渋谷で始まり渋谷で終わる1日。
朝、目覚めたとき「あれ、ここはどこ?わたしは誰だっけ?」と分からないときがある。
「今週のしいたけ占い」によると、これは天秤座の特徴らしい。
毎日自分をゼロからアップデートするため、昨日の自分と今日の自分はガラリと違う。
そんな日々がずっと続いている。大変容期の今日この頃。
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今日、目覚めたときは渋谷にいた。
月曜の夜は同期3人で夜中3時まで哲学書を読みながら7時間ほど電話をし、火曜の夜は友達の家で女2人ワインを2本空け、昨日は中野から高円寺を4軒まわるハシゴ酒をし、いつの間にか渋谷castに辿り着いていた。
お風呂も入らず、メイクも落とさず、眠りにつく日がずっと続いている。
堕落していると言えばそうかもしれない。
深夜テンションの対話がつまみになる夜に負けず劣らず、日中の予定もなかなか色鮮やかだから、生活リズムがぐちゃぐちゃ。感情もぐちゃぐちゃ。
毎日慌ただしくて、刻みつけたいような一瞬一瞬が膨大なスピードで襲ってくる。
そしてただひたすら飛び乗っている、波乗り期。
アドレナリンと自分の感性を信じて瞬発力だけで生きている。
タスクや予定だけを見たらモグラたたき状態の日々なのに
疲弊もせず、ちゃんと毎日心が満たされている。幸せいっぱい。
意思をもって自ら飛び込んでいく忙しさは、自分を拡張させてくれることを知った。
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今日はcastのお部屋で日の光をいっぱい浴びて
一日がスタートした。
きらきらの朝日のもと、動き出した渋谷の街は
休日に見せる顔とはまるで違う。
スーツを着たサラリーマン、高いハイヒールをカツカツ鳴らして颯爽と歩くOLさん。
信号が変わった途端、駅から一斉に働く人々が押し寄せてきた。
その集団のなかに一人、逆行して今から家に帰ろうとするわたし。
生きている世界が違うような、時間感覚も日付感覚もよく分からない。
きっと、明らかに「普通」とは遠ざかる道へ足を踏み入れ始めている。
だけど、なにも怖くなかった。
なんだかそのまま帰るのがもったいなくて、宮下公園へ。
こちらもまたインスタ映えの聖地が嘘のように、休日とは別世界。
平日9時の宮下公園は、工事現場で夜勤を終えたおじさまたちがベンチに陣取り、死んだように眠っている。
頭がぐるぐるして何も考えられず、貸し切り状態のこの場を満喫している優越感も、学校に行き働いている人への申し訳なさや焦りも、これっぽっちもなく、ただ風を感じていた。
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誰と誰、何と何、を比べるまでもいない。
「私は私」であり、「あなたはあなた」
ずっと「普通」を追い求め、誰かと同じような道を辿り、安定を手放したくなかった「私」と別れを告げたような瞬間だったと思う。
客観視していた自分の人生が急に主観で見えてきていた。
自分の主観で捉える世界に行動が追いついてきた。
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帰宅後洗濯・仮眠を急いで済ませ、山手線上を駆け回った。今日も今日とて夜は渋谷。
ど真ん中のタワレコの向かいのビルの屋上で炬燵にミカン。
もう疲労なのか興奮なのか感動なのかよく分からない。
だけど、その場はとんでもなく温かくて居心地が良くて。
渋谷のネオンを横目に
ああ、わたしはここでこのまま生きていくんだな、と悟った。
願望でも覚悟でもなく、ストンと。
ただ、附に落ちた。
見える世界が変わってしまった。
もう元の景色は見たくても、見えないし、昨日の自分には戻れない。
一歩踏み出してしまったのだと、確信したそんな3月半ばの夜。