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クラシック音楽写真家 木之下晃【音の静寂を知る】

私が大尊敬している、写真家 木之下晃さん。
待ちに待った彼の作品展が、神奈川県大和市のシリウスで開催されていました。
見るたびに新しい学びがある、晃さんの写真。

石を持ってポーズを取る音楽家達の写真
貴重な私物の展示も

そんな晃さんの写真は「音楽が聴こえる」ことで有名です。もちろん、実際には写真から音なんて鳴らないのだけど。名だたる音楽家達にそう言わしめるほど、晃さんはファインダー越しに音を捉えるのが上手い。
作品鑑賞する私達をまるで演奏会に来たような気持ちにさせてくれる晃さんの作品。
今までは当然ホールに鳴り響く音、つまり「音の動」の部分を撮っているのだと思っていました。音楽が聴こえると評価する音楽家達も、きっと写真から揺れたり跳ねたりする音の姿を感じているのだろうと。
しかし、ずらりと並ぶ作品を目の前に今回感じたのは、晃さんの作品が非常に静かだと言うこと。
作品に写るのは紛れもなく、演奏中の躍動感ある音楽家達の姿なんだけど、まるで沈黙しているほどに静か。
その瞬間ふと
「ようやく気付いたかい?」
と微笑む晃さんの声が空から降ってきた気がしました。

晃さんのアトリエ一部再現
まるでご本人がいるかのよう。

そう。
晃さんは音の表面的な動きだけでなく、もっともっと深い部分、所謂「音の静寂」を感じながら撮っていたと気付いたのです。
恐らく晃さんの芸術的感覚でシャッターを押しているのだろうけど、ご本人の肌感で、静寂がいかに音楽を美しく魅せるかと言うことやそのタイミングを知っていた。
ルプーもカツァリスもアファナシエフも…
挙げればキリがないほど、ベテランピアニスト達は静寂を大切にしています。シフが自著の本も、タイトルは「静寂から音楽が生まれる」
分かるようで曖昧だった巨匠達のその言葉の意味を、ようやく理解したのでした。そして、そんな静寂は集中力とも密接に関係しているんだなと。
(語れば長くなりそうなので本日は割愛します)

写真と絵画。
言葉にすると似ているようで、でも全く違う私達の作品ですが、クラシック音楽と言う表現方法が2人を繋いでくれている気がします。
最近軽いスランプに陥っていたけど、晃さんの作品を見てまたヤル気が湧いてきました。
会場で晃さんの作品集を思う存分見られるのもありがたい…彼の作品集はプレミアがついていて、とてもとても手を出せる値段ではありません。なので、こういった機会にたくさん目に焼き付けて絵画製作の参考にしています。

作品集を手に、今回のパンフレットにもなったカラヤンの写真は傑作だと改めてしみじみ思った。
彼の指揮者としての技術や音楽性には賛否両論あり、写真もポーズから立ち位置まで、ご本人の指示通りでないと撮影出来なかったようですが…
私は今回の作品展を通して、偉大な音楽家(いや、芸術家かも)であることを実感しました。

だって、静寂を生むような音の真髄を捉えられる音楽家でないと、晃さんがシャッターを押せなかったと思うから。

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アンナ ブラック
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