親しいところあちこち
この間会った知り合いは、昔、赤坂で仕事をしていて、その頃はまだあの辺りに料亭通りのような地域があって、その中に職場があったので、よく黒塗りの車が列になって停車していたと懐かしそうにいう。
今はそのあたりは全く関係がないようなビルになっているし、当時お店があったビルも違う会社が入っていたりして当時のような料亭地帯ではなくなっている。
その頃働いていたあたりを歩いてみようと言うので、歩いたけれど、そんな感じだったし、表の通りも今までに何度も変わって最近さらに新しくなっている。
料亭があった頃の話やこの通りは暗黙の了解でこうこういうルールがあったとか、そんな話をしながら歩いた。
私も随分前だけれどそこからちょっと行ったところで働いていたことがある。その辺りも、あまり道や大きな公的な建物の位置や、まあ、これはあまり変わらないだろうと言う種類の建物は変わらないものの、ビルは大抵は建て替わっているし、会社も入れ替わっている。風景はだいぶんかわっていて私の働いていたところももうない。
もと料亭があったあたりから、赤坂見附の方に歩いていくことにした。日枝神社に行きたいというからだ。
赤坂見附の駅の近くは最近でも割合用事があって、よく来る。
日枝神社も少しずつ変わっている。
お宮参りの季節なので、晴れ着をきた母親と子供があちこちで記念写真を撮っている。境内の本殿の真ん前に、真ん中に子供が乗って写真をとれるようにといった説明の絵がついてる、大きい碁盤が置いてある。袴着に寄せて?と思ったけれど、絵をみると女の子も乗っているので違うのかも。碁盤から飛び降りるわけではなく、説明絵では親も一緒にみんなで碁盤に集って写真を撮るような様子だった。
去年もこの大きな碁盤はみかけたので、いつからか始まったサービスなのだろう。
お参りして、その日の連れは御朱印帳に御朱印をいただきたいというので、それをもらった。いい機会なので私もお札をもらう。家にあるお札を持ってくればよかった。ちょうど納めて新しくいただいた方がいいだろうなと思っていたところだった。
先に新しいものをいただいて、前のものはまたあとで納めることにする。つれはお守りを購入。神社を満喫。本殿わきの道から猿田彦さまもお参りに行く。わたしはこちらの神様も好きだ。後ろの脇の細い階段から降りるみちもたまに使って来たりする。
ふたつのお社が並んでいて、たしか右側が八坂猿田彦神社。左がお稲荷さん。山王稲荷。道を教えてくれる猿田彦さまに私にも道を教えてくださいとお願いする。左は山王稲荷なので狐のお人形を買ってそなえている人もいる。
もう少しこの辺りをみたいと連れがいうので、それではと赤坂見附駅を通り越し、青山方面の緩やかな坂をのぼることにする。
青山の方へ緩やかな坂を登っていくと虎屋があるけれど、そこのビルもちょっと前(といってもひとによってはちょっとじゃない)に建て替えられた。古いビルだった頃のことをあまり思い出せなくなってきているけれど、あのビルも好きだった。地下へ狭い階段を降りていくと茶寮があった(今は茶寮は3階で見晴らしのいい美しいフロアとなっている)。好きだったのでよく行っていた。ビルの建て替えでしばらくお店を閉じた時も、直前に行った。
何か見て帰りたいと連れが言うので、虎屋まで歩いて行って、地下のギャラリーへ案内した。以前見た「虎屋のパッケージ展」はまだ会期中だからだ。
前に一度見ているけれど、再度見ても楽しい。馴染みのお菓子もあれば、珍しいパッケージ、見たことがないお菓子もある。
お菓子はパッケージ、包みがとても大切なものだ。美しく楽しいもの。見て開けて、お菓子への期待を大きくするもの。差し上げる人を喜ばせるもの。
今日はレジャーなので、アンケートに答えて金島桂華の「夜の梅に鼠」の絵が印刷されている美しいハガキをもらう。夜の梅は代表的な羊羹の銘。夜の闇の中で香をはなつ梅、その梅のほぼ姿は見えない。羊羹の中に小豆のつぶの断面がかすかに見える様子を暗闇にかすかに感じる梅とした有名な羊羹。その羊羹が竹の皮に包まれ木箱に入っている。掛け紙がかかった木箱の蓋が開いて、封が着られている羊羹の木箱の縁に華奢でちいさい鼠が乗って羊羹を眺めている。ちょっと面白い絵だ。
せっかく行ったので、大好物の羊羹、千里の風を買う。羊羹の中ではこれが好きだ。模様も面白いのでいいけれど、味がとてもおいしい。
夕方だったので生菓子がほぼ売り切れで、ちらっと見た感じでは、山路の菊が一つ、栗かのこが一つぐらい残っていたかもしれない。その横に、珍しいことに栗おこわが二つ並んでいた。和菓子屋なのでおこわは不思議ではないけれど、こう言うふうに売り場に並んでいるのはめずらしい。
「栗おこわだ」というと、お店の人がキャンセルが出たので2つ出しているという。和菓子屋さんのおこわは美味しい。和菓子屋さんでお昼を食べる時、おこわは楽しみの一つ。
この日はちょうど私の誕生日だったので、晩御飯はおこわでお祝いしようとおこわを買った。
そろそろ夕闇が迫ってきてる時間ではあったけれど、茶寮で少しお茶を飲んでお話してから帰ろうとい話になった。おたがいこの辺りにはるか昔に働いていたことがあるので、そういった話をしながら、羊羹とお抹茶を楽しんだ。
懐かしい話が多い日だった。