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寓話【心臓の計量/商人の魂の場合】の話。捜索・行方不明の物語。前(示唆)編。

昔何処かで読んでいて童話だと思うものの見付からない……。ので、無いならうろおぼえ書きしておけば良いじゃない!という。
情報提供あると嬉しいです(著作権有効中の著作者さん連絡でしたらこのnoteは消します)(あと所在を突き止めた時も消します)……!


「何故か調べても出て来なくてな……。遠回りに刺す感じの雰囲気とかイソップぽいけど、イソップさんってエジプトじゃないよね……?( )」
「ともとも奴隷で文字書けなくて、後から誰かが纏めたんじゃなかったっけ?国は知らん( )」
「編纂イソップさんじゃないのか……、あっそういえば動物じゃないなこの話( )」
「えぇ……そこまで把握してて分からんのか……( )」

「ーーいいから捜索手伝ってくれ( )」

とある田舎の居間にて。


黒いパンは心臓より重く、金貨の山は心臓より遥かに軽い。

ーー死ぬまで徳を積めという話。


「のでまず、商人が死にます。」
「はぁ……なんの参考にもなんねぇ……( )」

とある田舎の居間にて。


ーーこの話は死後の話。
なのでまず、商人が死にました。

けれど物語は生前に遡るーー…


生前の彼は生の幸せをあくどく稼ぐ商人でした。貧民にも高値で白いパンを売り、パンを金貨に、金貨を大量のパンに、大量のパンを大量の金貨に。貧民に鞭打ち富豪に媚び、金貨と悪徳を積んで商売は順風満帆、将来安泰。毎日が仕事で毎日が祝うべき祭日でした。
積み上げた金貨は高く腹周りは大きく神経は図太く。足元に転がした貧民の生活は兎も角、彼は幸せに贅沢に人生を謳歌していました。

「こんな高いパンは買えません……!」
「せめて黒パンを売ってくれ!」
「もう金も食べるものも無いのです……!」

「どうか」「どうか」「どうか!」

「「「ーー慈悲を。」」」

そう貧民達が縋ろうとも、彼は文字通りの私腹を肥やす事に忙しく、故に白いパンを買えない貧民に用はなく、また施す理由も安くパンを売る理由も、安いパンを売る理由も当然なく、輝く黄金の背後で屍の山を作っていました。

一帯を仕切る彼は「パンが欲しければ金を持ってくれば良い」と言いますが、要は「金が無ければ死ねばいい」という主張です。ただ、彼はこの一帯の売買を仕切る商人でした。ーー『悪徳と評され』ようが、この一帯の経済すべて担う商人でした。貧民と嘲笑った彼等の雇用主は商人で、彼からまともな(労力に正当で地域経済に則した)支払いがなければ、貧民達は拍車をかけて貧しくなるばかり。
雇われる貧民達には、たとえ自分が焼いていようとも、贅沢な白いパンを買う金は無いのです。
ーーそしてこれが負の連鎖だろうが、出て行ける金も無い雇われ人は言われるがまま。然ながら奴隷の様に、白いパンしか焼けないのです。


転機は蝕む様に、かつ唐突に。

いつも空は晴れ渡り、心に邪な暗雲が立ち込めようと、雨が降ることは少ない国でした。燦然と輝く太陽と積み上げた黄金とは翳る事なく、隼頭の神の見通す未来永劫に亘り耀けると思われました。
それでも天気とはいつも読めないものです。

日頃の贅沢、積み上げた高血圧高血糖高脂血漿腹部肥満。更に性格やストレスもあるのでしょうが……商人はある日の宴会の翌朝、人生半ばにして目覚めては来ませんでした。同情の余地はありません。
心の臓の病は本人すらも知らない間に、悪徳商人を殺すに至りました。

そして舞台は死後の国へーー…


『片方に心臓を、片方に正義を。』

犬頭の神による審判は物語の都合上、商人の番から始まります。第一の死。ーーだが断る!商人は自分の死を認めません。

「私はまだ死ぬ訳にはいかない!」「まだ積み上げた金貨を使いきれていない」「それにこれからもっと稼がなくてはならない!」「この私が!何の為に商売をしていると思っている!!!?!」

「まだ“死んでいない“!甦らせろ!!!」

審判そのものの拒否は山犬頭の神も困惑する要求……ではありますが、アヌビス神の所属する神話、商人が所属する国の信仰には、復活や魂の概念が存在しています。アヌビス神の仕事は変わりません。片方に心臓を、片方に正義を。罪の重さを量るのみです。


『心臓が持ち上がれば魂を返そう。』
『心臓が沈んだままならば魂は食い殺される。』
『ーー心臓の対価を乗せて量る事を許す。』

「っ私には“富も名声もある“!そもそも私の“生業は善行“でしかない!!!」

当然、“私の魂は堕ちてなどいない“!……金貨はピラミッドの様に山とあるが、支払う必要などないだろう。


そして高台から見下ろし口元のみで薄く嗤う冥界の神を視界に納める事はなく、魂のゼロサムゲームは商人の同意で執り行われます。
闇色に染まった魂、もとい商人の心臓を片方の皿に乗せた天秤、その反対の皿に真実の羽が置かれました。
ーーが。心臓が持ち上がり釣り合うはずの天秤は微動だにしません。そっと『白いパン』を乗せましたが、心臓の皿は浮かび上がりません。
商人は慌てて手持ちの金貨も真実側の皿に積み上げますが、それでも天秤は微動だにせず、心臓は延々持ち上がりません。焦る商人はどんどん金を積みました。ーーそうしている内、遂に手持ちの金貨は尽きましたが、終ぞ天秤は動きませんでしたとさ。咎人には復活も永遠の魂も有り得ないのです!!!

めでたしめでた死。完!


「ーー嫌だ!!!死にたくない!」 


めでたしめでたし。とはなりませんでした……。商人は迫る第二の死の前に、そもそも第一の死を認めていません。そして心臓と真実の釣り合わない商人の葬儀は、おそらく執り行われてはいませんーー…
しかし滅多にない出番と美味しく堕ちた魂の気配に、醜い合成獣の様な怪物達が駆け付けます。天秤の上とはいえ皿に載せられた据え膳。勿論、食べない訳にはいきません。



後編はこちらからお願いします……!
→『捜索寓話:悪徳商人の身の上話、後編。

すみません長いので続きます、前後編です……!(1/2)



前後編とも画像お借りしています。ちょうど乗せる品物の一致しているものが合ってありがたいです……供給ありがとうございます、お借りします……!

後編とその他小話を『#ノベルる手帳』のタグに纏めています。よろしければこちらもぜひ。よろしくお願いいたします……!


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