ケース32. コーピング〜コトに向き合い続けるセルフマネジメント〜
日々の仕事で一生懸命になるほど、仕事の難易度や人間関係、ワークライフバランスの壁にぶつかりストレスが避けられないものですが、同じような仕事をしていても、ポジティブオーラを纏う人と、ネガティブオーラを纏う人を見かけて、その違いが気になることはないでしょうか?
経営の視点:
・どんな仕事に対してもポジティブに挑める活気ある職場にしたい
・個々人に配慮することが難しく、ネガティブな人には機会を渡しづらい
現場の視点:
・日々をポジティブに過ごしたい
・仕事や人間関係が苦しくなると負の循環に陥ることがある
同じ仕事をしていても人によって捉え方も異なれば、日々の過ごし方も異なり、その差分がポジティブオーラとネガティブオーラとして表出されます。
そして、周囲からはネガティブよりもポジティブな人により好意や機会が寄せられ、チャンスが生まれていき、ネガティブな状態では「なぜ上手くいかないのか」の負の循環が陥っていきます。
だからこそ、自身の心身を守り、チャンスを得ていくためにセルフマネジメントを工夫することが重要です。
そこで、今回はコーピングという概念に用いて日常におけるセルフマネジメントの工夫を考察します。
▶︎コーピング
下記のようなストレッサーと称させるストレスの原因へ対応するセルフマネジメントとして日々の生活で取り入れられる実践的な視点です。
ストレッチーを認知して、ストレス反応が心身に表出されます。
ストレス反応に対するコーピングは主に下記の2つの類型があります。
コーピングを実践していくためには何が必要なのでしょうか?
▶︎リフレッシュを促進するコミュニケーション
アメリカの教育学者ピーター・クライン氏によって考案されたコミュニケーション手法Good & Newでは、よかったことや新たな発見、挑戦といった前向きな発言を交わすことを促進させます。
仕事は人生の一定の割合を占めるものであり、ワーカーホリックに陥ると、仕事の良し悪しで一喜一憂して心身が疲弊していく中でバーンアウトすることがリスクになります。
あくまで、仕事することそのものが目的ではなく、人生の一部として充実させる対象であり、むしろセルフコントロール外の変数が入りやすい仕事よりも、セルフコントロールできる趣味などで心身をリフレッシュすることが望ましいのでないでしょうか。
たとえば、ビジネス界隈では、サウナによるリラクゼーション効果が一時注目を浴びていましたが、サウナは短時間で自律神経を整えることができる身体的な効果と、思考を制限することによって自己に向き合う心理的な効果が期待されています。
また、セイバリングに示されるように、映画や音楽などのアートから、旅行や散歩、人との交流など何かを楽しもうとする行為がポジティブな感情を高めます。
このように、趣味を取り入れたり休暇で自己に合ったリフレッシュ手段のリズムをつくることで、ストレッサーに対して感情統制するコーピングを機能させることができるため、Good & Newや1on1、メンター制度などコミュニケーションでリフレッシュ手段を発見するきっかけづくりは持続的な働き方を促進することにつながります。
▶︎日常の工夫を追求するリフレクション
ラザルスは、ストレッサーは大きな特別な出来事よりも、日々の生活で感じる小さな出来事に対する苛立ちの連続である「デイリーハッスル」の影響の方が大きいと説いています。
たとえば、通勤時の人混みや職場の人間関係、些細なミスが小さなストレスとして積もることでやがて大きなストレスが生まれるというものです。
デイリーハッスルの対策は、日々の過ごし方を工夫するしかありません。
「〇〇のせいで〜」と自分にはコントロールできないことに意識が向く限りは、デイリーハッスルから逃れることができないため、自分自身の振り返りや、他者からのコーチングを通じて、一つひとつの自責で変えられることを見出していくリフレクションが重要です。
たとえば、下記のように体調管理に関する行動を日常生活を取り入れるだけでも、デイリーハッスルを低減することができます。
・60分程度の運動をすることでストレスが改善し、認知機能が向上しやすくなる
・平均の睡眠時間が1日7~9時間の範囲を逸脱すると疲労が溜まる
・食物繊維を取らなければ、体調の維持に必要な腸内細菌を活性化できない
・外に出て自然の大気を吸い込むだけで、腸内環境は改善する
2016年、Googleの実験によると、チョコやナッツを自由に食ベられるスナック置き場を起点に、2箇所にドリンクバーを設置して約400人の従業員の動きを記録したところ、スナック置き場に近いドリンクバーを使った者は、スナックを食べる量が69%も高く、体脂肪の増加率が高いことが実証されています。
最近では、健康経営の施策として、福利厚生でフィットネスジムに通うことを推奨したり、オフィス宅配が普及していますが、日常生活の工夫次第でストレッサーに対処ができることから、コーピングの強化が生産性の向上にも寄与します。
また、ポモドーロテクニックというひとつの仕事を25分ごとに区切り、その間に5分の休憩を挟む時間管理術が注目させていますが、生産性が高い人ほど決まった感覚で仕事をしてインターバルを工夫しているとの調査もあります。
これらのように、小さなことでも自分がコントロールできることから取り組み、前向きな変化を感じ取ることで「自分ならできる」と自己効力感が高まり、コーピングが強化されていくため、日常の過ごし方をリフレクションすることが有効と言えます。
▶︎セルフマネジメントでコトに向き合い前に進む
人間は社会性の生き物である以上、人間関係および誰かに何かを提供することで対価を得るとの生計からは逃れることができません。
環境を悲観的に捉えるほど、ストレッサーが増していくため、ストレッサーを未然に防ぐこと、発生したストレッサーに対処することが、日々の充実度を左右します。
ポジティブオーラを纏う人と、ネガティヴオーラを漂わせる人は周囲から見えてしまうものです。
『7つの習慣』の第一の習慣”主体的である”では下記の一節があります。
日々、さまざまなストレッサーが溢れる社会ですが、ストレッサーに対処するために日常の行動をセルフマネジメントしてコーピング力を高めていくことができるかで、人生の充実度は変わるでしょう。
※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。 他記事はぜひマガジンからご覧ください!