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【イベントレポ】ジャンル特化型でも盛り上がりは変わらない!「東京ゲームダンジョン外伝 supported by note」

2024年7月14日、5月に開催したばかりの東京ゲームダンジョンがほとんど間を開けずに開催されました。ただし、今回は「外伝」であり、タイトルにもある通りこの記事を載せている「note」による協賛で成立しているイベントです。

普段は浜松町の都立産業貿易センターで開催されている東京ゲームダンジョンですが、今回の会場は東京都四谷でnoteが運営するイベントスペース「note place」が利用され、出展タイトルもノベルゲームもしくは学生による制作タイトルのみと極めて限定的な開催となりました。

都立産業貿易センターは広いフロアが特徴的でしたが、note placeはキャパがそれほど大きくはなく、正直手狭です。それもあってか、入場は事前申し込みのみの当日券なし、前後半の入れ替え2部制と密集しすぎるのを防ぐ工夫がされていました。note側の指導もあったのかもしれませんが、過去5回のイベント開催で培われたノウハウも活きていそうです。

会場キャパのために出展タイトルが相対的に少ない状態でしたが、ノベル系・学生作品共々濃い作品に出会えましたので、いくつかご紹介します。


Joy-Conで2人プレイOK!具材が料理人に立ち向かうアクション『調理されてなるものか!』

リンゴっぽい赤い食材と青い食材を左右のスティックで操作して、料理人が振り下ろす包丁やボウルの圧から逃げるアクションゲームです。赤と青が合流するたびにゲージが溜まっていき、マックスになるとパワーアップして料理人を殴って倒すパートに突入する1度で2度美味しいゲームスタイルでございます。

1人プレイでも可能ですが、2人プレイでも可能にしてあるのが良い部分で、試遊ではJoy-Conの左右をそれぞれ利用した2人プレイができました。また、Joy-Conは包丁から逃げるパートだけではなく、料理人との直接対決パートでも活かされていて、Joy-Conを振る操作で殴れるようにしているのが良いスパイスです。今回お子さん連れの方も複数いらっしゃったのですが、親子でプレイするにはゲームとしてはこの操作形態はかなりフィットしています。

Bit Summit Gamejamで8名のチームによって制作されたそうで、7月19-21日のBit Summitでも出展されます。

落ち物パズルでトーナメントをつくる?独創的なアイディアが光る『Tournamentris』

東京ゲームダンジョン3に行った際に試遊していた「シカクリバーシ」というマスのないオセロゲームがあったのですが、あのゲームの共同制作者であるZeFさんによる新作です。

マスがなくても線で空間を定義し、碁のように一定の空間を奪い合うアイディアは当時凄まじくフレッシュに思いました。このゲームについては開発者のかくひとさんさんがnoteに詳しく書かれているので、そちらを御覧ください。

そして「Tournamentris」ですが、これまたアイディアが独特です。落ち物パズルは数あれど、ブロックを積み重ねていくのをトーナメント表に見立てるアイディアは聞いたことがありません。

ただ、聞いたことがないアイディアなだけにルールがなかなか頭に入ってこないのも事実。消す対象となるブロックは事前に積まれており、落ちてくるのはトーナメントの組み合わせの枝の部分と勝者を表す王冠マークとなります。同じ数値のブロック同士を枝でつなげる、もしくは下位との合計値が左右の組み合わせで同じ数値になった状態で王冠マークを乗せるとブロックが消える、といったルール(だったと思う。。。)ですが、これを理解したうえでスムーズに消せるようになるにはかなりの鍛錬が必要だと感じました。それだけに極めがいのあるゲームですね。

UnityRoomで公開されているので是非遊んでみてください。

パズルジャンキーによるパズルジャンキーのためのポータル風味な2Dアクションパズル『Stellagate』

先に紹介した2本はいずれも学生作品ですが、こちらのパズルゲームも学生による作品となります。

学生作品といえば、UnityRoomやItch.ioでの公開が多いのは事実ですが、正しい手順を踏めばSteamでの販売も当然可能です。『Stellagate』を制作しているゆきくらげさんは「東工大デジタル創作同好会traP」の部員らしく、試遊させてもらった本作はSteamに並ぶ同様のパズルゲームに劣らない完成度の高さがありました。

