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データ戦略の考え方を考えてみた
⚠️こちらはAntway Advent Calendar 2023に寄せて書かれた、2023/12/21分の社内向け記事を転載したものです。なお、記事の内容は個人の見解に基づくものであり、所属組織を代表するものではありません。
戦略を作るのは難しい
Antwayデータチームの佐々木です。
一人データ組織ではあるが、事業上データ活用が非常に重要になってきたので、いい感じのデータ戦略を考えてくれと上からお達しが来た。
そもそもデータ組織の戦略って他社はどう考えているんだろうと思って色々調べては見るものの、ネットの世界であまりいい回答は得ることはできなかったので、今回色々試行錯誤した内容を備忘録的に残したい。
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これまでの経緯
これまではとりあえず事業部から降ってきたオーダーをこなすことに終始しており、組織としてそこまで明確な中長期ビジョンを持てていなかった。
これは、駆け出しスタートアップで事業戦略もシンプルであり、データ活用がプロダクトの成長においてコアな役割を果たしていなかったためである。
しかし、この一年くらいで組織・事業が成熟するにつれ、非線形な事業成長を達成するためには、積極的なデータ活用が不可欠なフェーズに入ってきた。(弊社もオフィス社員が30~40人規模になったこともあり、これくらいのフェーズのスタートアップが必ず通る道なのかもしれない)
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なぜデータ組織に戦略が必要か
シンプルに工数がない
弊社データ組織は一人だったので、真に注力すべき分野にリソースを全投下する必要がある(データ人材が潤沢にいる組織はほとんどないと思うので、これはあらゆる会社に当てはまるかもしれない)
でもニーズは増えていく
事業の成長・(主にビジネスサイドの)組織拡大に伴い、様々な施策が並行で走るようになってきたため、よりシビアに優先度を決めていく必要がある
専門性が高い
事業ドメインの複雑化・データ拡大による打ち手の増加により、経営・事業部が検討する施策が最適解にならない可能性もある
今どのようなデータが蓄積され、どのように事業に活用できそうかは、データ組織の人間でないと分からないので、データ組織起点で経営戦略にFBする必要もありそう
データ組織の役割とは何か
前提
組織の成熟度とか業界によっても異なりそう。弊社は一人組織なこともあり、データ関連なら何でもやりますくらいのレンジの広さ。
データ組織の機能
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データ組織とは、自分達のBSから、AI/BIをプロダクトとして生み出し、会社のBS・PL・CFを改善する機能を持つストリームアラインドチームと定義した。
会計は門外漢なので、ざっくりのイメージで捉えている
会計のフレームワークを用いた理由としては、守備範囲の定まりづらいデータ組織のやるべきこと(やらないべきこと)を、適切にMECEに捉えるため
このように分けることで、この後のデータ戦略で検討すべき必要十分のスコープを定義できると考えた
ストリームアラインドチームは顧客の要望探索から本番運用までデリバリーに必要な機能一式を備えている組織のこと
詳しくはチームトポロジー参照↓
【何を改善するのか】
事業BS :意思決定効率を下げる業務負債の解消
Ex. 激重エクセルや非効率的な運用業務など
会社が新しい機能を増やすたびに発生する
スタートアップの場合、大体最初はデリバリー優先の運用カバーで始まるが、永久に除却されずに負債として積み重なっていく業務があると思う。こうしたものは不要に社員リソースを圧迫するため、適切なタイミングで返却する必要がある。
事業PL:ソリューション提供による収益の拡大・利益率の改善
Ex. レコメンドエンジンによるCVR改善など
事業CF:無駄な投資の回避。施策のROI最大化
Ex. 効果検証設計など
最小投資で最大効果を得られる施策を、いち早く見つけることが重要(検証期間が伸びるほど、成果までのリードタイムが長くなるので)
【どのように改善するのか】
AI/BIの提供
AI:ここでは顧客・事業に対して新たな価値を生み出すものと定義
BI:ここでは意思決定の精度・速度を改善するものと定義
データ組織BSの利用
AI/BIプロダクトを生み出す原資
金融資本:ツール契約費用など
人的資本:どのようなスキルセットを持った人間がどれだけいるか
基本的には人を増やしたり、SaaSを契約することで、組織のcapabilityは向上する
技術負債の発生
機能を追加することで発生
SaaSを契約することで負債が増えたり、人を増やすことでコミュニケーションコストとしての負債が発生することもある
データ戦略の検討
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基本的には全社戦略・事業戦略にアラインする形で、データ戦略が決定される
まずCEO・CPOと会話し、会社・プロダクトが中期でどのような戦略を取ろうとしているかを明確にした
具体的には、いつまでに、どの数字を、どの水準まで改善する必要があるのか。そのために、どのような大型施策に注力しようとしているのか、など
次に、その戦略を達成するために、ボトルネックになりうる箇所を調査した
仮にデータ組織が介在しない場合、戦略のどこに無理が来るのかを考えてみた
ユーザー規模が非線形に増加する場合に、既存のオペレーションは成立するのか?
新機能を開発した場合に、利益率は事業戦略を達成できるのか?
こうした内容を各事業部からヒアリングしながら、会社が戦略通りに動いたときに、いつ、どこに、どのような課題が発生するかをシミュレーションした
D2C事業を営む弊社にとって、バリューチェーン上に存在しないデータ活用は、正直なくても事業は回る。だからこそ、データ活用が存在しない世界線で、会社が意図通りに成長できるかを検討することで、真にデータ組織がやるべき事項を洗い出すことができると考えた
逆にもしこの時点で、データ活用がなくても戦略を達成できそうなら、戦略自体にFBする余地がありそう
最後に、上記整理から、いつまでに、どのようなことを達成する必要があるのかを時系列にマッピングした
例えば以下
一年後、需要予測の高度化と発注量の最適化によって、原価率の削減
半年後、Web集客の最適化によって、CACの改善
3ヶ月後、データ基盤のリファクタリング完了・DevOpsの整備による開発生産性の改善
こうした内容をもとに、いつまでにどのようなデータが基盤上にある必要があるのか、どのようなスキルセットをもつ人材を採用する必要があるのかを明確にすることができた
弊社はこの整理をしたときに、データ組織のBS改善を足元の第一優先とした。
今後多方面の施策でデータ活用が重要になりそうだが、サービスレベルが高いソリューションを乗せられるデータ基盤ではないことや、自分一人の工数では対応しきれそうにないと判断したためであるBSの改善という文脈で、ようやくプラットフォームチーム、イネイブリングチーム、コンプリケイテッド・サブシステムチームの役割が必要となる
こちらもチームトポロジー参照
スタートアップでは、こうしたチームを定常的に持つのは難しいので、短期的に業務委託の人を雇いながら、新たな技術の習得やプラットフォームの改善を行っていくのが良いと考えている
まとめ
今回の検討を始める前に、ストーリーとしての競争戦略を読んだ。戦略の本質とは「違いを作ること」、そして、「つながりを持つこと」という解釈は、自分にとって会社の戦略を理解する上で、非常に役に立ったと思う。
全社戦略という大きなストーリー(作戦)を破綻させないために、足りてないピースを埋める役割を、データ戦略は担うべきという理解をした。そのため、一技術者としても、目前の断面としての理解ではなく、会社がどのようなプロットに乗っているかを理解していく必要があるし、そのためには、より経営に近い上位層と直接コミュニケーションをとっていくことが大事だなと思った。
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