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そばにいる

どこまでもひかりが届く薄く色のついた湖に
手足を拡げて沈んでゆきます

魚になったわけでもないのに息苦しくもないし
沈んでゆくことに少しも怖さがありません

むしろ静かで、とても安心して
私は少しだけ微笑んで口角を上げています

そう、それを別の人にでもなったみたいに
私は私を観ているのです

淡く、淡い水彩絵の具が紙の上に着いて
はじめて口づけをした時のように
色が私から離れて放射していきます

水泡のような儚さから少し逃れる夢
そう、夢なのだと思います

硬く、硬く口を閉ざして
少しも漏れ出てしまわぬように

硬く、硬く瞼を閉ざして
少しも内に入れてしまわぬように

だなんてことをしなくとも良い
良き宵のための夢なのだと思います

現実逃避などではないことですけれども
たとえばそれが逃避であっても私は
責められるようなことではないと思います

前だけ進んでいたならばきっと
攻めることでしか保てない何かや
私自身を責める私自身に
息ができなくなってしまうと思うのです

陸の上にいて息ができなくなるのは
何だかとても、とても悲しいこと
のように思えますものね

まだ見たことのない景色がたくさんあります
まだ見たことのない私もあるのでしょうか

何者であるかを知ろうとしたり
何者かになりたくなったり
何者にもなりたくなくなったり

揺らぎは揺れて揺さぶられて
どこかに向かっていくようで実は

私は私に還っていくだけなのかもしれないですね


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りよう
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