私の愛するカレー、忘れられないあの味…。
インドの人に日本で我々が食べているカレー=どの家庭でも作る玉ねぎ、人参、ジャガイモ、肉に市販のカレールーを入れたあのカレー、を食べさせたら「おいしい。なんの料理ですか」とたずねられたという話がある。
「そうなのだ」日本人が思い描くカレーと本場インドのカレーはかなり違う。いや、インドと限定してはいけないかもしれない。マレーシアにもタイにもミャンマーにもカンボジアにもタンザニアにもモザンビークにも、と言うより私が旅した国のすべてにカレー料理は存在していた。そして、どこのカレーもおいしかった。
発祥の地はインドかもしれないが、それが色々な国、地域に伝わり、その地の食文化や食材と交わり独自の発展を遂げ、その地名や食材の名を冠したカレーが出来上がったのだろう。タイカレーとかマレーシアのフィッシュ・ヘッドカレーとか。そもそもインドにはカレーという言葉はなかったそうである。
私が初めてインド式のカレーに出会ったのは、タンザニアのダルエスサラームである。タンザニアは昔イギリスの植民地であったが、同じくイギリスの植民地であったインドから多くの人びとがこの地に流入し定住していた。その子孫たちの営むカレー料理店で食べたカレーのことが忘れられない。
いやもっと正確に言うならば、その時カレーに添えられてきた青いマンゴーのピクルスの方が忘れられない。まだ熟す前の若いマンゴーのピクルスとカレーの絶妙な取り合わせ。もう一度食べたいと思うがその時以来、同じようなマンゴーのピクルスには出会っていない。
もう一度食べたいと言えば、前述のマレーシアのフィッシュ・ヘッド(fish head)
カレーである。魚の頭、オクラ、ナス、ヤングコーンなどの野菜とココナッツミルクがたっぷり入った濃厚なカレーである。マレーシアで10年もココナッツミルク入りのカレーを食べ続けたら、もうそれなしでは物足りなくなってしまった。
だから私の作るカレーにはココナッツミルクをたっぷり入れる。市販のカレールーを使ったカレーももちろん作るが、バターチキンカレーやフィッシュカレーをカレーパウダーと香辛料で作る時の方がワクワクする。そして、ココナッツミルクを入れる瞬間がとても好きだ。なぜかカレーが魔法をかけられてグレイドアップしたように思えるのだ。
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