日本語教師って、どんなしごと?
日本語教師という職業を知っていますか?
その名の通り、日本語を教える仕事なのですが・・・
・国語の先生ってこと?
・外国人に教えるの?じゃあ英語上手なんだ!
・海外で働いてるの?
と、よく聞かれます。
答えは、全てNOです!!
こちらの記事では、日本語教師6年目のわたしが日本語教師というお仕事についてご紹介します。
💡国語の先生≠日本語教師
冒頭にも書きましたが、日本語教師と国語の教師って、実は全く別のお仕事なんです。
違いは色々あるのですが、一番分かりやすい点は
1.教える相手
2.授業の内容
3.働く場所
4.必要な資格
この4つです。
【国語の先生との違い①】教える相手が違う!
国語の先生というと、皆さんご存知の通り、小学校や中学校などで日本人の子どもたちに日本語を教えるのが仕事ですよね。
日本語教師は、日本語を母語としない人に、外国語として日本語を教えるのが仕事です。
ちょっとややこしいですね。
つまりはだいたい外国人です。
・日本のアニメや漫画が好き!
・日本で働きたい!
・日本の大学や専門学校に進学したい!
・日本人と結婚して、日本で生活することになった!
・親の事情で日本で生活することになった!
などなど、様々な理由で日本語を外国語として学ぶ方がいます。
そういった方々に、
「あいうえお」「アイウエオ」「1、2、3」
「おはよう」「こんにちは」「ありがとう」
から教えるのが日本語教師です。
多くの方は、中学1年生の春に
「How are you?」
「I'm fine. Thank you. And you?」
から英語の勉強を始めたのではないでしょうか。
あれの日本語版、と言うとイメージしやすいでしょうか。
ちなみに、先ほどだいたい外国人と書きましたが、日本国籍の方もいらっしゃいます。
ただし、日本語が母語ではない方です。
日本語を学ばれる方の中には、日本国籍を取得して日本で生活をすることになった、もしくは、国やご家族のご事情でそうせざるを得なかった、という方も多くいらっしゃいます。
ですので、ここでは「外国人」ではなく「日本語学習者」と表記することにします。
まとめるとこうです。
国語の教師・・・日本語が母語の子どもたちに、将来日本で生活するために必要な表現を身に付けさせる
日本語教師・・・日本語が母語ではない子どもや大人に、将来日本で生活するために必要な表現を身に付けさせる
日本人にとっては、国語=日本語ですが、もちろん他の国ではそうではありません。
日本語がペラペラの日本人に教える日本語と、日本語が全く分からない人に教える日本語、レベルも授業のやり方も全く違います。
ですから、国語の教師≠日本語教師なのです。
【国語の先生との違い②】授業の内容が違う!
教える相手が違うので、授業の内容、つまり教え方も全く違います。
日本語教師は、日本語を外国語として学ぶ人々に教えます。
ですので、初日の授業では、まず、
「見ます」「聞きます」「話します」「言います」
「分かりません」「もう一度お願いします」
などの授業に必要なフレーズを覚えるところからスタートします。
ひらがなを教えるときは、
「日本語には、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類の文字があってね・・・」
「カタカナは外国から来た言葉のときに使うものでね・・・」
「日本語には『あ』『い』『う』『え』『お』の5つの母音があってね・・・」
というところからスタートします。
なぜなら、他の言語では3種類もの文字を使い分けることがないからです。
言語によっては母音の数が違うからです。
日本人にとっては当たり前で、意識せずに使い分けている表現も、日本語学習者にとっては不思議でしかたがありません。
例えば・・・
・「あります」と「います」は何が違うの?
・「言いにくい」と「言いづらい」は同じ?
・「沖縄に『行く』とき買いました」と「沖縄に『行った』とき買いました」は同じ?
・「食」を「しょく」と読むときと「しょっ」と読むときの違いは?
などなど・・・
あなたはすぐに答えられますか?
答えは後ほど!!
