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泡日記 柔らかな光、ホックニー、ドラム

振替休を取った夫と朝から出かけることにした。
一昨日、夫から火曜日に出かけようと言われ、私は先週の早稲田散策に続いて二週続けて二人で出かける平日が嬉しいのだった。
だから昨晩夫の帰宅が遅く、用意したご飯を食べなかった事にも、ふふんと大らかな気持ちでいてあげた。我ながら単純だ。

夫からホックニーとキュビズム展を提案され、会期終了が近いホックニーに行くことに決めた。
清澄白河へは半蔵門線で向かう。以前の職場の駅を通過する際には、自然と顔を伏せ息をひそめる自分がいて、まだこんなに緊張するんだなと思った。
現代美術館へは、夫がまだ夫でない時にイサムノグチ展を観に行ったぶりである。建物の前に立ってぼんやり当時を思い出してみると、作品の記憶よりも先に、あの空間にどんな光が射していたかとか、高く無機質な天井に人の声が吸い上げられていた事なんかが思い出されるのだった。
きっと今日と似たような天気だったのだろう。

ホックニー。
私は彼という人も作品もほとんど知らないまま訪れたのだが、すっかりファンになって気が付けば夢中で鑑賞していた。
近年描かれた自画像からお洒落なお爺ちゃんというキャラクターの印象が離れなかったのだけれど、Ipadを使ったデジタルの作品やムービーのコラージュ、プリントの見せ方などすごく刺激に満ちていて、全くアートに関係ないジャンルに属している私なんかも、創作意欲が湧いてくるようだった。(素人だけに、単純ゆえに)。

平日の火曜日ではあるけれど館内は次第に込み合って、心なしかデザイナーのような人達が多く観に来ているように思えた。
中でも50枚ものキャンバスを組み合わせて製作された作品は圧巻であった。しばらく作品の後方で佇み、機を見てキャンバスの近くまで歩み寄り空を仰ぐように見上げてみたら、当然ながらそれは2Dの絵なので広がる枝や隙間から除く空は見えないのだけれど、まるでそうしたくなるような取り込まれ感があった。

夫は9枚のパネルを使った「四季 ウォルドケートの木々」や写真をコラージュした「ボブ・ホルマンに話しかけるクリストファー・イシャーウッド1983年3月14日、サンタモニカ」にいたく感動していて、特にこの写真のコラージュは子にさせてみたいとわざわざ言いに来たぐらいである。
曰く「(子が)俺よりセンスがあるから、こういうの上手くやると思うんだよね。」とのこと。
夫は自分のアートや絵のセンスに自信がないと口癖のように言う。
私たちは日頃サッカーしかやらない子の姿を多分同時に思い浮かべて、「うん。やったらいいよね。」と微笑みあった。

気に入った「スプリンクラー」や彼の両親を描いた作品などがポストカードになっていて喜んで買った。デジタルの作品も多いからか図録では展示作品の発色の再現度が高いように感じてすごく見ごたえ、飾りごたえのあるものでこれもマストで手に入れ、ほくほくと嬉しい。
下校時間に間に合うよう、清澄白河の駅近くの町中華で担々麺とチャーハンを食べて電車に乗った。調子のいいもので、帰りは図録を読み耽っていたら以前の職場の駅を気づかないでスルーしていて、我ながら単純だなぁと思った。

最寄り駅に着く前「今日もこれ付けて来たよ。」と左指の指輪を見せたら「今日は分かってたよ。」と言って笑っていた。
よい1日だった。

どの季節のあの木が好き、とか
晴と雨の間に立ってみる、とか
戻ったり進んだりして楽しく鑑賞できます
駅までの道にかかしがたくさん。ドラム人気はここでもです。

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青葉 犀子 -Saiko Aoba-
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