やる気スイッチのいれ方
人のやる気を引き出すにはどうすればいいのだろうか。ご褒美をちらつかせて奮起を促すべきか、それともその人のペースを尊重して、やる気が出るのを待つべきか。(ただし、やる気が永遠に出ない可能性もあるけれど。)
この問いは子育てだけでなく、仕事のチームメイトや部下への接し方、さらには自分自身へのアプローチにおいても永遠に議論される答えのない命題のひとつだ。
例えば、仕事でやる気が出ないとき、「あと少しで15時のおやつだ」と思って頑張るかどうか。または、部下に対して「次の昇進を目指して頑張ろう」と声をかけるべきか。あるいは、試験前に「合格したら自分にあのプレゼントを買う」とご褒美を設定するか。日常のあらゆる場面で、このテーマが顔を出してくる。
そんな中、今回あらためて考え直すきっかけになったのは、子どものスイミングだった。
2歳からベビースイミングを始めた娘も4歳となり、いまはビート板を持たずに10メートルほど蹴伸びで進む練習に取り組んでいる。同じ幼稚園の子たちも何人か同じスイミングスクールに通っているのだが、どんどん上のクラスに進級していく子もいる。あるお母さんに「○○ちゃん、すごいね」と言うと、「進級したら○○の好きなものを買ってあげるよ、って約束してるの」と教えてくれた。
一方、我が子はというと、体は成長してビート板が小さく見えるほどになっているのに、進級する気配はまったくない。もちろん、人にはそれぞれのペースがあり、周りと比べる必要はないし、その子の成長を尊重したいという気持ちもある。だけど、つい「なぜあと少しだけ頑張ろうと思えないのだろう」と悶々としてしまう。ご褒美を用意してみようか――そんな考えが頭をよぎる。
そういえば私自身も子どもの頃、同じようにスイミングスクールに通っていて、次のクラスに進級したら「セーラームーンのおもちゃを買ってあげる」と親にニンジンをぶら下げられてやる気を出していたのを思い出す。
試しに「子育て ご褒美」で検索してみると、「ご褒美をちらつかせると、やる気が自発的に出せない子になってしまう」などの否定的な意見も出てきた。でも自分の場合を振り返ると、「あと3日頑張れば週末が来る」といった具合に、小さな目標を設定して自分を奮い立たせているし、それが悪いことだとは思えない。そう考えると、「ご褒美を使うと良くない」と決めつけて悶々とするのも、なんだか滑稽に思えてくる。
とはいえ、まだ「ニンジンをぶら下げてやる気を出させるのはどうなのか」と葛藤する自分もいる。だからこそ、もう少し肩の力を抜いて、娘の成長を温かく見守ろうと思う。