【珈琲と文学】ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』
本日の文学案内は
ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』
です。
あらすじ
解説
19世紀のフランスにて発表された、
フランス文学の金字塔的作品。
修道院で育った若く美しいエンマは、田舎の平凡な医者シャルル・ボヴァリーの元に嫁ぐ。
が、シャルルとの結婚生活はあまりにも刺激が少なく、少女時代から小説に読み耽り、ロマンスに憧れてきたエンマは退屈に倦んでいた。
やがてエンマは、自由で刺激的な恋を求め、不倫と借金の沼に堕落し、破滅へと突き進んでゆく…。
内容でいえば、
“結婚生活に退屈した若い妻が不倫の愛に走り、結局幸せにはなれないバッドエンド”
という、ごくありふれた不倫もの。
最近のドラマや漫画の方が巧みなストーリー展開が練られているでしょう。
しかし、この小さな町でのありふれた姦通事件を芸術に昇華させたのは、言うまでもなくフローベールの圧倒的な文章です。
この『ボヴァリー夫人』は「リアリズム」の名作として評価されています。
その所以が、何度も何度も推敲したという徹底的な文章にあるのです。
一文の構成や、段落構成、会話の応酬、人物の視点の動き、情景の描き。
そういったあらゆる要素に徹底的にリアリティを持たせ、物語に気迫と共感を生み出しています。
そこに注目して読むことで、このありふれた不倫ドラマが何故100年時を超えて人々の心をつかみ、そして後世に影響を与えているのか、その理由と意義を感じられるはず。
感想
むかし友人が貸してくれて初めて読んだのだけど、実は借りてから一年程放置していました。
フランスの近代文学という馴染みのないジャンル、しかも600頁以上もあるということで、読む気が起きなかったのです。
だけど一年も借りっぱなしはそろそろあかんなと思い、とりあえずページを開いてみることに。
すると、なんとすいすいと読めてしまう…!
これはめちゃくちゃ面白かった。
読んでおいてよかった!
解説でも書いたように、ありふれた不倫ものだし、19世紀のフランスの時代背景や文化、人物名にはとっつきにくさもあるので、はじめはなかなか読みづらいものがあります。それは事実。
だけど、読めば読むほど、
文章を噛めば噛むほど、すごさがわかる。
人物の動作、情景、叙情などあらゆる描写を突き詰めて描いた文章世界。その広がりに、のめり込む。
特にラストは怒涛の展開が繰り広げられるが、その描写力には舌を巻きました。
ちなみに訳者の芳川泰久氏はかなり原文に忠実な翻訳をこだわっていたようなので、日本語訳でも充分フローベールの世界観を味わるはずです。
「人間の業」という現代にも通じる普遍的なテーマを、この緻密な筆致で書き尽くしたのが、100年以上前の文学だということにはただただ感服。
また、時代背景について知ると、さらに面白さが増すでしょう。
本作について、Wikipediaに拠れば
との記述があります。
この背景や考察を鑑みるに、
“この作品は、当時の社会通念や風俗、常識にセンセーショナルな一撃を放ち、また表現の可能性の幅を大いに広げたもの”
と考えることができる。
まさに革新的な文学であったということです。
現代にあふれた物語がもつ表現の多様さや、それによってもたらされる感動にわたしたちが心を豊かにできるのは、フローベールをはじめ、偉大な先人たちが築き上げてきた歴史によるもの。
古典文学にふれることの価値とは、
そういうところにあるのではないでしょうか。
珈琲案内
◎コロンビア 深煎り エスプレッソで
『ボヴァリー夫人』の読書のお供におすすめしたいのは、コロンビアの深煎りです。
飲み方はエスプレッソで!
コロンビアのコーヒーは、優しくて口当たりのよい酸味と、まろやかなコクが特徴です。
苦み、酸味のバランスが良く、クセがあまりなく、
深煎りにも向いているコーヒー豆です。
深煎りにすることで、クセのない苦みを引き出し、豊かなコクが生まれます。
日本人の嗜好にも合っていて、大変人気の豆です。
フランスでは、エスプレッソ文化が人気で、
フランス文学の『ボヴァリー夫人』はぜひエスプレッソで飲んでいただきたいです!
エスプレッソに似合う豆、ということで、
コロンビアの深煎りを選びました😌