【由布院】新婚旅行は棚田で。
界 由布院 に3泊4日。
以上、私の新婚旅行の全行程である。
少し前までの私は「新婚旅行はやっぱり海外だよな〜」と、漠然と思っていたし、
友人夫婦がアフリカのサバンナで動物を見ながら朝食を楽しんでいる写真を見て、私もなんかすんごいことしたい!という欲を募らせていた。
そんな私がなぜ国内旅行に決めたかというと
理由はとてもシンプルで、夫は飛行機が苦手だからだ。乗ることはできるが、長時間は耐えられないらしい。
とはいえ私としては普通の旅行にはしたくなく、死ぬまで記憶に残るような光景や体験と出会いたかった。しばらく空き時間をリサーチに費やした結果、界 由布院に辿り着いた。
旅行中やはり印象的だったのは、敷地内に広がる棚田。これを見たくて、ここに決めたのだ。
人生で初めて棚田を生で見た。
目線が階段を降りていき、山のほうへと吸い込まれ、ぐっと空を見上げる。気持ちのいい景色だ。
旅行中、幸運なことに晴れも雨も経験し、いろんな表情を見ることができた。
太陽の光を受けてラメを撒いたようにキラキラしていた晴れの日。
草の香りが一層濃くなり、蛙があちこちで鳴いていた雨の日。
天気を問わず、昼夜を問わず。
近くで踊る風鈴を背に、長い間眺めていた。
私が特に気に入ったのは、16時くらいに温泉に浸かった後、火照った身体を風で冷ましながら、徐々に夕日に染まる棚田を見ることだ。
他の旅行者たちが喫茶店でひと休みしていそうな時間帯から温泉に浸かるのは、おこもりステイの特権だろう。もちろん貸切状態、ひとりじめ。
熱い湯で全身を解し、ふにゃふにゃになった足を夕方の涼しい空気に当てながら棚田を眺める。
じんわりと色が変わっていく空に、聞こえるのは風と水と鳥と風鈴のカルテット。時たま近くを歩く人の草履がリズムを作る。
なんて贅沢な時間だろう。
部屋に戻ると竹のような香りがふわっと迎えてくれた。照明の優しい光に甘えたくなり、寝転がる。
肺いっぱいに満たしてきたばかりの青々とした空気を静かに吐き出すと、いつの間にかうとうとしてきて、でも眠ってしまうのももったいなくて、
私はホテルに来る前に買っておいたお酒をちびちび飲みながら、本を読んで過ごした。
まどろみに溺れかけていて、何を読んだかあまり覚えていないけれど。
幸せはここにあるなあと感じたことだけはしっかりと覚えている。
夫も珍しくゲームを仕舞って、ぽけーっと棚田を眺めている横顔を見たら、愛おしくてたまらなくて。一緒に来てくれてありがとう、なんて伝えちゃったりした。
これを機に、おこもりステイにハマりそうだ。