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「愛の不時着」 Lost in Translation グァンボムの言葉ほか(すべてネタバレです)

(冒頭写真はNetflix からの転載)

第3話 船渡しの夜の中隊員4人の会話から、
 
 ジュモク「とうとう帰りますね」

 チス  「せいせいするよ」

 ウンドン「僕は少し寂しいです」

 チス  「おい、何が寂しいんだ」「夢で会うのうも嫌だ」

 グァンボム「でも人を見る目だけは確かな女性でした。」

「え、この流れで、なんでこの言葉」と、言うのが私の疑問でした。ここだけ腑に落ちない。完全版も同じような訳でした。ここからは、韓国語が分からないので英語訳からの私の推測です。(韓国語の分かる方、是非ご意見を賜りたい) 

英語訳は、

She had good tastes (彼女いい趣味してた)

参考までにポルトガル語訳は、

Ela teve bom gosto.     (彼女いい趣味してた)

これなら納得できる👍。グァンボムは、あの表彰式で「人類の宝賞」をもらって、「ここにいる軍人の中で1番ハンサムだからよ」と言われたことがうれしくて、1人喜びをかみしめてこの言葉を言ったのだと。自分を認めてくれるなんて「彼女は目が高い、いい趣味してる」(つまり男性の趣味がいい❣️)と、お年頃のグァンボム君は自尊心をくすぐられたのだ。

日頃、寡黙な彼が口に出して言うくらいだからよほどうれしかったのだろう。表彰式では、無関心を装っていたけど、本当はすごくうれしかったのだ(そのクールな態度もまたセリに褒められていたけど・・・) 他の3人は、ポカンとして、彼の言葉の意味が全く分かっていなかった。(「人を見る目だけは確かな女性」では、若いグァンボムの思いがストレートに伝わらないと思うのだが?)

でもセリの本当の狙いは、ジョンヒョクだった😚 3等賞にグァンボムの名前が呼ばれた時の彼の表情😖。人類の宝賞❗️「ここにいる軍人の中で1番ハンサムだからよ。」グァンボムを横目で見ながら、ジョンヒョクはもう完全に拗ねてました😆。セリには全部見えていた。朝のお見送りといい、この方、すご〜くできる人だ。お見事❣️このジョンヒョク君、第2話でクールに「返してもらう恩などない」と無表情に切り捨てた人とは思えません。

ジョンヒョクという人の内面には、少年と成人が微妙に混在していて(第8話で初恋の人が言えずにうつむく表情など少年のようでした🤭かと思えば第4話パラグライダーで降りる時の頼もしさ、第6、7話オートバイで颯爽とセリを守りにゆく姿🤩)、このギャップが見ている私達をときめかせますよね⁉️自転車で迎えに行って、偶然を装ったり、前に乗せる時の仕草や表情。貝プルコギでのチラ見。何故か、遠い昔に戻って初恋を追体験しているような気持ちになります😅

このグァンボムとの絡みは、第5話でもありました。彼は、セリから指ハートを2つもらっていました。ジュモクが「グァンボムさんには2回も」と言ったことに対し、完全版では

グァンボム「(密かによろこんで)そうだったのか?僕はちゃんと見てなかったけ
      ど」その会話に対して

ジョンヒョク「(横目でチラリとにらみ)・・・」(嫉妬してる?😤だって自分だけ
      にくれたんだと思っていたから)

この後、家に戻ってブスッとして突っ立って、全身で抗議している。でも本心が言えない🥺 本当に少年のようでした😍😍。さらにベッドの上でのあの顔。思い出して下さい😆🤭ここは、もう母親のような気持ちになります。

               ※※※※※

日本語訳と英語訳の間に、ニュアンスの違いを感じることが多々あります。日本語訳はかなり超訳的、意訳的になっているのかなという感想をもっています。英語訳にはあって、日本語訳にないセリフが結構あります。例えば、

第7話 ジョンヒョクがダンに結婚できないと言うセリフ。

日本語訳 「好きでなくても結婚はできる」

英語訳 “I thought I could marry you even if I had no feelings for you”

