烏の思い出
あれは私が小学校に通っていた頃のことです。
その人のことは「カラスおばさん」って呼んでいました。住んでいたアパートの大家さんです。
母親は関わりを持っていたのでしょうが、私は喋ったことはなく、そもそも滅多に姿を見かけませんでした。しかし、黒くてぐるりと鍔の付いた婦人用帽子をかぶり、真夏でも黒の長袖とロングスカート、黒のショートブーツ、そして黒縁のメガネとマスクを付けた……昔の話ですから今のような黒いマスクはなく白色です。マスクだけが白かった。そんな彼女には、同じクラスの児童たちも興味を持っていました。
そんなカラスおばさんの家は、小学校から北へ1キロほど離れたところにありました。
私が今住んでいる部屋の近所に美容整形クリニックの院長先生の、安藤忠雄建築みたいな家があるのですが、敷地面積だけで言うとそれと同じくらい広かったでしょうか。つまり、大金持ちのお屋敷、とまではいきませんが、200坪くらいの大したものだったでしょう。庭に木が何本も生えていて、門からは2階建ての家が木々に隠れながら見えました。院長先生の自宅デザインとは比べるべくもない、普通の大きさの、そして古い家です。そして、おばさんは、その家の中でカラスを「飼って」いるのだと、噂があったのです。
さて、私を入れた男子4人組が、ある秋の日の夕方に、誰が言い出しっペなのか今となってはどうしても思い出せないのですが、退屈と小さな好奇心から、おばさんの家へ忍び込んで確かめて見よう、ということになりました。だってカラスを飼っている人なんて他に見たことなかったんです。
門のライオン錠は、手を隙間から入れてアームを回転させるだけで開きます。細く開いた縦格子の門扉から4人が順々にするりと入り込み、木に隠れながら家へと近づきました。でも……どの窓も雨戸がびっちりと閉まっています。
そろりそろりと4人1列でゆっくりと外周を回りましたが、建物の4面すべて、窓はひとつ残らず閉ざされていました。
しょうがないですし私たちはそのまま静かに、注意深く木に隠れながらジグザグと……元の門まで戻り、扉の隙間から外の道へと出ようとしました。そのとき、気がついたのです。
黒田くんが、いない。
私たち3人は顔を見合わせました。そして、振り返った2階に、人影がこちらを見下ろしているのに気が付きました。
刹那、戸が開かれるやいなや、カラスおばさんが現れたかと思うと、私達に大声で怒鳴りました。
「次回、同人『烏の夜食』の宣伝スペースは10月5日の土曜日だよ 11月もやるよ
!!!!!!」
烏の夜食は皆さんをけして手放しません。皆さんが、烏の夜食です。
それだけは忘れないでいて。
我々は、ここで、いつまでも、皆さんを待っていますよ。
↓↓ふぉろーしてね♡
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