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じゃない大阪の食文化
去年、地域ものがたるアンバサダーの活動でお世話になった、福井市のお寿司屋さんでのお話が思わぬ展開に。先代の修行先だった大阪のお店について調べるうちに、興味深い事実が判明したのです・・・
大阪は「じゃない」ほう?
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江戸と上方(大阪)のお寿司の違い
大阪を代表する食の1つに、「大阪寿司」があります。寿司といえば今は「にぎり寿司」が一般的ですね?でも、これは江戸時代に屋台から始まった「江戸前寿司」がルーツで、労働者向けの食べ物(食事というよりも空腹を満たすおやつみたいなもの)だったらしく。
今風に例えるなら、ファストフードみたいなものでしょうか。
一方、大阪のお寿司は平安時代の「発酵寿司」が起源といわれています。今も食べられている「熟れ寿司」はその名残りで、要するに押し寿司のスタイルです。元々は、鯖や鯵、秋刀魚などの大衆魚を使っていましたが、1887(明治20)年頃に老舗寿司店の吉野寿司が、鯛や海老、穴子といった高級素材を使った「箱寿司」を生み出しました。
のちに、巻き寿司やバッテラ寿司、棒寿司なども広まり、これらをまとめて「大阪寿司」と呼ぶそうです。大阪寿司は江戸前寿司のように屋台で食べるのではなく、芝居見物の幕間や行楽の弁当、あるいは手土産として用いられていました。
大阪寿司の特徴
大阪寿司は、押し寿司で空気が入りにくいだけでなく、酢で締めたり火を入れてあるので腐りにくいのが特徴です。さらに、砂糖が多めなので保水性にも優れています。
これまで、さまざまなスタイルに発展し、受け継がれてきました。ところが、仕込みに時間と技術が必要なために扱うお店は減少、まちなかでも回転寿司などのにぎり寿司店が圧倒的に多くなっています。
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かくいう私も、大阪寿司を正式に食べた記憶がほとんどなく、ケータリングの立食パーティーで食べたかも・・・程度でした。
先月、北海道の方が来阪するポットラック(持ち寄り)パーティーに参加したとき、「大阪らしい食べ物を持ち寄る」というお題についてあれこれ考えた末、大阪寿司を持参しました。
これを思いついたのは、地域ものがたるアンバサダーの活動で、去年福井市の「松寿司総本店」さんを訪れたのがきっかけ。お父様である先代が大阪の「文の里松寿し」さんから暖簾分けされていたのですが、詳しく調べると修行先の松寿しではナンと、大阪寿司を扱っていたんです!😲
店内で大阪寿司を食べている動画をユーチューブで観て、「機会があったら行きたいッ!」と心待ちにしていたら、偶然にもチャンスがやって来ました。👍
暖簾分け第三号の文の里店
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下町情緒で“ちょいカオス?”な街
Osaka Metro谷町線・文の里駅から徒歩2分ほど、超駅近な場所にある文の里松寿司さん。駅スグなのに、あまりに途中の風景が個性的だったので、思わずカメラで撮りまくり。そちらをチョットご紹介しましょう。
まず、駅出口すぐにある案内方向板。たしかに、ここはすごく立地が良いから、どこへ行くにも便利なんでしょうけど・・・微妙な角度でこれだけたくさんの札がついたポールを、いまだかつて見たことがない!👀💦
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180度ふり返って、阪神高速・松原線の高架下正面には、右「文の里」、左「明浄」の親切な電光看板。いや、それだけじゃまだ足りない!?手前の歩道柵にはさらに、両商店街や幼稚園・高校の案内矢印が。飾り気のないおもてなし感(?)が十分伝わってきます。この時点で、もうおなかいっぱい。😵💫
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左に曲がって高架をくぐろうとしたところに、文の里明浄通商店街の文字が。ハイ、わかってますよ、商店街は高架の先にあるんでしょ?看板の大きさから、きっと立派な商店街があるんだろう・・・期待は高まります!
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いざ、商店街のアーケードに入ってみると・・・
あれっ、!?
すぐ向こうに端が見えてる?
