学校では教えないから、あなたが子どもに教えてほしい『読書感想文の書き方』

~まえがき~

読書感想文、夏休みの定番の宿題です。
たぶんこれが一番後回しにされるのではないでしょうか?
ドリルとか問題集とか、問題を解いて答えを書く、という宿題はある程度こなせます。
手順が決まっているからです。
問題を読む、習ったことを思い出して書く、わからなかったら教科書(もしくは『答え』)を見る。
しかし、読書感想文は違います。
まず本を読むハードルが高い。
時間がかかる。
そして読んだあとは、内容を思い出して、あらすじを書いたり、心に残ったことを書いて、それに対して自分がどう思ったかを考えながら書かなければなりません。
ただここが面白かった、ここが面白くなかった、でいいだろ、と思いますがそうはいかない。
ちょっと頭が良さそうな感じで書かなければならないから、そんなことを考えるとついつい先延ばしになってしまう。
大概はそんなことだと思います。

子どもたちの最大のハードルは、コンクール向けに大人が気に入るような「頭が良さそうな感じ」で書く、ということでしょう。
なんとなく、堅苦しい感じで書くのはわかりますが、何をどう書いていいかわからない。
ストーリーについての感想なのか、主人公についてなのか、物語全体を見回した感想なのか、それを考えただけで筆が止まってしまいます。
かくいう私もそうでした。
私は夏休みの宿題の読書感想文を、学校で居残りで書かされた記憶があります。
そんな、子どものために、もしくはそんな子どもを持っている親のために、今回はその方法論を披露したいと思います。

思うに読書感想文に求められる内容は、読んだ内容をどう自分なりに解釈し、どう自分と照らし合わせ、それをこれからどう活かしていくかの表明だと思います。
端的に言うと「読む前と読んだ後ではどう自分が変わったか」です。
その部分を押さえておけば、かなり書く労力は軽減されるはずです。
ただもうひとつ、これからお教えする内容は「コンクール」向けではありません。
ただ「そつなく及第点」をとるための書き方だとお考えください。

では「読書感想文」を書く流れを簡単に説明します。

1.心を動かされたシーンをそのまま書く。
    ↓
2.そのシーンの補足説明。
    ↓
3.そのときの主人公の心情、行動を自分なりの解釈で表す。
  主人公は~と思って~と行動し、その結果~となった。
    ↓
4.それを読んで私は~と思い、~と考えるようになった。
(新たな気づき)
    ↓
5.それを踏まえて今後は~していきたい。
 (自己改革の表明)

となります。

今回は、不屈の名作、サンテグジュペリの『星の王子様』を読んでの読書感想文を書いてみましょう。
これを読まれた方は意外と少ないのではないでしょうか。
知っているようで実は正確な内容は知らないという方が多いような気がします。
子ども向けの童話というには、あまりにも洞察が深く、それでいてすべてを説明することなく、解釈を読者にゆだねる書き方は、大人が読んでも唸る箇所が多々ある作品です。
一応あらすじをざっと説明します。

語り部は飛行機乗りの男。
その男が六年前にある砂漠に不時着して困っていたときに不意に現れたのが星の王子様です。
そのときの王子様との交流の話なのですが、半分以上は、王子様の星でのお話、王子様が地球にたどり着く前に立ち寄った奇妙な星の住人たちとの話、そして、地球に着いてから男と出会う前に出会ったものたちとの話です。
そしてその話を、男がまるでそれを見たかのように読者に語るのです。
でもそれは前に言った通り、六年前の話で、男はそれを現在で思い出して書いているのです。
ちょっと複雑な構造をしています。
でも短いので一時間くらいで読めるのではないでしょうか。
では、書き方を順を追って説明していきます。
目標は原稿用紙2枚の感想文としましよう。

1.心を動かされたシーンをそのまま書く。

まず、基本的に「作品の紹介」「あらすじ」を書くのはやめます。
作品紹介、あらすじを書いて、このところがはらはらした、このところが悲しかったと、全体を見渡しての感想を書くのは一番やりがちなことですが、実は意外とあらすじを書くのは骨の折れる作業です。
全部を把握しなければなりませんから、何度も本を開く羽目になり、それだけでもかなりの時間を要します。

今回の方法は、その物語の中で自分が一番心を動かされた場面のみに的を絞ります。
そしてそこから感じ取ったこと、そこから何を得たのかを書くことに専念します。
それならその場面のページを開いているだけで済みますし、もしかしたら全部を読まないで感想文が書けるかもしれません(笑)
もう冒頭からその場面を書き写しましょう。

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