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【外資系コンサル】UP or OUTの現実

現在ヒースロー空港です。これから15時間かけてインドに飛びます。仲の良い会社の後輩の結婚式に参列するためです。欧州の人はとてもフットワークが軽く、国を超えて結婚式に参列するので驚きます。ドイツやスペインの同僚と会えるのが楽しみ。

さて、今日は外資系コンサルについて調べる中で一度は聞くワード、UP or OUT について記事を書きたいと思います。ちょうど今週、評価査定のミーティングがあり、私も後輩社員の査定会議に参加していたため、ありのままの現実を書き留めたいと思います。



【結論】昇格事情は実働部隊と管理職で異なる


結論から申しますと、昇格に必要な要件はいわゆるアナリスト〜コンサルタントまでの実働部隊と、マネージャー〜パートナーまでの管理職で実は大きく異なってきます

実働部隊のうちは地頭の良さ、仕事の速さ、成果物の品質、調査・分析に必要なスキルなど、「コンサルティング企業でパフォーマンスを発揮できる人材かどうか」をプロジェクトを通じて率直に評価されます。

管理職になってくると上記は当然満たしているものとして、プロジェクトの売上、利益管理、そしてさらには自分を昇格に推してくれる上司がいるかなどの「社内政治」も絡みより複雑化していきます。

いずれにせよ共通するのは、同じ階級の同僚の比較してパフォーマンスが低ければ、容赦なく退職推奨を受ける(もしくは、転職活動せざるを得なくなるように周りを固められる)点です。※なお、国によってシビアさは異なります。

以下、詳しく解説したいと思います。


◆UP or OUTとは?


日本語で簡単に言い換えると、「昇進するか、退職する(もしくは解雇される)」という概念です。

コンサルティングとは、経験や知恵、スキルを持ち寄って、顧客の課題解決をすることでお金を稼ぐビジネスです。車やテレビなどの「モノ」を売っているわけではなく、「サービス」を売っているため、企業の人材の質が成果物の品質に直結します。

そのため、外資系コンサルには年功序列制度は存在しません。役職の構成や昇格にかかる年数はファームによって差がありますが、優秀であれば年齢関係なくどんどん昇格し、自分よりも年次が若い人に役職を追い越されることもあります。

そして残念ながら、「この人は今は評価が低いけれど、数年かけてじっくり育てよう!」という考え方は存在しません。同じ階級の同僚たちと比較して外れ値になってしまうと、容赦なく退職推奨されることになります。


1. アナリスト〜コンサルタントまでの昇格事情


ファームによって役職名は異なりますが、プロジェクトの実働部隊であるアナリストからコンサルタントの昇格事情についてまずは解説します。年齢層は新卒の20代から30代半ばまでの若手~中堅社員が多いです。

これらの階級は大体皆1年から2年の間で次のタイトルに昇格します。1年で昇格すれば優秀層、2年で昇格できれば平均的でキャリアは順調と言えるでしょう。

逆に、実働部隊で昇格に4-5年かかる人がいるか?と聞かれると、少なくとも私は見たことがありません。なぜなら、前述した通り彼らは肩叩きに合うからです。

パフォーマンスが低いプロジェクトが続くと、あっという間に管理職の間でその人をプロジェクトに配属したくないという声が高まります。プロジェクトに配属されない社員には仕事が回ってこなくなるため、いずれ「役職の期待に沿ったパフォーマンスを発揮できていないから、次の職を探してね」と肩叩きに合うか、コンサルに向いていないことを自覚して転職活動を始めることになります。


それでは、どういった点が評価対象となるのでしょうか?

これは実働部隊のうちは割と単純です。

地頭の良さ、仕事の速さ、成果物の品質、調査分析に必要なスキルなど、主に「コンサルティング企業でパフォーマンスを発揮できる人材かどうか」をプロジェクトを通じて率直に評価されます。

過去30名ほどの後輩指導をしてきて、さらに人事評価に携わってきた中で感じるのは、特にマネージャー以上の上長は以下の点を+αで見ているということです。

1. 上昇志向を持っており、能動的に動けるか
2. 長時間労働に耐えられるか
3. フィードバックを素直に聴き入れ、パフォーマンスに即座に反映できるか
4. プロジェクトの種類に寄らず、継続的なパフォーマンスを発揮できるか
5. クライアントの要望による急な方向転換や修正対応に真摯に対応できるか
6. チームメンバーとして他人と協働することができるか

