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小さな一花、大きな一果

物陰から猫は見続けている
風に靡く髭はいつも見えないものを見ている
猫は人のせかいの中にいるのではない
人こそがかりそめの借り物の中で
生かされている

わからないことばかりだけれど
わからないことはわからないままでもいいし
わからないことをわかろうとするのが
慈しみと思いたい
誰かのの自問自答なんて聞きたくない
大体おんなじことを
大体おんなじに少しちがうように
考えているだけのことさ

一花散れば他の花も散り
同じ一果がそこかしこで実る
台風一過のそのあとで
猫に追われた鳥が種を運ぶ
空仰ぐと昨日とは違う陽光

物陰から猫は見続けている
風に動く雲が空の色を変えてゆくのを見ている
猫は人が眠る横にいるけれど
誰よりも早く朝を待って、そして
時々待ちきれずに細く鳴いてみせる

わからないことばかりだけど
わからないのにわかったつもりでいる
必要なんてない
お前の話は聞き飽きたよ
賢いふりをして説明してみせても
誰が賢いか愚かかなんてこと
大体誰も気になんかしていないのだから

一花散れば他の花も散り
投げかけた問いはいつか
答えあわせのように一果が実る
台風一過のそのあとで
運ばれた種を眠い目こすり猫が見届ける
空仰ぐと昨日とは違う陽光


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りよう
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