写真奥の右手が松寿司さんの場所です。グーグルマップで距離を測るとわずか50mほど。しかも、かなりのシャッター通り。
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往時を彷彿とさせる店内
つい周辺に注目してしまい・・・松寿司さんに戻ります。関西の情報誌『ミーツ・リージョナル(2021年8月号)』によると、松寿司は1922(大正11)年に大阪市の天下茶屋(現・西成区)で創業。押し寿司を中心に提供していた本店から3軒が暖簾分けし、その1つが文の里店。現在の店主は同店の2代目だそう。
最初の3軒からそれぞれに暖簾分けが進み、一番多かった頃には20数軒あったとか。お寿司屋が、昭和を代表する外食の業態だったことが伺えます。文の里店はご夫婦お二人で営んでおられ、奥様がお店の最盛期の頃のお話を聞かせてくれました。
当時は従業員が10人いて、5人は店内で調理を、残りの5人は出前を担当するほど出前注文が殺到したそうです。一番の繁忙期には、1日の出前がたしか200件くらいあったと、おっしゃっていたように記憶しています。
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『従業員の半数が出前に行くって、ホントかな!?』
と、一瞬信じられなかったのですが、カウンター背面の食器棚に収納されている寿司桶を見て、そのエピソードが決して大げさではないと腑に落ちました。数えきれないほどの寿司桶がビッシリ!その頃はひっきりなしに、寿司桶が出て行ってたんだろなぁと、往時のにぎわいが目に浮かびました。
見栄えがすべて「じゃない」
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時は止まってる? 止まってない?
写真は自宅用に買った大阪寿司です。松葉と松ぼっくりをあしらったデザインの包装紙が、昭和テイストを貫いています。
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輪ゴムを外して包装紙を開くと、プラスチックの食品容器には綺麗に並べられた押し寿司!!添付の割り箸の箸袋には「松寿しチェーン」と書かれた15軒の店舗名も。ミーツによると、1997年頃のものらしい。現在残っているのは、わずかに6軒。時の移り変わりを示しています。
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プラスチックのふたを外すと、焼き穴子・海老・鯛の3種が顔を出しました。真ん中のパセリを見てニヤッとするのは、たぶん昭和世代の方でしょう。😁昔は洋食メニューの端に、必ず添えられていた究極のバイプレーヤーでしたが、いつの間にか見なくなりました。😢
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こちらのお店の押し寿司は、持ち帰った頃にちょうどいい食感になるよう、少し柔らかめの押し具合です。強すぎると硬くて食感が良くないらしいとか。
守るべき技術と、時代のニーズに即した工夫がインターネットを介して多くの人を魅了し、全国からお客がやってきます。
職人の魂が込められた味
お味は、素晴らしいの一言。普段穴子をあまり食べないのですが、松寿司さんの穴子を食べた途端、フワッと柔らかくてビックリ!
『えっ、これって穴子なん?』
そんな印象です。堺市にある名店の穴子を使い、小骨を毛抜きで丁寧に抜き取っています。また、酢飯の間には、しいたけを刻んだものが入ってます。
鯛の寿司も、上に乗っている白板昆布が絶妙の味で、鯛・酢飯との三位一体の美味に家族の顔も思わずほころびます。
時代とともに歩んできた大阪の押し寿司は、掛け値なしに職人さんの矜持の味がしました。
写真でもわかるように、大阪寿司は今主流のにぎり寿司と比べて、決してビジュアルで映えるとは言えません。ただ、昨今の「SNS映え」のように、食べ物に華美な装飾を施し、極端な見た目で集客をねらおうとする風潮に、どうしても私は違和感を覚えます。
たこ焼きやお好み焼きといった「粉もん」は、大阪を代表する食べ物としてみなさんもご存知でしょう。でも、大阪寿司のようにめっちゃ流行ってはいないけれど、まだ知られていない旨いものが、どこかにあるような気がします。
とびきり高級じゃなくても、美味しいものを食べれば笑顔になれますし、ココロも満たされます。そんな食文化との出会いが大阪はもとより、各地に広がればいいなぁと思います。