実際に今週の査定会議でも、会社が記録として残す査定項目以上に、上記のトピックが議論されていました。詳しくはまた別途記事にして掘り下げようかなと思います。


2. マネージャー〜パートナーまでの昇格事情


続いて、マネージャーからパートナーまでの中間管理職以上について解説します。年齢層は非常に幅広く、30代から60代までばらばらです。肌感覚で恐縮ですが、40歳前後でパートナーに登り詰める人が多い印象です。一方で、30代前半でパートナーまでスピード昇進するような超優秀層もいます。

これらの階級になると、昇格にはもう少し時間がかかる傾向があります。コンサルタントまでの評価項目に加え、他の要因が強くなるからです。

1. プロジェクトの売上を立てることができるか
2. プロジェクトの利益率は良いか
3. 顧客の信頼を得て、継続的に新規プロジェクトにつなげることができるか
4. リーダーとしてチームメンバーから評価されている
5. 社内の他のイニシアチブ(求人、顧客向けのホワイトペーパー作成など)に貢献しているか

これらは表向きの評価でもちろん大切ではあるものの、私が見てきた実情では、ずばり「昇格を後押ししてくれる、社内での立ち位置が強い上司がいるか?」が非常に重要になってきます。


3. パートナーを目指すために必要な力とは?


コンサルティング企業は一般的に離職率が20%程度で一般企業と比べて高いと言われています(出典)。役職別の離職率の数字は見つからなかったものの、以下の3パターンが多いと思います。※あくまで個人的な感想で、出典はありません。

  1. そもそもコンサルの働き方に合わず、数ヶ月から2年程で辞める若手社員

  2. シニアコンサルタントやマネージャーまで順調に昇格し、プロジェクトマネジメントをある程度経験してから辞める中堅社員

  3. パートナーまで昇格し終えた後、独立や他社への引き抜き、あるいは、定年でやめるベテラン社員

この業界で5年以上働いている経験からですが、意外とシニアマネージャーからパートナー層は辞めないです。理由は何点か挙げられます。

1. ここまできたなら、パートナーを目指すか・・・と「辞めたい」と毎日念仏のように唱えていた思考が昇格志向に切り替わる点
2. 転職先を探しても、シニアマネージャー以上になると同じ階級で事業会社に転職すると給料ががくっと下がるケースが多いので、決断しにくい点

パートナーとより密に仕事をするようになっており、上に行けば行くほど仕事の自由度が広がることも実感しているので、給料が下がるくらいなら、もう少し上を目指そうか・・・となるわけです。

すると、シニアマネージャー以降の階級がみるみる詰まるという事象が起こります。一つ上の階級に昇格させると給料が200万~400万円程度一気に上がる上、ディレクターやパートナーだらけになってピラミッド階層が崩れると困るので、企業は昇格に慎重になります

ここで、パートナー同士の「推し活」が始まります。査定の際に、自分の「推し」について他のパートナーにプレゼンテーションを行い、アピールします。

A:彼は◯◯社から◯◯プロジェクトを受注し、◯億円売り上げた
B:彼女は◯件プロジェクトを回し、すべての利益率が目標を達成した

つまり人事評価の際に、自分を他の管理職にアピールしてくれる、社内での影響力の強いパートナーのサポートが必要になってきます。社内政治力を鍛えて、上司に応援してもらう体制を整えることが重要なのです。

実際、前職での上司は、マイクロマネジメントのしすぎでプロジェクトの利益率がどれも非常に悪かったうえに、酷いパワハラのため全てのチームメンバーから嫌われて評価に1や2をつけられていたにも関わらず、シニアパートナーの絶対的なサポートによりパートナーにとんとん拍子に昇格しました。利益率やチームメンバーの評価なんて所詮表向きなんだな・・・と思った出来事でした。

今の企業でも同様です。評価会議は中間管理職以上が集まって行うため、いかに何人の管理職から昇格を後押ししてもらえるのか。直属の上司だけではなく、他のパートナーにも価値を示すことができているのか。この点が何よりも大切になってきます。