わたしは今年で日本語教師を始めて6年目ですが、いまだに学習者に質問されると「うっ」となります。
「うっ」となっているのがバレないように、
「じゃあ、誰か説明できる人はいますか~?」
「じゃあ、皆さん一緒に調べてみましょうか~」
とごまかします。
ごまかして、時間を稼ぎつつ、Google大先生に聞きます。
かなり時間がかかってしまいそうなときは、正直に「すみません。宿題にさせてください。明日説明します!」と言うこともあります。
そうした、日本語と他の言語との違いを知り、日本人にとっては当たり前であることを伝えることから始める、それが日本語教師の仕事です。
【国語の先生との違い③】働く場所が違う!
国語の先生は、小学校や中学校などで公務員(私立の場合は違いますが)として働くことが多いかと思いますが、日本語教師の働く場所は様々です。
日本語教師の働き方は
・日本語学校の常勤または非常勤講師
・大学や専門学校の常勤または非常勤講師
・フリーランス
など様々です。
それから、地域のボランティア教室で教える日本語教師もいます。
また、働く場所も様々で、上記の学校の教室以外にも
・講師として派遣された小学校の教室
・講師として派遣された企業や介護施設の一室
・オンライン(ZoomやSkypeなど)
などがあります。
日本語教師として働く方の多くは、日本語学校でフルタイムの常勤講師やパートタイムの非常勤講師として働きます。
わたしもその一人で、都内の日本語学校で常勤講師として勤務しています。
学校と言っても、運営しているのは株式会社ですので、要するに会社員です。
(※この記事を書いた翌年に独立し、現在はフリーランスとして働いています)
こちらの記事では、日本語学校でのお話を中心に紹介しています。
日本語学校で働いていると、様々な学習者に出会います。
一番多いのは、留学生です。
彼らの目的は、日本の大学や専門学校に進学すること、日本の企業に就職することです。
そのために必要な日本語力を身に付けるため、日本語学校に通います。
留学生以外にも、日本人と結婚して日本で生活することになった方や、日本国内にある英語が公用語の企業で既に働いてる方、国やご家族のご事情で来日された方なども、日本語学校に通っています。
それから、企業から依頼を受けて、企業内の研修の一環として外国籍の社員の方への日本語の授業を行うこともあります。
企業の担当者から、「社内では基本的に英語を使うが、日本での生活や社員との業務外のコミュニケーションのために、簡単な日本語を覚えさせてほしい」といった感じで依頼を受けます。
これは、日本語学校に来ていただくこともあれば、講師が企業側に伺って会議室などをお借りすることもあります。
また、介護施設で働くEPA介護福祉士候補者に教えることもあります。
ちょっと聞き慣れない言葉かと思いますので、簡単に説明します。
日本の介護施設で働きながら、日本の介護福祉士資格取得(国家試験の合格)を目指す外国人がいます。
日本の介護業界の人手不足解消のため、外国人に来てもらおう!実際に働きながら勉強してもらおう!というものです。
EPA(経済連携協定)に基づいて行われている活動です。
介護福祉士資格の試験の内容は、日本人が受けるものと同じです。
外国人(インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国)なのにも関わらず、です。
過去問を見ましたが、日本で生まれ育ったわたしにもちんぷんかんぷんでした。
試験時間が1.5倍になる、ふりがなが付く、といった多少の配慮はありますが、その程度です。
そのようなハイレベルな国家試験の合格を目指して一生懸命勉強する方に、介護に関する日本語を教えるのも日本語教師の仕事です。
ちなみにわたしは経験がありません。
介護の知識・経験が全くないからです。
彼らの日本語の授業を受け持つためには、介護福祉士の資格を持っていなくても、介護の現場で使う語彙・表現(経験のない日本人には聞きなれないものばかりです)を知っていなければなりません。
【国語の先生との違い④】必要な資格が違う!
