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要約:キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない(石山 恒貴、片岡 亜紀子、北野 貴大 著)
学術的な視点からキャリアブレイクを論じた本です。
1 オススメ度
オススメ度(5点満点):★★★☆(3.5点)
2 要約
・キャリアにはワークキャリアとライフキャリアの2つの意味があり、本書では、ワークキャリアはライフキャリアに包含されると考える。
・本書では、キャリアブレイクを「今まで中心的に活動してきたキャリアの役割を手放すことによって、新しいキャリアの役割に向けて自分と社会を見つめなおしている期間」と定義する。なお、この定義におけるキャリアは、ライフキャリアのこと。
・「自分を見つめなおす」とは、喪失(「キャリアを手放す」)によって新しい何かを獲得すること。
・キャリアブレイクは、リカレント教育、サバティカル休暇、ギャップイヤー、越境学習、リスキリング、サードプレイスなどの用語と、共通点もあれば相違点もある。
・日本ではキャリアブレイクが受け入れられにくい構造的要因として、日本的雇用の特徴(無限定総合職、標準労働者、マッチョイズム)に課題がある。このような特徴が働き方の規範となってしまうと、キャリアブレイクはスティグマと位置付けられてしまう。
・北野らの実践より、キャリアブレイクの入口には4タイプある。
①LIFE型:妊娠、出産、病気などライフイベントを機に離職や休職をする。
②GOOD型:激務や人間関係により心身の不調をきたすなどを機に、「心身のケア」を目指して離職や休職をする。
③SENSE型:働きすぎによる自己の喪失、人生の節目など、「感性の回復」を目指す。
④POWER型::ワーホリ、海外留学、芸術活動、ボランティア活動など、自身への可能性や期待を表現するため、「大志の実現」を目指す。
・キャリアブレイクには共通のプロセスがある。
①「自分を見つめなおしたいという欲求」の段階:社会や他者の評価への囚われ、日本的雇用の特徴による自己の規定により、ありたい自分と実際の自分の乖離を感じ、時に精神的な不調を抱える時期。
②「キャリアブレイクにおける自分の見つめなおし」の段階:隔絶された休養を取り、ほどよい距離の存在によるソーシャルサポートを受けながら回復し、自己のルーツの探求、単独または他者との協働による自己の棚卸、試行錯誤としての様々な行為を行う時期。
③「ありたい自分への接近」の段階:社会・他者・日本的雇用への囚われからの解放、ありたい自分に関する概要の認知、自己と他者に関する俯瞰、多様な人々との人脈形成、公私での居場所獲得とスティグマからの解放、が相互に影響しながら自分自身の変化を経験する時期。
3 感想
私も総合職ですし、職場はマッチョイズムの傾向があるので、これらが働き方の規範とされていることがキャリアブレイクの阻害要因となるという指摘にはどきりとさせられました。
私は、1年間程度の休職を経験しています。思い返してみるとそれは、上記の日本的雇用の特徴に囚われ、精神のバランスを崩したことが原因だったように思います。
一方で、休職期間を要約で定義したような「自分を見つめなおす期間」として活用できたかというと、十分ではなかったな、と思います。まぁ、休職をきっかけに将来は里山移住しようと決め、このNoteを始めたので、行動の変化は生まれているわけですが…。
今の職場を退職するときは、ぜひキャリアブレイクをして、前向きに色々なことに挑戦しつつ、自分の新しい可能性を模索したいと思いました。
この本は、かなり学術的な内容で、キャリアブレイクをフラットに論じているという印象です。
もう少し気軽に読みたいという方は、共著者である北野さんの以下の本がオススメですよ。