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【望み】を読んだ。あなたはどちらを望む?

せっかくnoteにアカウントを持っていて、本が好きで、「読書の秋」なんて企画がやっている。南半球に住んでいるので実際には春だけどそんなの関係ない!!!

参加したい、と思って課題図書を見ると最近読んだ記憶に新しい本がないじゃないか。たくさん読んでるのに悔しいーーーーというところから、未読作品との出会いに気持ちを切り替え、初めての雫井作品を選んで読んだ。

これもご縁。

さて、息子がどうやら殺人事件に巻き込まれた。殺害されて見つかった少年は息子の友達だと娘が言う。逃走している人物が2人、行方不明者が3人。息子は加害者として逃げているのか?それとも被害者となっているのか?

ずーーーーーん。

息子が生きてさえいてくれれば、という望みは息子を殺人者とする。

息子は罪を犯していない、という望みは息子を亡き者とする。

いつもは捜査するミステリーを読むから徐々に事件解明に近づくけれど、この本は家族視点。

事件に関わっているらしい、ということしかわからない。結果に至る過程もわからない。これが一般人が事件に関わるってことなんだなと知った。

どんなに家族で答えのない意見をぶつけたところで、知らぬところで結果は既に決まっている。でもその過程で見えるものがあって、4日程度しか経過していないとは思えない重い4日。

今の世の中の情報の速さとみんなが裁判官みたいな社会で、身内に犯罪を犯したものがいると仮定する。正直簡単に受け入れられない。色々考えてしまう。息子ではないけど子を持つ親として、生きてさえいてくれれば!!って即答でまっすぐ言えない自分が情けない。

死ぬだなんて考えられない、でもまるっと受け入れる覚悟も現時点ではない。

けれど小さい我が子にお母さんが誰かを殺してしまうか、誰かに殺されてしまうか、どっちが大変なことかなぁと聞くと即答した。

「お母さんが死んじゃうのが1番困る。」

色んな事情を考えず、その存在だけについて考えられる場合、とにかく大事なのが存在していること、ということだ。

そういう意味でこの小説での母、貴代美はすごい。

3人兄妹である私は常々母の、息子に対する想い、また逆に父の、娘に対する想いを敏感に感じ取ってきた方で、前半の両親の子どもたちに対する密かな感情を読みながら「これうちの家?」と思ったぐらい。

貴代美、もし息子じゃなくて事件に関わっているのが娘の方だったら同じように望んだかな。もうちょっと冷静になったんじゃないかな。

夫の一登と望みが入れ替わったんじゃないだろうか、と疑ってみたりする。

それくらい、母の息子に対する想いって特別だと私は思ってる。

起きてほしくはないけど、100%あり得ない話ではない設定で、自分と家族の関係も見つめ直す1冊。

覚悟のないビビりの私にできることは、えらいことになってしまう前に相談してもらえる、相談にのれる親を目指すこと。

読後感は複雑でずしりと来るけれど、出会えてよかった。







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AKKO
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