「学校教育は創造性を殺してしまっている」ケン・ロビンソンーDo schools kill creativity?
Do schools kill creativity?
「学校教育は創造性を殺してしまっている」
世界で最も試聴されたTED Talkです。
今さらこのTED Talkについて云々するのはこのブログの目的ではありません。
私はこのTED Talkの14分50秒あたりから語られる「ジリアン・リン」のエピソードを聞くたびに、学校教育の一端を担うものとして襟を正さずにはいられません。
その部分の日本語訳を紹介します。
この本を書くきっかけを与えてくれたのは 恐らく皆さんが知らないある女性です。 ジリアン・リンといいます。何人か知っているみたいですね。彼女は振り付け師です。彼女の作品は誰もが知っています「キャッツ」や「オペラ座の怪人」です。彼女は素晴らしい。私は昔、英国ロイヤルバレーの役員でした。見ればわかるでしょ!ジリアンとランチをした時尋ねたんです。「どうやってダンサーになったの?」 彼女の答えは興味深かった。ジリアンは小学生の頃まったくもって絶望的でした。1930年代のことです学校は彼女の両親にジリアンには学習障害があると伝えたんです。集中力がなくいつもそわそわしていた。今だったらADHDと言われているんでしょうが1930年代は ADHDなんて概念はありませんでしたから、 そう判断することはできなかったですよね。当時の人はADHDなんて知る由もなかった。
1930年代のことです。
今もそれほど変わっていないかもしれません。
彼の優しい語り口が沁みます。
とにかくジリアンは専門家に相談に行きました。重厚な壁に囲まれた部屋で部屋の隅にある椅子に座るよう言われ、20分も何もせずに座っている横で専門家は母親に向かってジリアンの学校での問題について話していたそうです。ジリアンはいつも遅れて宿題を出したり、他の生徒の学習に支障をきたすと。
最終的に医者がジリアンの所に来て言いました。「ジリアン、君のお母さんの話をいろいろ聞いて、お母さんと2人で少しお話がしたいんだ。少しここで待ってて」 ジリアンを1人残し医者と母親は部屋を出て行きました。その際に医者はラジオのスイッチを入れました。そして部屋の外で母親に「ここでジリアンを見ていて下さい」と伝えました。するとジリアンは元気そうに、音楽に合わせて動き始めました 。母親と医者はそんなジリアンを見守りました。そして医者は母親に言ったんです。
「お母さん、ジリアンは病気なんかじゃありません。ダンサーですよ」
「ダンススクールに通わせてあげなさい」
ボクは毎回この部分を聞いていると感情の高まりを抑えられなくなってしまいます。
「ジリアンはダンサーですよ」…このセリフの価値!
この医者とのやりとりは、この親子の人生にとってどれほどの意味を持つだろうか。
大げさではなく「たった一言が人生を大きく変える」ことがあるのです。
私はその後を尋ねると「行かせてくれたわ。どんなに楽しかったか言葉じゃ表せない!ダンススクールには私みたいな子ばかりいた。みんなじっとしてられないの。考えるのにまず体を使わなくちゃいけない」
彼女はバレーやタップやジャズダンスを習いました。モダンやコンテンポラリーダンスもやりました。ジリアンはやがてロイヤルバレー学校のオーディションに受かってソリストになり、見事なキャリアを築きました。それからロイヤルバレーを卒業して、ジリアン・リン・ダンスカンパニーを設立しました。その後アンドリュー・ロイド・ウィーバーと出会い、ジリアンは歴史上もっとも偉大なミュージカルを手がけます。何百万人もの人に感動と喜びを与え、経済的にも大成功しました。あの医者じゃなければ彼女を薬漬けにしておとなしくするように言っていたかもしれません。
「あの医者じゃなければ」
ボクにとってこの言葉は身震いするほど怖い言葉です。
教育にたずさわるものとして、「一言が人の人生を左右する可能性があること」を深く深く心に刻みたい。
私を原点に戻してくれるのが、このTED Talkなのです。
追記
昨年の8月21日に亡くなっていたことを知りました。氏のご冥福を心からお祈り申し上げます。