抜け殻と自転車とぶどうジュース
暑くてだるくてやる気のない気だるいワンオペ育児の休日。
朝からテレビはつけたまま、化粧もせず、掃除も洗い物もせずに気づけばオットの帰宅予定時間。
我が家のお子たちは年子兄妹。2歳とつい先日4歳になったふたりは朝からずっと、私のいるところについてきては私の両隣を陣取り、両耳元から私に話しかける。
私に似たのか声のデフォルトボリュームが大きいこともあり、止まらない話と数分おきに始まるケンカ。昼前に私の脳みそはバグってしまった。
オットは帰宅するなり私の不機嫌な空気を察し、せっせと家事をしてくれる。
生理前って、そんなオットにすらイライラが止まらない。
「散歩でも行くか」
すべてを察したかのようなオットの一言。
最近真っ赤な自転車を買ってもらった息子は飛び跳ねて玄関へ。
それを見た下の子は飛び跳ねないけど玄関へ。
近所の公園。
私が飲み物を買ってあとから合流すると汗だくの長男が得意気に自転車をこいでいた。
先週より漕ぐチカラが増してるわ。
近くに腰かけ3人を高みの見物。
ウトウトしていると三輪車の音。下の子が突進してくる。イノシシのように私めがけて真っしぐら。
「ママ見てーー」
なあに。と目をやるとそこには茶色いセミの抜け殻。
「うぎゃ、、」(本当に驚く時の声)
見ると三輪車の後ろに大量の屍たち、いや抜け殻たち。思わず後ずさる私。
これ、どうするの、、。
そういえば去年の夏も大量の抜け殻を取っては虫かごに溜めていた。
何度見ても一瞬後ずさってしまうので、頃合いをみて捨てた記憶が甦る。
抜け殻たちよ、君たちも我が家に来たらいい頃合いを見て母に捨てられるのだよ。広い公園で余生を優雅に過ごした方が幸せよ。
動き出しそうな抜け殻たちに念を送ってみたが、彼らは帰る様子もなく横たわってる。彼らの行く末を思うとなんとも切ない。
、、と、私の横に座った下の子。
ガサゴソ私のバッグを漁り、ぶどうジュースを飲み始めている。
ちょっと飲むと、ママこれ持ってーとジュースを手渡し、横たわる彼らを置き去りにオットと長男の元へ走っていく。
あれ、抜け殻は?放置?
数秒で彼女の関心事からこぼれ落ちた彼らに
同情の思いを馳せる私。
私の手にはストローの潰れたぶどうジュース。
遠くから顔を真っ赤にして走ってくる息子と自転車。
部屋とワイシャツと私。
ならぬ、
抜け殻と自転車とぶどうジュース。
そんな夕方のひとコマ。