【読書感想文 A.ミンデル ユング心理学の新たな発展/シャーマンズボデイ】
【読書感想文 A.ミンデル ユング心理学の新たな発展/シャーマンズボデイ】
・A.ミンデル ユング心理学の新たな発展
吉福伸逸 編集・監訳
山王出版
・シャーマンズボディ
アーノルド・ミンデル 著
青木聡 訳 藤見幸雄 監訳解説
アーノルド・ミンデルさんが亡くなられたと最近知りました。ミンデルは平山が多大な影響を受けた人で、平山がいつも身体が、身体が!身体が♫…と喚いているのもミンデルの影響が大きいです。また平山が心身相関的な身体技法に取り組むきっかけになったのもミンデルの影響が大きいです。
ミンデルの創始した「プロセス指向心理学」ですが、これが難解です。ミンデルは様々な書籍を出していてそこには具体的なワークや技法も記載されているけれども、それを本を読んだだけで実践するのは難しい。ミンデルの書籍の中でもあまり有名ではない本かもしれませんが、「A.ミンデル ユング心理学の新たな発展 」という本があります。この本の中でミンデル自身が
「わたしがプロセス指向心理学をユングの娘と呼ぶのは、彼女自身現在自分自身の名前をもち、成長しつつあるが、彼女は本来ユング家の出であり、ユングの血、精神、歴史を引き継いでいるからだ。(p005)」
と言及するとおり、プロセス指向心理学はユングの心理学と連続性があります。その事を踏まえていないと、ミンデルのワークは難しいように思えます。
ミンデルのワークは例えば身体症状を「病」としてみなさず、身体がみる夢だとみなします。その身体が見る夢の「プロセス」をそのまま展開するとその病の真の「目的」が明らかになり、そのプロセスに従うことでその病は消失するという過程になっています。また人間関係のトラブルもこれを「問題」とはみなさず、世界が見る夢だとみなし、身体上にあらわれるそのプロセスを拡大展開することでそのトラブルの「目的」が明らかになり、そのトラブルは消失するという過程になっています。
いきなりこれができるのかというとそれはなかなか難しくて、身体や世界の「プロセス」に没入するにはその前段階として例えばユング派の技法である「アクティブイマジネーション」に精通している必要があるように思えます。そこをすっ飛ばしていきなりプロセスワークをするのはなかなか難しい。
また「プロセス=夢」を展開するにしてもそれは目的論的なアプローチの上でやっているという事が念頭にないとただプロセスに呑み込まれてしまうだけになったりもします。プロセスや夢に対して己を無にするということが大切ではあるのですが、無にするにしても方向性はある、ということです。またプロセスワークに取り組むにはある種の覚悟や勇気、時には冷酷さも必要になります。というのも「プロセス=夢」に従うにはその時の自身のアイデンティティを捨てなければならないからです。そして「プロセス=夢」に従うことは危険も多いです。「シャーマンズボディ」という本は限りなき名著ですが、「プロセス=夢」に関わる際の危険性やこころの構えかたがふんだんに記載されています。ミンデルの誠実さは、読者を夢やプロセスに酔わせることではなく、むしろ自覚を即し、夢に向かって目覚めさせるところにあります。夢とい言いながら目覚めや自覚を強調することはなにか矛盾しているように見えますが、夢は目覚めることを望んでいるのです。
ミンデルさん、ありがとう。どうかよい目覚めを。
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