ひとりがふたりになったとき
カレンダーをめくってから5日が経つ。
「まだギリギリ夏」なのか「もう秋」なのか、微妙なラインだ。昼間はまだまだ30度を超えているけれども、コンビニでは肉まんが始まったし、スーパーのお菓子コーナーにはスイートポテト味・マロン味の「季節限定」が所狭しと並んでいる。
とくに夏が好きなわけでなく、海や花火大会など夏らしいこともとくにしないけれども、今年の夏はまだ終われないな、という気持ちだ。
なぜなら、ボディビルの大会に行っていないから。
ボディビルは例年5月頃から各地で大会が開催されはじめ、野球でいうクライマックスシリーズや日本シリーズにあたる大会が9月10月におこなわれる。
2021年から3年連続、ボディビルを会場で観戦しているわたしにとって、ボディビルを観にいくまでは夏が終わらない。
最後の駆け込み、というわけでもないが、ついに今月と来月観に行こうと気持ちを固めている。ひとりでも、行く。
2021年から根気強く「◯月◯日、ボディビルの大会あるけど行く?」と夫を誘いつづけているものの「興味ないから行っといで」と断られつづけている。筋肉に関する本を買えば必ず「また筋肉?」と顔をしかめられる。筋肉があなたにどんな悪さをしたというのだ。そんな顔しなくても。
今日も夕飯をつくりながら「◯日、大会行くけど行く?」と、半分報告のつもりで問いかけたら「1回ぐらい行ってみようかな」と返ってきた。驚きすぎて危うく包丁を落とすところだった。山が動いたぞ。
完全にひとりで行くつもりだったが、まさかの展開だ。
∽∽∽
夫は夫で、来月友人とキャンプに行くという。どうぞ行ってらっしゃい。
となると、まる2日は夫不在となる。
そういえばこのあいだ、ライターの先輩が「ふと思い立って夜行バス予約しちゃった」と書き込んでいたのを思い出した。
ああ…わたしもひとりで遠くに行きたい。生活と仕事の場から物理的に遠く離れる心理的効果たるや、体のなかの血液も空気も水分もぜんぶ入れ替わるような感覚だ。
日帰りでも効果はあるが、どうしても帰りの電車の時間を気にしながらの行動になってしまうから惜しい。かといって夫がいるのに泊まりで出かけるのも気が引ける。
夫が出かけてくれればわたしも気兼ねなく出かけられるがしかし、夫は筋金入りの出不精で、外出といっても近所のスーパーがよいところ。
ゆえに、今回は滅多にないチャンスなのである。
電車の路線図を眺めて、さてどこに行こうかとにんまりしていたところ一通のLINEが届いた。
「来月の◯日、空いてますか?そっち行こうと思って!」
まじか。
嬉しい。会いたい。
でも、でも…その日じゃないんだよなあ…。
空いているといえば空いている。
でも自分との約束が入っているといえば入っている。
自分の楽しみを優先したいがために、どんなに仲の良い友人の誘いでも断りたい気持ちになってしまうわたしはどれだけ心の小さな人間なんだろうと、この瞬間いつも胸がぎゅっと締めつけられる。
どちらも同じ「ひとりの予定がふたりに」なのに、片方はどちらかというと嬉しくて、もう片方は素直に喜べない。
どうしたいのか自分の心のなかでは決まっているはずなのに、「でも…だって…」と言い訳をこねくりまわしている。そしてたぶん、ひとしきりこねくりまわさない限り決断に至らない。つくづく、いちいち、面倒な自分である。
さあ、どうする?わたし。
今日も読んでくれてありがとうございます。
あなたが最近迷ったことは、なんですか?