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「愛の不時着」 リジョンヒョクの母の愛
第9話でセリがククスを食べながらジョンヒョクの母に、
「おかあさんに似て優しいんですね。リ・ジョンヒョクさんは」
と言う。セリの言うようにジョンヒョクの人格形成に与えたこの母の影響は大きいと思う。強権的で高圧的、名誉ばかりを優先する父の元にあって必死に息子達をかばって育ててきた母の来し方を思う(この母は父息子の間に緊張関係があることを察知している。完全版第5話)ジョンヒョクには父親のような高圧的、威圧的な要素がない。
第7話入院した息子を見舞った際、父親は烈火の如く怒り、息子を糾弾する。息子のジョンヒョクは萎縮して押し黙る。それをたしなめようとした母親を父親は、
「お前は口を挟むな」
と恫喝する。一旦引き下がった母親がその後、
「息子のことなら口を挟ませてもらいます。」
と言って凄い剣幕で以下のように言い返す。
「銃で撃たれたんです。死にそうだったんです、あなたの1人息子が。」「葬儀場じゃなくて病室で済んだんだからありがたく思ってよ。生きていてくれて、どれほど立派なことですか!」「怪我はどうなのか、温かい言葉もかけず責め立てるの。あなたは保衛部員ですか?父親ですか?」
父親はこれに一言も反論できず沈黙。必死で息子を守ろうとする母の姿。こんな母親を見て成長したのだろう、ムヒョク・ジョンヒョク兄弟は。兄も似たような雰囲気の人ではなかったか。ジョンヒョクはそんな兄を心の支えにしていたのだろう。
ジョンヒョクを好きなピアノの道に進ませてくれ、自分は父に従い軍人になった兄に、心苦しさと感謝の念を感じていた。そんな兄を失った喪失感と自責の念は大きかっただろう。自分を戒め未来を夢見ぬ人生を送ろうと心を閉ざした息子に母親はどんなにか心を痛めていたことか。果たしてこの父親は息子の心の変化に気づいていただろうか。
母親は、ジョンヒョクを優しいと言ったセリを愛おしそうに見つめていた(この女性が息子の心を開いてくれたのだろうと思いながら❣️セリから聞いた息子の甲斐甲斐しく世話を焼く姿を思い浮かべて・・・)セリが殺されずに済んだのもこの母親の尽力があったからだろう。父親と部下の会話からセリの生死は、紙一重だった事がうかがえる。
「家内が一晩は泊めたいと言い出して」(第9話)
と部下に苦々しそうに言う父親。きっと以前のように妻に毅然と言われたのだろう。そして、ジョンヒョクが
「彼女を守れなかったら僕は死ぬまで地獄を生きることになります。」
と言った時、
「息子を地獄には落とせない」
と言ってジョンヒョクとセリを会わせたのもこの母である。ジョンヒョクとセリが再会した時、胸にこみ上げるものがあるように2人の姿を愛おしそうに見つめていた(完全版「そんな二人が痛々しく、かわいそうだと思って見ているジョンヒョクの母」)その母親と全く正反対のリアクションをした父親。第7話結婚の日取りを決めた時も、父親の一方的な独断。息子の心情などお構いなし。ダンの母親の醜悪な婚礼品の列挙に辟易して、
「どう思う?急ぎすぎるようなら、、、」
と思わず息子にたずねる母親。彼女はこの結婚にあまり乗り気ではなかった。何度か夫に急ぎ過ぎるといっている。心のどこかに気がかりな思いがあったのだろう。だからセリがジョンヒョクが優しいと言った時、あの時の息子の冷たい表情が浮かんだのだろう。「息子はこの結婚を望んではいない」と母の勘で❣️セリを客間ではなく息子の部屋に泊める優しい心遣い😭。
そして、2人を引き合わせた後、夫の不快な言葉に構わず、食事に誘う母の優しい気遣い。息子に彼女を紹介されたような、そんな光景にも似て、うれしそうに見えた。1人の女性を命がけで守ろうとしている目の前の息子は、もう今までの冷たい息子ではない。母親としての胸のつかえが降りた瞬間でもあったのだろう。
その後、韓国に行った息子のことを語る夫婦の会話で、夫が自分の名誉や地位にこだわる発言をしたことに対し、
「既に1人失ったのに子供より名誉なの?地位を優先してまた息子を失ったら私はその場で死んでやる。1人で栄華を楽しめばいい。」
と言い放つ。この凄み、しびれます。今まで秘めてきた思いをここで爆発させました。この情景、セリを追ってジョンヒョクが父と対峙した時の会話にも通じます。父親がジョンヒョクにいいます。
「お前は自分の将来を考えないのか」と。
それに対してジョンヒョクが答えます。
「考えているからこうしているんです。今日のことを後悔したくありません。後悔の苦痛は知ってますよね」と。
父の言う「将来」とは、明らかに名誉や地位のことだろう。それに対して、ジョンヒョクが言及しているのは、自分の良心のことである。良心の呵責にさいなまれて生きることの苦しさ、惨めさのことである。明らかに母親の気質を受け継いでいる。
その後、韓国から送還される息子を迎えに行く夫に対し、毒薬を前にして
「必ず無事に連れ戻して。お願いします。万が一の事態になったら私もあとを追うわ。自分の命を絶つから私の心配はしないで。」
母親の鬼気迫る言葉。ジョンヒョクも父親に対し同じようなことを言っていました(「彼女を守れなかったら僕は死ぬまで地獄を生きることになります。」)
この母にしてこの息子ありである。ジョンヒョクの優しさには母性愛を感じる。ハンカチでセリの髪を結んであげた時、布団をかけてあげた時、市場で買ってきた数々の日用品そしてキッチンの棚や冷蔵庫を満たした食料品。どれもお母さんがしてくれそうなことばかり。
母親とは常に子供を思ってしまう生き物で、子供が幸せでないと自分も幸せになれないところがある。ジョンヒョクのセリに対する優しさにも男女の愛以上の無償の愛のようなものを感じる。
第14話「よく食べよく眠り元気に過ごす。そしてまた明日も会えるような気持ちで。そう過ごすうちに人生が楽しくなりすぎて僕を忘れてもいい。それでも僕は構わないから。」😭
素敵な息子を育てるには素敵なお母さんの存在が必要だ‼️日々の食事を大切にし、些細なことでも楽しめて、自立した生活ができ、必要な時にそっと手を差し伸べる、でも決してそれを誇示しない。そんな男性増えて欲しいです。