完全版 「君を好きでないまま結婚することはできると思ってました」 

日本語訳だと一般論として言っている風で、結婚するに当たって、好き嫌いは問題ではない見たいに受け取れてしまい、mislead されてしまう。

ここは英語訳の方が、ジョンヒョク自身の思いを明確に表現しており、適訳だと思う。「自分はあなたのことが好きでなくても、結婚できると思ってました」

それに英語訳でないとジョンヒョクの本意が伝わらない。「愛を知らなかった今までの自分だったら、好きではないあなたとでも結婚できると思っていました。」でも「他の人が好きになり、愛を知った今の自分にはあなたと結婚することはできない」が彼の本意だろうから。(ここまでストレートに言われたら、言われた方はずいぶん傷つくと思うけど・・・。)

第8話 ジョンヒョクがセリにクスンジュンと結婚するのかと聞くセリフ。セリが「書類上だけよ」と言ったことに対して

日本語訳 ジョンヒョク「それでも結婚だ」

     セリ    「しないと帰れないもの」

英語訳  ジョンヒョク “Even so, marriage isn’t a joke“

                   セリ     ”And the situation we are in isn’t a joke, either”

完全版  ジョンヒョク 「結婚は遊び(チャンナン)じゃないし、、、」

     セリ     「私たちの状況も半端(チャンナン)じゃないから」

日本語訳は、話の流れとしてはすんなりと理解できる。しかし、韓国語で、チャンナン「冗談」「遊び」にあたる言葉を繰り返して使っている2人の会話に気づいた視聴者としては、ちょっと違和感を感じて深掘りしたくなる。どうしてこの言葉が日本語訳にないのだろうと。

ジョンヒョクが言った言葉(彼はセリの結婚話が不満で文句を言ったのだが)をセリはそのまま使って抜き差しならぬ自分達の状況を彼に喚起したのだ(あなたの方がもっと大変でしょ。私のことを気にしている場合じゃないでしょ、と。)

セリは、ここに残って、これからも生きていかねばならないジョンヒョクの行く末が心配なのだ。だからセリは自分のせいでジョンヒョクの人生を危うくしてしまった事に、深い自責の念を抱いている。「しないと帰れないもの」ではその思いが表現されない(自分の帰国のことになど言及していないのだから。これではセリが自分のことしか考えていないかのように、伝わってしまう) ここは、英語訳の方がセリの真意を表現していると思う。翻訳のしかた次第で、そのシーンの見え方が違ってしまう。言語とは難しいものだ🤔


最近気付いた箇所について、追加いたします。これも韓国語が分からない人間の英語訳からの類推です。

第5話 ダンと遭遇してしまったジョンヒョクとセリ。気まずい雰囲気の中、セリが自分達の関係や自身のことを笑顔を作って説明します。それに対するダンの返答は、日本語訳では「関係ありません」だった。

この言葉を聞いた時のジョンヒョクとセリの表情とその場の気まずそうな雰囲気から察すると、「関係ありません」ではインパクトが弱すぎるのではないか。ダンの返答は、むしろもっときつい、無礼な言い方だったんじゃないかと想像する。それに「関係ありません」は、この脈絡の中では不自然な表現だと感じる。

英語訳は、 “I don’t care”となっていて、この表現にはマイナスな意味合い=不快にさせる、が含まれている。日本語訳にしたら「どうでもいいわ(そんなこと)」ぐらいな表現だろうか。セリの言ったことに対して、ピシャリと反撃し、不快にさせ、その場を凍らせる表現だ。この表現なら前後関係に違和感を感じないと思うが、どうだろう?

ジョンヒョクは、押し黙ったままだった(明らかに内心は不快だったと思う)。ダンのこの言動があったから、ジョンヒョクは傷ついたであろうセリを気遣い、その後の行動になったのだろう。ダンだって相当動揺してたはずなのに、彼女への配慮は全く感じられなかった。車が離れていく最後の最後まで、セリが入って行った先を見つめていた。そんな彼を見ているダンにお構いなく・・・。

ジョンヒョクという人は、言語感覚が繊細な人だと想像する。自分の発した言葉で、後悔したり謝ったりするシーンがいくつかあるし、素敵な表現も随所に見られる。だから無神経な言動を平然とするダン母娘とは、感覚的に相容れないものがあったのだろう。ジョンヒョクの母もしかり。

言語とは、その表現一つで、相手ばかりか自分をも、殺しも生かしもする。だから常に敏感でありたいと思うが・・・これがなかなか難しい。



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