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一冊も読めていませんが、出会った時の備忘録が自分にとって少し特別なので
二月頭某日
父が救急車で運ばれたと連絡を受けて高松へ。
レンタサイクルをして、父が入院している病院から家を目指す途中で、讃州堂書房の前を偶然通りかかりました。だめだめ、時間ない(心の声)と一度は通り過ぎたのですが、いつか行きたいと思ってGoogle mapにピン留めしていた古書店です。10分だけ!と決めて引き返しました。
店内にいるお客は私ひとりだけ。本を選ぶ後ろめたさが、書棚を行き来する足を急がせます。焦るのはよくないと諦めかけた時に、一冊の背表紙に目が留まりました。
水に書く…、水に書く。
今まさに、自分が何かを綴れたとしても、それは水面の上ですぐに流れて消えてしまいそう。そんなこじつけで購入した一冊。
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同じ日。
家の様子を確認し、施設に母を訪ねてから自転車でホテルのある市街に戻ってきた時にはあたりはすっかり夜でした。ひとりだし、ご飯もホテルの部屋で食べるつもりでいたのですが、まだ開いてるかしらと覗いたYOMSで、出会ってしまいました。三冊も。。
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河野裕子さんの歌集を探していたので嬉しかったのです。
父が入院して大変なのに、本屋さんは素通りできない。読めてないのに。
リュック一つで来ているのに、来た時よりも結局荷物は重たくなって帰るのです。
二月末某日
危篤の知らせを受けて家を出てすぐ、たった今父が亡くなったと弟から連絡をもらいました。急ぐ必要もなくなり、行き先を新神戸にして弟と合流して向かうことになりました。
久しぶりの神戸。コロコロを引いて歩きながら私の知っている神戸を探して歩きました。さんちかもあれれ、工事してるんだ。角のファミリアはおんなじだな。
そんなふうに、今そぐわない感情を持ちながらふわふわとセンター街の方まで行ってみました。ここは前もあったなぁと入った古書店で。
またしても河野さんの歌集を発見。
なんと直筆で詠んだ歌が表紙の裏に書かれていました。これは何か父との縁も感じて購入。高かったのですが、今日はいいと思って。
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神戸に住んでいた頃は古書に興味はなかったので今回初めて入店。
河野さん!と運命的に出会ってしまって
そのまま高松に数日滞在。東京から夫と子供も駆けつけてくれたので心強くいられました。慌ただしく葬儀を終えた日に、二人を連れていきたくて大好きなルヌガンガへ。
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三月頭某日
元々、息子と二人で来るつもりで安い航空券を押さえていたのでした。金、土、日を東京で過ごして再び高松にやってきたのです。
疲れていたけれど、やることはたくさんで。
今度は父の遺品を整理するために家とホテルを琴電で行き来しました。サッカーで培った体力自慢の息子も、このスケジュールでさすがに疲れさせてしまいました。ごめんね。
それでも隙間で高松市美術館を駆け足で見学!
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犀星の娘朝子の本を発見。父の看取りが克明に綴られてる。
帰る日のフライトが、搭乗寸前で霧による視界不良で欠航になるアクシデントが発生。あまりにも疲れていて弱気になって、「雲になったジジが、まだここにいてって言っているのかな」とぼそっと呟くと「ジジはそんなことはしない」と息子に言われた次第です。君の存在が今の力の全て、の意味を込めてぎゅうぎゅうに抱きしめました。
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と店主さんにお勧めしていただきました。
学校の図書館で見たことがあるんですって。
延泊しても息子を案内できるところは本屋か美術館しかアイデアが浮かばない私です。翌日の朝、ルヌガンガを再訪して息子が選んだ一冊。帰りの飛行機で読みたいと選んでいました。
私は片付けも母のことも残っているので再び来るでしょうが、息子は今までと同じ目的で高松に来ることはないでしょう。帰ってきてからこの本の裏表紙に、日づけとメッセージを書いておきました。長い長いこれからに、沢山出会う本の一つとして少しの目印になるでしょうか。
そして今日、息子の練習試合の帰り道に吉祥寺の百年へ行ってきました。年末からにこや父のこともあり、久々の百年でした。
夫と息子、二人に付き合ってもらっているので忙しなく書棚を見るのですが、でもなんだか不思議な気分です。おやこの感じ、何でもなくふらっと好きな本屋さんで普通に本を探しているこの感じは、久々です。
時間も、死んでしまった存在ももう元に戻ることにはならないけれども、不在が日常のリズムの中に溶け込むのを肌で感じた、と表現するのな近いかも知れません。
言えるのは、日常でも非日常でも積読は増え続けるという事です。
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慌ただしい備忘録にお付き合いくださってありがとうございました。
あまり考えないでパッパカ書いてしまいました。
あとはこれをじっくり読む時間をこれから作らないとですね。
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