日本語教師には、教員免許のような国家資格がありません。
絶対に必要な資格はないのです。
ですが、日本人であれば今すぐ誰でもなれる、というわけでもありません。
ボランティア教室は資格が不要な場合が多いのですが、日本語学校や専門学校、大学の常勤講師または非常勤講師として働く場合、以下の条件のいずれか1つを満たす必要があります。
①大学の学部または大学院で日本語教育主専攻または副専攻を修了していること
②学士以上の学位を持ち、なおかつ文化庁が指針とする420時間以上の日本語教師養成講座を修了していること
③日本語教育能力検定試験に合格していること
わたしは③の「日本語教育能力検定試験に合格」のみ満たしています。
②の420時間以上の日本語教師養成講座も修了していますが、最終学歴は高校です。
高卒ですが、420時間以上の日本語教師養成講座修了+日本語教育能力検定試験に合格しているので、就職することができました。
今後、資格の要件が変わるかも?国家試験になるかも?学歴が必要になるかも?と言われていますが、まだ決まっていません。
③の日本語教育能力検定試験ですが、年に一度、10月に実施され、12月に結果が出ます。
合格率は毎回20%台と低く、独学は難しいと言われています。
日本語を母語としない方に日本語を教える際に必要な知識や、素質を問う試験で、筆記(選択)と聴解、作文もあります。
求人の募集要項には「3つの条件のいずれか1つを満たしていること」と書かれていますが、試験に合格しているだけでは、就職はかなり難しいです。
というのも、試験に合格していても、実践経験がないからです。
大抵の日本語学校では、420時間以上の日本語教師養成講座で模擬授業を経験していることを求められます。
四大卒で420時間以上の日本語教師養成講座を修了していれば試験は不要なのかというと、そうではありません。
必要な知識がしっかり頭に入っている証明になり、就職が有利になりますし、学校によっては手当が出ることもあります。
420時間以上の日本語教師養成講座と日本語教育能力検定試験については、後ほどまた詳しく説明します。
💡日本語、どうやって教えるの?
◎やっぱり英語が必要?
先ほど、授業の内容を簡単に紹介しましたが、あれ、実は全部日本語で行います。
初級の授業でも、日本語が全然話せなくても、全部日本語で行います。
「直接法」と言って、多くの日本語学校では、日本語で日本語を教えます。
日本語教師は、現場に立つ前にそのための訓練を積むのです。
ちなみに、中学校の英語の授業のように、日本語などの媒介語を用いて外国語を学ぶ方法を「間接法」と言います。
では、なぜそんな大変なことをするのでしょうか。
答えは簡単です。
学習者が色々な国から来ているからです。
学習者の中には、英語が堪能でない方もたくさんいます。
「自分の国の言語以外はちょっと・・・」
「英語は挨拶ぐらいしか・・・だから英語で説明されても・・・」
という方がたくさんいます。
日本語学校では、色々な国から来た学習者が同じ教室で学びます。
彼らが共通して理解できる言語はありません。
しいて言えば、日本語のみです。
ですから、日本語で日本語を教えるのです。
初級の授業なんてもう大変です。
身振り手振りで表現する、イラストや写真を用意しておく、
色々方法はありますが、一番重要なのはノリと勢いとテンションです。本当に。
とっても大変ですが、身振り手振りでなんとか意思疎通を図っていた学習者が、数週間、数か月後には簡単な会話ができるようになっているのです。
半年後には冗談まで言えるようになっていたりします。
1年後には、コンビニのレジで「いらっしゃーせー・・・あっ先生!」なんて言われたりします。
4年後には、「先生、ご無沙汰しております。おかげさまで就職できました!」なんて言われたりします。
この学習者の成長を見守ることが、日本語教師の醍醐味であり、やりがいなのです。
◎何を勉強したらいいの?
