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【企画】私には価値に見合った対価を求める権利がある

今日は明日締め切りの日本経済新聞 X noteの企画に提出する記事を書きたいと思います。日頃は敬体で執筆していますが、今回は新聞に纏わる企画なので常体で、現在の勤め先の上司について書きたいと思います。

心に残る上司の言葉


私は2023年の春にイギリス・ロンドンへ移住した。転職活動を経て内定を得た、ロンドン本社を持ち、欧米に複数の支社を展開する外資系コンサル企業に勤めるためだ。ご縁があり、修士号・博士号を持つ社員が7~8割を占める医薬品産業専門家の集団に、唯一の日本人として採用された。

マネージャーとして勤め始めて約2年が経とうとしている。昇格・昇給・ボーナスに関わる年度末の査定評価の過程で、直属の上司から言われた言葉が特に印象に残ったため、書き留めておこうと思う。

年度末の査定はおよそ3段階に分けて行われる。

  1. 自己評価

  2. プロジェクト毎の上司・同僚・部下からの360度評価をもとにした、直属の上司による評価

  3. 部署の管理職による、他の同僚と比較した相対評価

まずは年初に立てた目標と現状を比較して、詳細な自己評価を行う。マネージャーの評価項目は多く、PM(プロジェクトマネージャー)として率いているプロジェクトの質や顧客からの評価、事業開発やオフィスカルチャーへの貢献度、直属の部下への指導など多岐に渡り、一つ一つ丁寧に記述する必要がある。

そして総括として、1年間を通しての評価を5段階評価(1が低く、5が高い)する。昇給やボーナスに影響する重要な数字だ。3が「役職の期待に沿った成果をあげている」という平均的な評価で半数の社員が該当する。4は「多くの場面で、役職の期待を超える成果をあげている」というより良い評価で、2割程度の社員にしか与えられない。

私は自身のパフォーマンスを振り返った際に、昨年は4に見合うだけの働きをしたと思ったものの記載することを躊躇した。「未達項目」が目についたからだ。年初に掲げた高めの目標の中で、達成に至らなかった項目がどうしても気にかかり、「3と4の間だと思う」という中途半端な書き方で直属の上司に自己評価シートを提出した。

「なぜ、4だと言い切れなかったの?」

上司との査定面談の際に、そう聞かれた。

「達成できていない項目もあるので、4をつける自信がありませんでした」

正直にそう告げると、上司は私にこう言った。

「あなたは会社に労働力を売っている。だから、未達ではなく成果に焦点をあて、あなたの価値に見合った対価を堂々と要求する権利がある」
"
You are selling your labor to the company. So, instead of focusing on what you haven't achieved, highlight your accomplishments. You have every right to confidently demand compensation that reflects your true value"

グローバルな環境で働いていると、欧米や中東など国籍を問わず、どの部下も査定評価では「これだけの成果を出した」とアピールし、最高評価の4や5を提出してくる。最終的に下方修正されることもあるが、「成果に見合う対価(=昇格・昇給・ボーナス)を求める」ことを決して恐れない。あまりにも自己評価と他者評価が乖離している部下の期待値修正を余儀なくされることも多々ある。

しかしそれだけの自己主張をしなければ、上昇志向の強い人たちが集まる環境では、同じ階級の同僚たちに埋もれてしまう。仲の良いマネージャーの同僚も、「次回昇格できないなら次のステップを考える、とボスにはっきり伝えたわ」と笑っていた。

上司の言う通り、私はわずかな未達項目ばかりに気を取られ、多くの成果を正しく評価できていなかった。自分を過大評価しすぎて後で修正されることを恐れ、「未達項目もあるし、4を主張するほどではないかもしれない」と、不必要に守りの姿勢に入っていたことに気付かされた。直感では役職以上の役割を果たしたと思いつつも、「他人に過大評価だと思われたくない」と、周囲の目を気にしすぎていたようだ。これは、育った環境や文化の違いからくる日本人特有の感性だと感じる。

その後、上司と話し合ったうえで評価を5段階中の4で提出し、管理職による全体会議でも同階級の同僚との相対評価の結果、異議はなかったとのことだ。そのため、年度末の昇給とボーナスに反映される見通しである。

これからは改めて、「成し遂げたこと」を自信を持ってアピールしていきたい「私はこれだけの成果を出した。だから適正に評価し、還元してください」という強気の姿勢で、自分の市場価値をさらに高めていこうと思う。




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