クリスチャン・ツィメルマン ピアノリサイタル【凍てつく美音に魅せられて】
少し早いですが、今年のコンサート納めに行ってきました。年内最後の公演に選んだのは、クリスチャン・ツィメルマンのピアノリサイタルです。
会場は、所沢市民文化センターミューズ アークホール。
実はこのホール、私にとっていわくつき。
初めて訪れた公演が藤田真央さんとロッテルダムフィルのコンチェルトだったのですが、オーケストラがフォルテを出すたびに出入口の扉が震えてガタガタ言うので全然集中できないし、第二バイオリンの方が演奏中に弓を落とすと言う…時差ボケでお疲れだったのかな?藤田さんのピアノも何だかカタカタ…あまり響きがよくありませんでした。その時はどうしても音に納得できず、たった3枚しかない別公演の当日チケットを何時間も前から並んで聴きに行きましたよ…あぁ、懐かしい。
その時の記事はこちらです♪♪
ピアノの鳴りに関しては、後にご自身のエッセイでピアノ自体に少し問題があったと触れられていましたが、以降このホールには足を踏み入れていなかったのです。ホールが嫌と言う訳でなく、単純に自分の予定と行きたいコンサートの日程が合わずで。今回は、もうこのホールに汚名返上してもらうつもりでチケットを取りました。
頼むぞ、所沢ミューズ アークホール!
お席は1階席後方。前回1階席の最前列で右側の扉のガタつきが気になったので、今回はステージから離れた場所を選びました。
いよいよ開演の時間。
ご本人が登場した途端、もう思わずうっとり。
ツィメルマンって本当に格好良いんです。顔も雰囲気も全てが格好良くて、イケオジの代表みたいな人。すっかり見惚れて集中力が途切れてしまいました。気を取り直して一音目に集中…ご本人が着席しピアノに触れてすぐ、ショパンの夜想曲が始まりました。
が、何と言うことでしょう(←サザエさんの声)
音が遠くて遠くて、全然響いてこない。
「何故?どうして?」と脳内パニックになり、周りをキョロキョロしていると、その原因らしき物を発見。
この上に2階席の方々が座っている模様。
私、その真下の席を取っていたっぽいのですが、何だか別室で聴いているかのような、こもった音がするんですよ。このエリア「1階席」の名目で売り出していいんでしょうか。設計した方、あまり音楽を聴かれる方じゃなかったのかな…
ツィメルマンの音って、凍てつくように美しいと思っています。ご自身の解釈を掌で完璧にコントロールし、作品に圧倒的な緊張感を生みます。
絵画表現にも共通するのですが、作品に緊張感を持たせるのって実はとても難しい。
構図とマチエールと色、全てが完璧にキマっていないと緊張感って出ません。それらの配置、バランス、どこか一箇所でも違ってしまうと、一瞬で緊張感って崩れます。そして、その緊張感とやらは私が1番苦手としているもの。
先生に作品を見てもらうと、高確率で「緊張感がない」「色は綺麗なのに惜しい」と言われます。
そう。緊張感がないと、いまいちキマらない、何だか惜しい作品になってしまうんですよね。シマりがないと言うか。
その点、ツィメルマンの音は全てが徹底的に統制されているので、曲全体を作品として見た時にハッとするほど美しい。
張り詰めた緊張感の中に氷のような冷たさがあって、演奏技術も雪の結晶のように精巧緻密。だけど時々、粉雪のように柔らかくてふんわりとした音を奏でる時があって、それがキュンとするほど切なく温かいのです。見た目のプリンス感と言い、前からアナ雪の世界にいそうな方だなと思っていました。
そんなツィメルマンの音があまり堪能できず残念。録音では分からない、実際の演奏スタイルや間の取り方など、生演奏でしか味わえないものも確かにありました。粉雪のような音色が美しいのも分かったし、音に緊張感があるのも分かった。だけど、どうしても絵が浮かばない…音を感じると言う作業ができませんでした。
1階席の後ろがあんな造りになっていたなんて…迂闊でした。このホール、もう1階席のど真ん中か正面2階席の最前列二択しかなさそうですよね。
私、このホールに営業かけられているのかしら。
次こそは必ず理想の響きで聴きたい…
2024年は待ってろよー!
所沢ミューズ アークホール!!