日本語学校に就職するためには、以下の条件のいずれか1つを満たす必要があります。
①大学の学部または大学院で日本語教育主専攻または副専攻を修了していること
②学士以上の学位を持ち、なおかつ文化庁が指針とする420時間以上の日本語教師養成講座を修了していること
③日本語教育能力検定試験に合格していること
わたしの最終学歴は高校ですが、文化庁が指針とする420時間以上の日本語教師養成講座を修了し、日本語教育能力検定試験に合格し、日本語学校に就職しました。
日本語教師養成講座は、色々な会社や大学で受けることができます。
ただし、コースによっては、文化庁が指針とする420時間を満たしていなかったり、模擬授業がなく座学のみだったりします。
以下の文化庁のホームページで、該当の機関・団体を確認することができます。
機関・団体にもよりますが、わたしはフリーターになってアルバイトをしながら養成講座での1年間の座学+3か月間の教育実習を経て、日本語教師になりました。
わたしの周りには、「仕事を辞めて座学を半年間で終わらせた」という方や「仕事をしながら2年かけてなんとか座学を終わらせた」という方もいます。
日本語教師を目指す方の多くは、すでに別の仕事をしていたり、主婦としてパートで働いていたり、仕事を引退して子育ても終わっていて第二の人生として日本語教師に・・・という方です。
多くの教育機関が、そういった方それぞれのニーズに合わせて、自分でスケジュールを組んで取り組むことができるような仕組みを設けています。
では、日本語教師養成講座では何を学ぶのでしょうか。
日本語教育能力検定試験ではどのような問題が出るのでしょうか。
養成講座で学ぶ内容と検定試験で出題される内容は共通する部分が多いので、まとめてご紹介します。
ほんの一例ですが・・・
・日本と世界の関わり
・日本語教育の歴史
・言語を学ぶ際の脳のはたらき
・言語学習に関する心理学
・様々な言語教育法
・学習者の評価法
・日本語と他の言語との違い
・日本語の仕組み、特徴
などなど、たくさんのことを覚えなければなりません。
これ本当に必要なのかな・・・と思いながら勉強しましたが、どれも必要でした。
6年目の今も、ときどき養成講座時代の教科書を引っ張り出して読み返して、「あ~そうだこれだこれだ」とかやってます。
この座学に加えて、養成講座では、教育実習として何度か模擬授業を行いました。
実は、授業で学習者によく聞かれる日本語の文法や語彙については、養成講座ではあまり学びません。
養成講座で学ぶのは、「学習者に質問され、答えられないときにどうやって自分で調べるか」
その方法を学び、グループワークで練習します。
先ほど書いた学習者から実際に聞かれたこの質問。
・「あります」と「います」は何が違うの?
・「言いにくい」と「言いづらい」は同じ?
・「沖縄に『行く』とき買いました」と「沖縄に『行った』とき買いました」は同じ?
・「食」を「しょく」と読むときと「しょっ」と読むときの違いは?
これも、実際に参考書やGoogleで答えを調べました。
では、簡単に説明します!
・「あります」と「います」は何が違うの?
【ある】意思のない物。植物を含む。
【いる】意思のある生き物。人間や動物など。
・「言いにくい」と「言いづらい」は同じ?
【~にくい】
物理的・技術的・能力的に難しいこと、口にするのを躊躇う内容
例「『きゃりーぱみゅぱみゅ』って本当言いにくいよね~」
例「言いにくいんだけど、旦那さんがこの間女の人と歩いてるのを見ちゃって…」
【~づらい】
心理的に難しいこと、自分にとっても辛い内容
例「あの人ちょっと臭いが…。でも本人には言いづらいよね…」
・「沖縄に『行く』とき買いました」と「沖縄に『行った』とき買いました」は同じ?
沖縄に【行く】とき、お土産を買いました。
→「沖縄に行く」という動作の前にお土産を買った。
東京の羽田空港で東京ばななを買い、それを持って沖縄に持って行き、沖縄にいる知り合いに渡した。
沖縄に【行った】とき、お土産を買いました。
→「沖縄に行く」という動作の後にお土産を買った。
沖縄の那覇空港でちんすこうを買い、それを持って東京に帰り、東京にいる知り合いに渡した。
・「食」を「しょく」と読むときと「しょっ」と読むときの違いは?
【食=しょく】のとき
直後の音が「か」行以外。
例「食事」「食卓」「食堂」
【食=しょっ】のとき
直後の音が「か」行。
例「食感」「食器」「食券」
長くなりましたが、日本語教師について紹介させていただきました。
もっと少し詳しく知りたい!という方は👇👇コチラ👇👇
最後までお読みいただきありがとうございました!
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