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『 その… 俺にできることはある? 』


「 じゃあ ——— 私を襲った男のこと、殺せる? 」



「 冗談だよ 」



それから私たちは大きな公園のなかを歩きながら話をした。私はラテを、彼はチャイティーラテを片手に。

( 前編はこちらから : https://note.com/anatanoibasho/n/n643957f7830f


「 “加害者が全部悪い” って、何でみんな言い切れへんのやろうね 」

「 あいつ、私の頭をこうやって、ぐって掴んでさ、無理やりキスした 」
「 私が動けなかったのは男に見惚れてたわけでも、キスを待ってたわけでもない。10歳の性的虐待を、18歳のセクハラを思い出して、動けんかった 」

「 怖かった 」

被害に遭った直後以上に、涙は溢れた。

彼は静かに、私の手を握っていた。

改めて被害を口に出すことは当時の苦しみを呼び起こすことになるけれど、心はこの瞬間を求めていたのかもしれない、と思った。
彼に、聞いて欲しかった。彼に、受け止めて欲しかった。私はただそれだけを望んでいた。

私がもう人を好きになれないと言った時、彼は言った。
『 俺がなずなをそういう状態にさせたのなら、それを癒せるのも俺だけかもしれない 』と。

私が再び誰かを、彼のことを、好きになれるかはわからない。
それでも三度目の性被害で負った傷は、彼に告白をすることで確かに少しの癒しを得た。


「 ねぇねぇ見て 」

数日前に届いた、とある出版社さんからのお手紙を彼に見せた。
それは出版の提案だった、“大きな条件付き” の。

『 え、スゴいやん…! 』
『 ここ嬉しいな、“筆力” と “他の作品には無い迫力がある” って 』

「 ね、嬉しい 」

私はすました顔をした。悟られたくなかったから。
私に届いた出版の提案を、私以上に、まるで子どものように喜ぶ彼の表情があまりにも美しかったから。

私の成功を妬む人たちと違って、彼は私が夢を叶えて行くことを素直に応援してくれるんだろうな、と思った。


帰り道は突然の雨で、一本の傘に身を寄せ合って歩いた。

「 それはそうと、昨夜、何で私が電話したか気にならへんの? 」
『 あー、確かに。気になる 』
「 聞きたい? 」
『 えっ、と、それは俺がショックを受けそうなこと? 』
「 んー、いや、寧ろ喜ぶんじゃない? 」
『 じゃあ聞きたい! 』
「 やだ、言わない」


「 うそうそ、言うよ 」


彼と別れてから思った。

私、彼とのセックスが大好きだった。
隙が無くて、執拗で、一生懸命で、情熱的なそれが。

ホルモンバランスの影響があったのも確かだ。
とにかくセックスがしたくて、だけど性被害に遭った後でよく知らない相手を誘うなんて論外だし、呼んだら来てくれそうな男友達とするのも気が進まなかった。

今、私が触れたいと、触れて欲しいと思うのは、世界でたった一人だけ。


「 正直 “ヤリてぇ” って思って電話かけた 」
『 なるほど、ね。それは嬉しいよ 』

『 あの電話が無ければ、今日こうして話せんかったしね 』


「 それじゃあ、またね 」

『 うん、また 』

彼は私を家まで送った。

私たちの関係に、名前はまだない。

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