ゲームは面クリア型の2Dアクションパズルとなっています。持ち運び可能で高所に登ったりまっすぐ投げることで運んだりできるブロックや、起動すると空間移動ができるゲートを活用して目標地点に移動するのが目的となります。言ってしまえば3Dパズルの名作「Portal」の2D版なわけですが、単なるコピーには終わらないレベルデザインの妙があり、ステージ選択画面にすらパズル要素を入れてくるのはかなりのクセ者です。

近年では「Void Stranger」や「Animals Well」などパズル要素の強いインディ作品が話題になっていますが、本作はそのあたりの作品が好物なパズルジャンキーの皆様には喜んでもらえるのではないでしょうか。発売は2024年9月を目標にしているとのことです。

チェンジはありですか?孤独な人に寄り添うデリバリーサービス『よりそいデリバリー』

個人的に非常に音楽的なゲームとして評価したい自由にリズムを刻む音ゲーバトル「PHRASEFIGHT」を制作したサークル「超OK」による新作です。

2024年には疲れ切ったOLさんのちょっとした旅を描いたノベルゲーム「限界OL海へ行く」をリリースしたばかりですが、新作もまた孤独で疲れた社会人女性が主人公のノベルゲームとなります。やたらと疲れている人の解像度が高いテキストでも話題となった前作に引き続き、今作でも要所で挟まるテキストの切れ味が鋭い。疲れた孤独な人を救うのがオタク趣味に乗ってくれて、ゲームを一緒に遊んでくれる友人のような存在というのもそうだよなぁと思わされます。

試遊版ではほんの一部しか遊べず、「デリバリー」されてくる人は他にもいる様子です。場合によっては「チェンジで!」と言えたりもするのでしょうか?今後の展開が気になります。

雨の中、静かな夜にプレイしたい詩的なノベル『深くて暗い緑の眠りのなかへ』

ノベルゲームは文章と音と絵しかないと言ってしまえば、そのとおりですが、逆に言えばそれさえあれば成立する非常に自由なメディアでもあります。

IMAYUIさんが制作された本作は絵本のような手書きテイストの絵が数枚と詩のような言葉、雨の音と言葉を読む声でほとんど構成されたとても短い作品です。試遊で本編全部ができてしまうぐらいの短さではあるのですが、この短くも味わい深い体験は何度か味わいたくなる魅力があります。

フィジカル版も発売されていました

ちなみにIMAYUIさんは元はアリスソフトがプロデュースするブランドとして動いていたものの、後に独立して「IMYUIC」としてRPG「Terminus Historia|境界戦役」をリリースしている方です。個人での出展ではノベルゲームを制作されているようです。既にBoothで発売されているのに加えて、Steamでも近日発売予定。過去作がSteamで無料公開されているのでこちらも是非。

画作りへの拘りとノベルゲームへの深い愛が現れたスーパーリッチな作風『Melt Away』

「Melt Away」は西村ダイヤさんが主宰するサークル「Overcast」が開発しているノベルゲームです。かなり前から開発が進んでいるはずですが、今回試遊できたバージョンでは本作が目指すところの高さを感じられました。

キービジュアルとゲーム本編が剥離してしまうこともままあるインディゲームですが、本編でも抜かりなく常に濃密な画作りが実現されています。ノベルゲームを象徴するような立ち絵はほぼ見られず、作り込んだレイアウトの絵を連発する姿勢は商業作品でもなかなか見られません。色彩や演出、UIや操作性など細かな部分に配慮する姿勢からは制作者自身がノベルゲームの大ファンであることが伺えます。個人的にはマウスホイールで読み進められるようにしてある部分とか、音量調整もマスター調整ができるところとか(Unityで利用しているツールの機能ではあるようですが)が「わかっている」感があってとても良かったです。

ノベルゲームはインディ作品には沢山ありますが、プレイヤーへの配慮がされている作品は案外少なかったりするので、この点だけでも稀有な作品です。完成を心待ちにしたいとおもいます。

今回は時間に成約があり、試遊できていない作品も多かったのですが、それでも素晴らしい作品との出会いがありました。ノベルゲームはゲームの性質上、地味でイベントには不向きな印象があるのですが、それでも多くの来場者があり、盛り上がったイベントになっているのはそれだけプレイヤーも濃い人が多いと言えるでしょう。

また、今回の様にゾーニングされることで学生作品のレベルの高さも際立ったと感じます。「学生だから」という枕詞はもはや意味がないもので、むしろアイディア的には学生作品の方がフレッシュだと思います。今後も注目していきたいですね。

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