人事評定に滲む煩悩
晩秋に少し真面目な人間観察。
「草間彌生」先生(前衛の女王)のトップ画像は、心の苦しさから身を守る水玉模様の儀式に肖って、本記事に纏わりつく俗念を払い捨てるため。
2012年 NY5番街「Louis Vuitton Maison」に出現したPop-up shop を回想。
企業の管理職なら、人事考課(Performance appraisal)を調整する評定者会議が終わった後に、後味の悪さを拭えない経験はないでしょうか。複眼で横ぐしを通す仕組みはとても有意義です(そうした制度が不十分な会社もあるでしょう)。ただ、上司・他領域の管理監督者と、互いの部下の優劣を巡って喧々諤々にもなりえます。腹の探り合いによる毒気にやられ、精神的なダメージを引き摺ることもありました。場数を踏んでいても、情念を揺さぶり、静かに達観できないのは、いったい何故だろうか。
たぶん「公正に客観視する」とは、移ろいやすく多面的で、人間とは主観や思い込みの申し子だからに他なりません。ましてや、決められた時間内に纏める会議では、慎重に清く評価基準を保とうとしても、ともすると、以下のような濁流が発生しがちです。
場の雰囲気による偏重リスク
人物評価を討論する際には、一般のディスカッション・ディベートと同じく、ある発言を機に「そうね、そうだ~」といったうねりが起こって、特定のムードやモメンタムが形勢されることがある。その流れを反転させようとしても、ベクトルの軌道修正が間に合わずに討議が収束しかねません。突発する魔物に会議を躍らせることなく、無心に平たんな姿勢で、論調のゆがみは跳ねのけバランスを堅持しないといけません。固定観念や先入観によるラベリング
「Aくん、あいつはすごい、彼はいつもよくやってるね」という定説が常態化することがあります。BさんやCくんがそれなりに秀でた業績や能力を発揮していたのに、Aくんの定位置を容易に覆せない。Aくんは、確かに優秀だけど、全く順位が入れ替わらないほどの鉄壁とはいえないはず。しかしながら、結果としてエスカレーターに乗ったように昇進するエースという先入観が浸透。さらに同調効果が蔓延すると、敢えて異論を唱える評価者が出てこない傾向が強まるのです。声の大きい人とツルむ人
被評定者の仕事が多種多様な場合、いわば異種格闘技となり、全体を見渡せる評定者は僅かになりがちです。自分の部下を大きく吹聴する灰汁の強い上司が対抗馬を蹴落としにかかるなら、さすがに信頼感を損ねます。さりながらも、暗に足の引っ張り合いが始まることはあり、会議の行司役は、部外者から第三者意見を求めて仲裁を試みるでしょう。それでも今度は、当初は模様眺めしていたのに、都合のよい上司どおしが徒党を組み始めたりしかねません。似たものどうしの厚遇
それほど能力のないXさんが、実力に比べて過大評価を得ていたケースあり、何故だか不可解でした。彼は、定型業務の部署でマネジャーとなった人物だが、同じ部署出身でのしあがった重鎮の上席者が、手厚く毎度の評価を高めてくれていたのです。知性なき親分肌の重鎮は、自分より有能な人物を好まず、自分を慕ってくる子分を愛でてたいようです。そうした守護者がいる場合、資質が劣っていたり、実は他力本願でも看過される優遇が稀に生じます。タイミングの良し悪し
昇格や昇進は、その時々の競争相手の多さにも左右され、たまたまラッキーチャンスをつかむ者がいれば、その逆も然りである。マラソンのように同期のトップ集団から外れると、溌剌と駆け上がる年次の若い後輩達との競争になり、どんどん追い越される憂き目もあります。こうしたサラリーマンの悲哀、やりきれなさを嘆くことは世の常ですね。しかしながら、「塞翁が馬」の故事が象徴するように、後になってみないと、運のなせる業の転じ方は、何とも言えないものでしょう。人間心理と不条理
実際に仕事ができる人、マネジメント力高い人が、真に評価されるかは、階段を昇るににつれて少し怪しくなってきます。上位陣の仲間入りには、引き揚げてくれる上司との相性、経営層の意を汲んだ立ち回りのうまさ、椅子取りゲームの「狡さ」など、裏庭の資質も影響しかねません。
忖度せずストレートに進言する、上席への報告・説明がそっけない、そりが合わない関係性から、浮かばれないケースも事実あるでしょう。
「目をかけてもらえない」「上から嫌われる」つまり可愛がられないと、なかなか登用されにくい。
もちろん、健全な組織かつ真摯な評価者集団である限り、人事評価の純度は適度に保たれるので、ご心配なきよう。それなりの企業なら、人事コンサルタントからも提案を受けて、制度設計の進化に余念がないでしょう。ただ、こんな生々しい留意点までは評価マニュアルに決して書かれないし、誰も書かこうとしない、人生ゲームの要素といえます。私自身、媚びるなど嫌い、そんな芸など毛頭なく、上を見ての仕事は一斉してこなかったアウトロー。人たらしや、駆け引きに長けた、オヤジ・キラーは頭角を現しやすいかも。人が人を評価・処遇する際には、バイアスが蠢くので、最終評定者の目利きと采配がとても大事ですね。