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ある少女の話


国語が苦手でした。

「主人公は、どんな気持ちだったでしょうか?」

バツでした。

「この文章を要約せよ」

バツでした。


お題がある作文を書いたら、いつのまにか、途中から違うことを書いていました。


大学は、国語の試験がない学校を選びました。


現代論という、道徳の話を聞いて感想を書く授業の添削で、赤字で「なんで?」と書かれました。


会話をすると、周りが「?」となることに、気がつくようになりました。

場が白けているのが、分かりました。


無理して、変なことをして誤魔化すようになりました。


どんどん疲れていきました。


「きっと、私はずれている」

「たぶん、私は人の気持ちが分からないんだ」

と、思うようになりました。



少女は、しゃべらなくなりました。

言葉を発するのが怖くなりました。



黙って、空を眺めるようになりました。

波の音を聞いて風の匂いを嗅いでいると気持ちが落ちつきました。


学生時代は、あまり話さない人でも、なんとかなりました。

友達も恋人もできました。



仕事をするようになって、困りました。

会話がなりたちません。


考えたことが、言葉になって口からでてきません。

脳から口への回路が壊れているんだと思いました。


そんななかでも、新しい家族を持つことができました。

きっと幸せなんだろうと思います。


でも、コミュニケーションは一向に上手になりません。



たくさん、笑われました。

嘲笑されました。



ほどなく、

喉の病気になりました。


手術をしました。


「きみは、しゃべらなくていい」と言われているようで、悲しくなりました。



小説、漫画、アニメの世界にどっぷり浸かっていきました。

二次元の世界は、少女を癒してくれました。



あるとき、この世界のことを知りました。


写真を撮ることを覚えました。文章を書いてみることをしてみました。

話さなくても、気持ちを伝えられる方法があることを知りました。


独りよがりだと分かってはいるけど、

だから、今日も少女は、文字と写真に気持ちをのせます。


時間を取り戻したいかのように、少女の心は、成長できていません。

体は大人をひた歩き、経験だけ積み重ねていっています。


いつか、心が満たされ、精神が肉体に追い付くことを想い、この世界を漂っている、


ある少女の話です。















でもね、

この世界で漂う少女は、たくさんの優しさをもらって、とても楽しそうです。




ありがとう。










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