【感想】関係する女 所有する男

この新書は講談社から2009年に出版されたものです。精神科医である斎藤環さんが「男は所有を求め、女は関係を欲する」という論を展開します。
10年以上前の新書ですが、俗なテーマを扱っているので、楽しくサクサク読み進めました。自分の思いつきやエピソードをどこかに記しておきたくなり、語ってみようと思います。

本書の説明

関係する女 所有する男
著:斎藤環 講談社, 2009/09/20 - 256 ページ
男女の違いという大テーマに斎藤環が挑む! 男と女はどう違うのか? 「性差」とは一体なんなのか? 人気の精神科医が、社会にはびこるトンデモ仮説を排し、この大テーマをさまざまな角度から分析する。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000210494

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この本は日本における男女の性差を解説するものですが、ジェンダー研究の本で多く扱われる「”権利の性差”を積極的に否定して改善へ導く」ことを主題にはしていません。学問書とは違い、とてもライトな内容です。男性と女性の性格的特徴を色々な側面から比較する部分が面白いです。

「おたく」の生態から導く男女

とくに、第5章に出てくる特徴分析はすごく納得させられました。
・おたく=美少女つまり「ビジュアル」が絶対的な萌え要素である
・腐女子=登場人物(複数の男性)の攻/受つまり「関係性」を重んじる

男性向けマンガの中で、恋愛やハーレム要素の強いものに関していうと、ヒロインは宇宙人でも魔法使いでも良い。ただし美少女に限る(もしくは特定のフェティシズムを刺激する”武器”を持っている)。
外見が良ければ何でもいいわけではなく、美女であることが前提なのです。しかし、その美女は2次元ゆえに、身体には触ることができません。所有できない=「現実には手に入らない」ことこそがフェティシズムの至高状態をずっと維持させると指摘します。ああ怖い。ああ気持ち悪い。でも否定できない。

僕の知り合いの女性には「”脳内カップリング”をしたことがある」という人が多くて驚きます。これは、仲の良い男性2人を、勝手に脳内で攻/受のポジションに置き、やり取りを妄想するひとり遊びなのだそう。TVタレントでもクラスの男友達でも、すぐにカップルを組むことができるんだそうで…。これもまた気味の悪い行動に思えます。

これらを「おたくの本質」ではなく、「人間の、ジェンダーの本質」とみるのが面白い。その考察に至るまでの理由が、はじめに〜4章までに載っています。
要約が難しいのでこれくらいに。本書ではもっと分かりやすく「おたく文化にみる性差」が論理立てられています。また、終章の「母がつくる娘の身体」「女性の空虚感の理由」なども面白い。これまで何となく感じていた性差をやっと理解できた気にさせてくれます。

ありふれた体験 男女差あるある

読みながら思い出した個人的な体験も少し。
理由もなく苛立つ「虫の居所が悪い時」がありますよね。そういう場合、僕は「放っといてくれ」という態度を出して、独りになろうとします。けれど女性はなぜ機嫌が悪いのか尋ねてきて、解決策を一緒に探そうとさえしてくれる。そのことがまた苛立ちを増幅させてしまうのです。
所有している主なんだから一時放棄するのも俺の勝手だ、と言わんばかり。
後でしっぺ返し(別れ)が待っている…。

いっぽうで、女性が怒っている時に、その理由を知ろうとしないことは自殺行為になりかねません。「放ったらかしにしてどういうつもり?」「あなたは私に興味無いもんね」「どうせ話しても解ってくれないなら良いわ」
話したいなら話せばいいじゃんいくらでも聞いてあげるよ。問題を提示してくれないと解決策も出せない。どうせ解らないってどうして判断できるの?

…まったく、そこは問題ではない。30を過ぎてようやく僕も理解できるようになってきました。具体的なアドバイス要らないんですよね。ちゃんと話を聞いてあげるようにしよう。関係することが大事なのです。

新書を読む面白さ

学生時代も社会学や人文系の本を読みかじってはいたものの、本当の面白さなんてわかっていなかったような気がします。自分なりの人生観なしに実学的な本を読んでも、表面をなでているだけのようで掴みにくい。自分の体験を重ねながら読むようになってはじめて「正しい地図の読み方」ができているな、という実感が湧くのではないかと思います。

これからも自分のアウトプットの場として、また面白く話せるようになるための練習として、noteアップがんばります。

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