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映画「野生の島のロズ」感想
試写を見た人のめちゃくちゃ評判が良かったし、予告編も良さそうだったから、とりあえず見ないという選択はなかったよね。
無人島に漂着した最新型アシスト・ロボットのロズは、キツネのチャッカリとオポッサムのピンクシッポの協力のもと、雁のひな鳥キラリを育てるうち、心が芽生えはじめる。ロズの優しさに触れ、怪物として彼女を拒絶していた動物たちも、次第に島の“家族”として受け入れていく。いつしか島はロズにとっての“家”となっていくのだった。渡り鳥として巣立っていくキラリを見送り、動物たちと共に厳しい冬を越えた頃、回収ロボットが彼女を探しにやってくる。果たして、築いてきた動物たちとの絆から引き裂かれようとするロズの運命は!?島の存亡をかけたロズと動物たちの戦いが、いま始まろうとしていた──。
ストーリーの大半を説明してしまってるね。この映画は映像を見ることに価値があってネタバレとかあんまり意味がないってことかな。
感想
評価: 8.5 / 10
評価の基準はこちら。
良かった点
全てのクオリティが高くて映画として非常に出来がいいと思った。パッと見の絵は綺麗だし、背景は美しく雄大で、動物のアニメーションもすごいし、ロボットのアニメーションもイカすし、野生生物のキャラクターも擬人化の塩梅が絶妙だし、ストーリーもありがちだけどちゃんと盛り上げるところを盛り上げて最高の形で終わって文句がない。エンドロールの最中に、「いい映画見たな」ってしみじみ感じられる傑作だったと思う。
悪かった点
ないけど、無理やり上げるとするなら、ストーリーがありがちってところだろうか。嫌われ者同士の寄せ集めが擬似家族になる話。心のないロボットが心を獲得していく様子とか、ひねくれ者のキツネ🦊が主人公の友人役ってのもどっかで見た感じがする。とはいえ、ベタとかありがちが悪いわけじゃない。みんな好きだからこそ、繰り返し使われると考えることもできるよね。
こういうの見たことあるけど、素晴らしい
明確な世界設定は明かされていないけど、おそらく今より未来で、地球温暖化で人間が住める場所が極端に減ってしまった世界。自律したロボットがどんな作業できる世界。
輸送中の事故で無人島にたどり着き起動したロボットが主人公のロズ。ロズは顧客から与えられた仕事を完了させるようにプログラムされている。しかし、無人島には顧客はいない。動物しかいない。ロズは仕事を与えてくれる誰かを探すが、動物からは相手にされない。そこで、ロズは動物たちの言葉を学習して、コミュニケーションが取れるようになる。
ここで面白かったのは、ロズが動物の言葉を学ぶ前は、ただの動物でしかなかったのに、動物の言葉がわかるようになってからは、動物たちがかなり擬人化した味付け、アニメーションになっているんだよね。まあ、動物たちが同一の言語でコミニュケーションを取っているということ自体ファンタジーだから、親しみやすいように擬人化させてるんだろうね。
ロズはいろいろな成り行きから、雁のひな鳥キラリをキツネのチャッカリと育てることになった。ひな鳥を渡り鳥として育てて渡りを成功させる。これがロズの仕事になった。
ロズはここまでは分かりやすく感情のないロボットといった感じなんだけど、キラリとチャッカリと一緒の家に暮らして、時間を共にする中で、少しずつ感情が芽生えていくんだよね。いつの間にか、ロズの言葉遣いが母親らしくなる。そこで「あ、こいつ感情芽生えとるやんけ!」って気づく。最初は守ることさえしなかったキラリのことを、ロズは母親として当然のように心配して守るようになる。
ロボットが感情を獲得する物語なんていくらでもあるんだけどさ、なんかこの映画は抜群にいいんだよね。アニメーションの表現がものすごい豊かだからなのかもしれないし、過程が丁寧なんだよね。
2つのストーリー
この映画には2つのストーリーがあるんじゃないかなと思う。
・ ロズ、キラリ、チャッカリが、キラリの渡りを成功させるために頑張る【疑似家族の物語】
・ 動物たちに全く相手にされなかったロズが、キラリを育てることで感情を獲得し、他の動物達のためにも働くことができるようになり、だんだんと動物たちに受け入れられ、最終的に自らの意思で島を去る【ロズの物語】
2つのストーリーそれぞれにクライマックスが用意されていて、それがめちゃくちゃ盛り上がって本当に素晴らしいんだよね。
疑似家族のクライマックス
疑似家族のクライマックスは、もちろん、キラリの渡りのシーン。渡りのシーズンになる前に、キラリを飛べるようにするのがロズの島での仕事だった。チャッカリとも協力して、キラリを鍛えるべく奮闘するも、キラリは普通なら大きくなる前に死んでいたようなひ弱な個体だったため、なかなかうまくいかなかった。さらに、ロズの隠し事がキラリにバレてしまいケンカしてしまったり、とにかく上手くいかないことだらけだったけど、それでも諦めずに、動物たちの力を借りてキラリが飛べるように訓練したんだよね。
その結果の渡りのシーンだから、もうめちゃくちゃ感動的! 大量の雁が飛び立っていく中、ロズが助走をつけてキラリがその肩に掴まって飛ぶタイミングを図る。最後の別れのシーンなのに飛び立とうとしているわけだから、すごい前向きなんだよね。そこがいい。ロズをずっと気にしているキラリと、崖の先端まで走ってキラリを見送るロズ、キラリの飛んでいる姿を見せようとするクビナガ。今思い出してもジーンとなるシーンだよね。そして最後にぽつんと取り残されるロズの姿がまたいいんだ。
ロズの物語のクライマックス
ロズはキラリを育てるという仕事を終えて、島にいる存在意義を失ってしまい、工場に帰ろうとする。だけど、寒波で雪に埋もれて苦しんでいる島の動物たちを見捨てられず、体がボロボロになっても必死に助けることを選んだ。仕事は終わったけれど、ロズは感情がなかった頃には戻れなかったんだ。そして、それを見て動物たちもロズが島の一員だと認めることになる。
ロズを回収に来た船と大量のロボットたちを前にして、動物たちはロズを守るために戦う。ロズもこの島が自分のいるべき場所だと認め、自分は野生のロボットだと叫んで戦う。ここのシーンもまたいいんだよね。渡りのシーンのエモーショナルな感じとは違って、アクションの見せ場ではあるんだけど、最初はあれだけ嫌っていたみんながロズのために戦ってるのがいいんだ。たまらない。ここも思い出すだけで胸が熱くなるシーンだよね。アクション的にも楽しいところだったし。
おわりに
あらすじだけ読むとありがちが詰め込まれた映画なんだけど、本当に全てが高水準でまとまっていて、最高に面白いエンターテイメントだった。万人に勧められる本当にいい映画。すべてが好き。おすすめです。