自分だけの、無心になれるウォーリーを探せ
その夜更け、わたしは消費期限ギリギリの鶏むね肉710gをゆでてほぐし、サラダチキンをつくろうとしていた。
食生活を改善しようと思い立ったからだ。
高たんぱく・低脂質な食事はボディメイクの基本である。
皮なしの鶏むね肉は100gあたりたんぱく質22.3g、脂質は1.5g、さらに100g68円の安さ。
キング・オブ・ボディメイク食材、略してKOBである。
以前、鶏ハムがうまくつくれずそのパサパサ感で鶏むねライフを挫折したわたしだが、コンビニのサラダチキンならおいしく食べられることに気づいた。
しかし自分でつくるとなると面倒だ。
続けられなければ効果は見込めない。
Amazonでまとめ買いしてしまおうか。
80g×8袋で2,271円。
つまり1袋あたり284円。
加工費と送料が含まれているにしても、スーパーで100g68円で買える鶏むね肉だ。これは高すぎる…。
とりあえず1回自分でつくってみようと考えをあらため、前日にスーパーに行って2割引のシールが貼られたものを購入してきたのだった。
ところでなぜ800gも買ってしまったのだろう。
買いもの時の謎の思考回路あるあるである。
2割引なだけに、消費期限は短い。
過去、鶏肉であたったことがあるため鶏さんに対しては慎重姿勢だ。
そんなわけでわたしは、皮を取り除き、ゆでて、粗熱の取れた鶏むね肉710gと対峙している。
いざ参らん。
まだすこし温もりを感じる鶏むね肉を、繊維にそって割いていく。
脂が少ないため、手があまり汚れなくて助かる。
保存容器にどんどん鶏むね肉が溜まっていく。
すべてを割ききるまで、要した時間は20分~30分ぐらいだろうか。
ただひたすら無心に鶏むね肉を割いていた。
文字通り、時間が経つのも、雑念も忘れて。
これは…瞑想よりも瞑想効果があるのでは…
日常に潜む瞑想効果
毎日、起きてすぐ10分間の瞑想をしているのだが、まだ寝ぼけている頭でもあれやこれやと雑念がわいてくる。
瞑想では雑念がわいてもOKとしていて、ただわいた雑念を傍観するスタイルを勧めている。
しかしこれがなかなか難しい。
どうしても考え込んでしまうときも少なくない。
「あらら、あっという間に10分経ってしまった…」という日もよくある。
鶏むね肉を割いていた20~30分のほうが、ゾーンに入っていた気がした。
人によって、どんなときに雑念を忘れられるかは異なると思う。わたしの場合は2つの仮説が立った
まったく頭を使わない単純作業をしているとき
頭をフル回転させているとき
頭を使わない単純作業は
鶏むね肉を割くのもそうだし、野菜を刻むとき、掃除しているとき、ラジオ体操…あらためて考えてみると、意外に日常生活に潜んでいる。
ちなみに散歩は気分転換と運動にはなるが、わたしの場合は瞑想効果は得られない。
思索にふけってしまって曲がるべきところを曲がりそこね、だいぶ遠回りして疲弊したことが何度もある。
逆に頭をフル回転させているときも、一種の瞑想状態だと思う。
囲碁で次の一手を考えているとき、筋トレしているとき、読書しているとき、映画館で映画を観ているとき…。
頭をフル回転させて、可能な限り多くの選択肢を打ち上げて、研ぎ澄ませた最善のひとつを選び取るような作業ともいえるかもしれない。
筋トレは、実は次の1回はどう動きを改善させようか、どこを意識しようかと、体だけでなく頭もフルに使う動作だ。
読書や映画だって、登場人物の心情を推察し、次の展開を予測し、ストーリーの世界観に没頭しているようで実は脳みそは心地よくフル回転している。
まるでウォーリー探しのようである。
見開きいっぱいに描かれた人、人、人…のなかから、たった1人のウォーリーを探し出す。
次の一手、次の一動作、次の一ページ、次の一幕がウォーリーなのだ。
何人もの、無心になれるウォーリーを味方につけたい
仕事も、瞑想よろしく雑念を振り払って取り組みたいものだけれど…それができれば自己啓発本なんて必要ないのよね。
でも、自分だけの、日常に潜む「無心ウォーリー」を何人も見つけて仲良くなっておけば、気分転換・メリハリ・リフレッシュはうまくできるようになるのではないか。
掃除でもいい、洗濯でも、ストレッチでもなんでもいい。
そうした「手はふさがっているが耳は空いている時間」には音声で「ながらインプット」をすることも多いのだけれど…
音声をOFFにする時間も持ってみよう。
鶏むね肉を割いていく作業も面倒といえばそれまでだが、鶏むねウォーリーとしてお近づきになりたい所存である。
ボディメイクにもなるとするなら、一石二鳥ならぬ一鳥二得。
鶏むね肉、来週も買ってこよう。
…来週は600gぐらいで。
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