スキに理由なんていらない
10年前の2010年、私はイタリアにいた。
中学生の時、イタリア留学をすると決めて
10年越しに叶えた夢。
イタリアはシエナに着くと、語学学校で日本人は私一人。
到着早々、迎えてくれた校長先生との会話で撃沈したおかげで、私は入学テストを受けることもなく初心者クラスに名前が入っていた。
入学後に待ち受けていたのは、自己紹介の嵐。
名前、年齢、日本人であること
学校のクラスのみならず出会う人出会う人みんなに説明すると、そのあとに必ず飛んでくる質問があった。
「なぜイタリアに来たの?」
留学の目的は人それぞれだろう。
大学に行くために来た人
ファッションや貴金属・革製品を学ぶ人
語学を学びたい人
イタリアンの修行に来た人
ワインが好きな人
余暇を楽しみに来た人
でも私は、どれにも当てはまらなかった。
ただ、イタリアが好きで
ただ、行こうと決めた。
じゃあイタリアの何が好きかって?
それすら明確な答えはなかった。
数々の世界遺産
美しい景色
美味しいイタリア料理
陽気なラテンの雰囲気
明るい人々
後付けすればいくらでもある
でも、なぜ留学先がイタリアだったのか?
その質問には「イタリアが好きだから」としか答えようがない。
そしてもっと言うと、なぜ好きなのかと聞かれても正直はっきりとした答えがなかったりする。
なのになぜか
「イタリア」というキーワードに心は踊る。
ストライキでもないのに、予約したローマ行のバスが運休してたり
日曜日はスーパーも昼過ぎに閉まっちゃったり
家のトイレがシャワーの奥にあって、ルームメイトがシャワー使ってるとトイレ入れなかったり
レストランのピザは1人丸々1枚食べるのが普通だったり
朝のエスプレッソを飲まないと不機嫌だったり
道行く人も、バスの中でも、みんな誰かに電話して止まらない「Caio」
そんなカルチャーショックも
思い返せば、最高の思い出。
そしてイタリアにはこんな格言がある。
Non è bello ciò che è bello, ma è bello ciò che piace.
(美しいものは必ずしも美しくなく、好きなものこそが美しい)
スキには、理由なんていらないんだ。