材、鏡、同行者、そして治療の自己完結性にこだわらず、さりげなく、夢の中の存在のようにクライアントの記憶の中から消える存在。

クライアントが、気づいたら自分の力でくぐり抜けて今日があると思えるのが最良である、と述べられています。
質の高い支援とは、こうしたクライアントの自立や主体性を培っていく支援なのでしょう。
村瀬さんの著書は、これから心理職に就く方々にとって最良の指南書となると思います!

村瀬さんの著書の内容は奥深く、まだまだ消化できておりませんが~💦
村瀬さんのエッセイ本も素晴らしいですので、 
また、別の記事で紹介させていただきます。

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