男の作法
この間歯医者に行ったときのこと。靴を脱いでスリッパに履き替える瞬間に靴下を履いていないことに気づいた。
夏は基本サンダルで出かけるし、近所だったのでついうっかり失念していたのだけれど、こういうときのために夏は常に靴下を鞄に忍ばせていると大人だよな、と思った。
他のどんな例えでもいい。自分だけが良ければいいというわけではなく、周りの人達のことを思って行動できるということが僕なりの「大人」の定義だと最近考えるようになった。
そんな風に、大人の男としての振る舞いにもっと磨きをかけたいという方は池波正太郎先生の「男の作法(https://amzn.to/3emcTV3)」を是非とも読んでほしいと思う。
例えばお寿司屋さんの通い方。
初めて入ったとき、いきなり板前さんの目の前のカウンターに座ったりしない。それは常連さんを考えてのことであり、慎ましく端っこのテーブル席に座り、何度か通い続けると今度はお店の方からカウンターの方に通してくれるようになる。
単価が高く赤字になりやすいトロなど、あくまでサービスとして出しているものを、お金を出しているのはこっちだからと言わんばかりにどんどん頼まない。
天麩羅は出したてが一番美味しい状態なのだからダラダラ喋っていないで親の仇に会ったとばかりにかぶりつくなどなど。
どれも自分だけ良ければいいなんて発想は微塵もなく、お店や、そこに通うお客さんのことまで考えて振る舞うのが「粋」だとある。
それと、以前何かの本で気障(キザ)と野暮の間が「粋」なんだという件を読んだとき、確かに相手を慮る態度を気取ってあからさまに出し過ぎてしまうのも無粋になってしまうのだと思った。あくまでさりげなくが肝という。
こんなことはもしかしたらカッコいい親戚の叔父さんや、会社の素敵な上司、運が良ければ父親から学ぶようなことなのかもしれない。
もしそんな巡り合わせが無かったとしても、確実にこの本は良き先輩になってくれると思う。
およそ40年前の1981年に初版が世に出てから、今読んでもほとんど内容が色褪せていないのもこれだけ長年ロングセラーであり続ける理由なのだろう、久し振りに読み返してもハッとさせられることばかりだった。