ちなみに私はというと・・・ここまで色々と偉そうに書きましたが、正直に申し上げますと「社内政治力」がありません。一緒にプロジェクトを遂行した上司たちからは皆、肯定的な評価をいただいておりますが、一緒に働いたことがない管理職の人たちには大した印象を残せておらず、正直苦戦しています。目の前のプロジェクトを回すことに精一杯で、自己ブランディングをうまくできていないのが現状です。今後の自分の身の振り方を考えないとなぁと思っている次第です。


4. 国別のOUT事情


最後に、私が過去数年で目の当たりにした国別の「解雇」事情について書きたいと思います。

昨今、コンサル業界でもそれほどOUTが厳しくなくなってきているという記事を目にすることが増えました。「現状の階級にとどまる」という選択肢ができているようです。

ただ、私の実体験ではこれが当てはまるのは管理職階級で、実働部隊であるアナリストやアソシエイトで同じ階級に長く留まることを受け入れられる人はいないのではないかと思っています。周りはみんな1-2年で昇格していき、後輩もどんどん入ってくる中で、4-5年同じ役職を続けることは精神的に辛い環境だからです。

4a. 日本

私が東京の外資系コンサルで働いていた時、実際にOUTになった人は数人いました。ただ、彼らは直接肩たたきにあったというよりかは、何度か「パフォーマンスが期待値に達していない」と告げられ、本人もモチベーションが下がってきているところで、やんわりと転職活動を推奨されるという形がとられていました。2ヶ月ほど休職という名の転職活動期間の猶予を与えられ、そっと人知れず退職していくような環境でした。

しかし、海外はそれほど甘くはありません。

4b. ドイツ

ドイツで駐在をした時は、上記の日本と同じ企業だったにも関わらず、昼まで何事もなくクライアントとミーティングをしていた同僚が突然パートナー室に呼び出され、出てきたと思ったらパソコンも携帯も没収され、即退職手続きをとられる、という光景を目の当たりにしました。

ドラマとかでしか見たことのない光景が目の前で起き、正直とてもショックでした。

その後も、「あれ、今日彼来てないね?」「あぁ、昨日クビになったらしいよ」という会話を少なくとも2回はしました。半年間の中で、6-10人は突如解雇されていたと思います。

試用期間中の容赦ない解雇はもちろんのこと、正社員でも何度か「パフォーマンスが低い」と伝えられた上で、解雇されていたようです。同じ企業でも、働く国によってここまで差があるのかと愕然としました。

その際は、あくまで私は東京支社所属の駐在員だったので、解雇のリスクはなく内心ほっとしておりました。

4c. イギリスとアメリカ

現在働いているイギリスや、支社のあるアメリカでも同様です。入社して数か月目の時、同じ部署の5名が会社の事情で突如解雇になりました。

そのうち1名はアメリカの同僚で、私のプロジェクトに配属されていた後輩でした。一緒にクライアントとのミーティングに向けて資料を作ったり、打ち合わせをしたり、と前日まで密に仕事をしていたにも関わらず、次の日のクライアントミーティングに現れなかったため、不思議に思っていたところ、解雇されたとパートナーから告げられました

とてもショックでしたし、もっと私にできることはなかったのか、と後悔しただけでなく、明日は我が身ではないかと震えました。

日本ならば転職活動をすればいいですが、イギリスでは何よりもビザが障壁となる中で、数か月前に後先考えずに単身で飛び出してきたところを解雇になったら・・・と想像しただけで怖かったです。試用期間が終わるまではとにかく緊張の毎日でした。

今週の評価査定でも、イギリス本社の社員で5段階評価の「2」がついてしまった若手社員が数名おり、次回同じ評価を受けたら解雇になるとシニアパートナーが示唆しておりました。あと半年間で彼らが「3」をとることができるように、もし一緒のプロジェクトに配属された際にはサポートしていくつもりですが、既に2年以上働いている社員のパフォーマンスを劇的に伸ばすのは本人の努力がなければ難しいのが現実です。



以上、思ったよりも長くなりましたがセンシティブな内部事情を解説してみました。

noteを初めてちょうど1か月が経ちましたが、おかげさまで3日坊主を過ぎて6記事目を達成できて誇らしいです!(ハードルが低い・・・)フォロワーさんも30名を超えて嬉しいです。本当にありがとうございます!

それでは、また。

2025年2月1日



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